私は夜、出かけるのが、好きでは有りません。
お酒も飲めないし、良ければ、集会や、宴会は、朝一番にして欲しい。
朝からだと、肌の調子も良くて、化粧のノリもよくて、最高の状態なんです。
わざわざ、化粧も、剥げかけて、目の周りにも、クマが出来た夕方から、飲み会や、同窓会が有るのか…
しかし、どうしても、出なければ、いけない集まりは、あるものです。
そんな日の帰り道の事です。
バスから降りて、我が家まで、約400メートルの道を歩いていました。
住宅街です。中央区です。家が軒並み建っています。
しかし、夜なんです。
誰もいません。
すると、バイクの音が、ドッドットと聞こえて来ました。
音からして、原チャリかな~と思いました。
原チャリは、ゆっくりな速度で、私の向かっている前の交差点を横切って行きました。
しばらくすると、また原チャリの音がします。
原チャリの音は、遠ざかったり、近付いたり、ずーと音がしていました。
どうも、私を中心に原チャリは、廻っている様でした。
若い女性なら、痴漢と思うでしょうが、おばさんは、すぐ引ったくりと思いました。
原チャリが、だんだんうしろから、ゆっくりと近づいて来ました。
思わず、身構えました。
命以外なら、なんでもあげよう…
意味も無く、電信柱の影に身を隠しました。
近寄って来た原チャリが、私のそばで止まりました。
ああ~殺される。と思った瞬間。
すみません! 財布が落ちていませんでしたか?
と、原チャリの青年にきかれました。
い、いいえ!
そう、聞くと、また原チャリは、ゆっくりな速度で、落とした財布を探しに行きました。