「ごめんなさい    ごめんなさい」
「ごめんなさい    ごめんなさい」

私を信じられない私が私に謝ってる

「なんで謝るの」
「あなたは間違ってない」

「本当に見えるんだから」
「本当に聞こえるんだから」

「あなたは謝ることない」
「あなたは謝ることはない」


学校に行くまでドキドキしていた
学校行ってもエミがいないんじゃないかって
エミすらも私の妄想で
本当は存在してないんじゃないかって
本気で考えていた
だけど学校行ったらエミはいて

「おはよう」

「おはよう」

普通に声をかけてきてくれた

「マキ」

「聞いて」

「現国のオヤジ結婚するらしいんだけど」

「そうなんだ」

「それが去年の教え子らしいよ」

「うわぁ」

「マジで」

笑っ…

放課後町田くんに呼びだされた

「マキ彼氏いるの?」

「いないよ」

町田くんに告られたが正直それどころじゃなかった

「ごめんね」

ひと言そう言ってその場を離れた

「ただいま」

「お帰り」

帰宅すると弟はソファーでYouTubeを見ていた

どこかに隠れているのか
あいつ(幽霊)の姿はみえない

「お姉ちゃんYouTubeって面白いね」

「僕YouTuberになりたい」

勉強好きの賢かった弟はもういない


家の中はどこも散らかっていて
洗い物は流しにたまっていた


綺麗好きだった母もいない

「お母さんは?」

「知らない」

「朝からずっといないよ」

「朝からずっとって…」

「ヒロくん学校はどうしたの?」

「行ってないの?」

とりあえず鞄をおいて
洗い物をはじめる

「あ」

急に弟が大きな声をあげた

「どうしたの?」 

「お姉ちゃん地震じゃない?」

あたりをキョロキョロ見回している

「え?」

「揺れてるよ」

「ほら」

「?」

私には感じない

「ほら」

「ほらーっ」

「?」

ヒロくんの両手の指先が小刻みに揺れている

「ヒロくんどうしたの?」

「揺れてる」

「揺れてる」

「揺れてる」

「揺れてないよ」

「揺れてるって」

「揺れてないよ」

「揺れてるよ」

ガタガタガタガタガタガタガタガタ
ヒロくんの体全体が小刻みに揺れはじめる

「お、お、お姉ちゃん…」

「 あ、あ、あ、あ、」

「ヒロくん!」

「どうしたの?」

「ヒロくん大丈夫?」

ガタガタガタガタガタガタガタガタ
目を見ると瞳孔も小刻みに震えている

「だ、だ、だ、だ、だ、だ、だ、」

「だ、だ、大丈夫だよ」

「た、ただの地震じゃん」

ガタガタガタガタガタガタ

「ほ、ほ、」

「ほらまだ揺れてる」

ガタガタ…

「あ、あ、」

「おさまってきた」

ガタ…

「ふう」

「おさまったね」

「良かったぁ」

「お姉ちゃん」

「最近地震おおいいね」

「ヒロくん」

「ヒロくんごめんね」

「本当にごめんね」

「ごめんねって」

「なんでお姉ちゃんが謝るの」

「訳わかんないんだけど」

「ただの地震じゃん」

「日本に地震なんてよくあるし」

「そっか」

「そうだよね」

LINEの着信音がする

「あれ」

マキはスマホを手にとる

「お母さんからLINEきた」

今、大丈夫?

「大丈夫って」

お母さん今どこにいるの?

「お姉ちゃん」

「お母さんなんだって?」

弟が心配そうな顔で尋ねた

「ちょっと待って」

「向かいに来て欲しいんだって」

「向かいに来て欲しいってお母さんが?」

「うん」

「どうゆうこと?」

「う~ん」

「よくわかんない」

「で、」

「どこに?」

「それが…」

「変なんだけど…」

「駅前のスーバー」

「え?」

「駅前のスーバー…?」


…つづく

なんであんたが謝るの
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