4年前、まだ新型コロナ感染が広がる前、播磨灘沿岸各地で牡蠣祭りが開催された。その時の気持ちを書いていた。

今年、ようやく感染拡大前の活動が戻りつつある。当時の思い出を振り返ってみた。

これからもこのようなイベントが続けられますように!

 

旬の食材を楽しむ〈好循環〉

旬の食材は、胃も心も喜ばせてくれる。

冬は牡蛎を食べるのが楽しみの一つ。昨冬はずっと忙しい日が続き、残念ながら機会を逸した。

播磨灘は牡蛎の養殖が盛んで、これまで室津、相生、赤穂に行って牡蛎料理を堪能した。今年は網干のエコパークでかきまつりが2月3日に開催されると知り、妻と車で出掛けた。

美味いものを食べるだけであれば人が少ない方がいいが、町を挙げての祭りを一度見てみたくなったのだ。この時期にしては比較的暖かく感じ、午後雨が降るとの予報もあって、開始の朝10時過ぎには車が続々詰め掛けていた。親子連れ、カップルや老夫婦などで賑わっていた。人目を憚らず満面の笑顔で大口開けてほおばる若い娘たちや、駆け回る子どもたちも。広場には多数のテントが立ち並び、建物内にゲームコーナーや展示場も併設されていた。早速焼きがき店の長蛇の列に並んだ。この店が1番人気で1時間待ちだった。4個600円を2人分注文。「身が大きくぷりぷり。ポン酢が合うね」と互いに満足。ついでに展示会場へ。写真・彫刻品・手芸品・絵手紙など多数展示されていた。妻も「この3つの写真、すごいね」とレベルの高い作品にしばらく見惚れカメラに収めた。

会場は混んでいて、とてもゆっくり食事する雰囲気ではなかった。妻がネットで調べ、地元の人も良く来る人気の牡蛎料理店があるというので早々に会場を後にした。こちらも結局1時間待ちとなったが、大ぶりのぷりぷりしたカキフライがぷりぷりしておいしく、長時間待った甲斐があったと喜び合った。

牡蛎は養殖で多量生産され、冬が旬になる。天然の牡蛎は夏でもレストランで食べられるが、一般に食するのは養殖ものだ。冬の海でしっかり身をつけ、しかも締まっている。産卵受精は夏に行われ、窒素などを多く含む栄養塩が海面に豊富となる冬場、植物プランクトンをたっぷり食し、寒さで身が締まる。ふた冬かけて丸々太り収穫されるそうだ。冬は寒くて、外出するより家で温かく過ごしたい気分になりがちだが、こうして本場に出かけ、美味い食材にありつくのもいい。

牡蛎の養殖は、瀬戸内海や有明海のように、森~川から供給される栄養塩豊かな地域で行なわれる。かつて赤潮(植物プランクトンの異常発生)が問題となった。海をきれいにしようとしてきたが、貧栄養となって牡蛎やノリの養殖を阻害することがわかってきた。他の魚についても瀬戸内海の漁獲量が減ってきており、漁師たちは20年くらい前から〈何かおかしい〉と感じてきたという。海に変化が生じていることが次第にはっきりしてきた。数年前から、〈海をきれいにし過ぎず、栄養塩の豊かな海にしよう〉と、下水処理などの排水基準を緩和する動き、栄養塩の供給源となる落葉樹の生育する里山づくりなどの活動が始められてきた。埋め立てや護岸工事により、砂浜や浅瀬が減り、海藻やアサリなどが大幅に減少している。砂を後で入れても潮干狩りができる砂場は簡単に復活していない。乱獲により自ら海の資源を守ってこなかった責任もあるのかもしれない。

牡蛎の幼生が生育し難い年があった。夏場の海水温が高すぎたのだと。地球温暖化や異常気象の影響も心配される。

神戸は幸い近場に瀬戸内海という豊かな漁場があり、手ごろな価格で美味しい魚介類を食することができる。美味いものを食べることは、人を笑顔にし幸せを感じさせてくれる。

私たち日本人の魚食文化を維持していけるのだろうか。高齢化による後継者不足は、どの業種でも言われているが、さらに環境問題が深刻な事態にならねばいいと祈るのだが。

日本人の食生活は少しずつ変化し、魚より肉を多く食べる人たちが増えてきている。魚食文化を守るためには、海や環境の問題だけではなく、魚を食べて需要を維持し、漁師も元気に漁を続けられるような〈好循環〉を維持し続けることが求められているのではないだろうか。