とおい、とおい日。




いつかのあの日。





夕方、わたしは



おうちにひとりでおるすばん。






帰ってきた母を驚かして喜ばそうと、

ひとりカレーライスをつくっている。










すると、

あかね色に染まった台所の窓に

一匹のなにかの虫がぶつかってきた。











ああ、





静けさを手に取ることができそうだ。












静けさをはっきりと目にすることが

できそうだ。












静けさが溶けだしてきそうだ。







ほんとうにそんなふうに感じた、小さな自分。





いつかの、あの日の、静かな夕方のこと。









いつかのあの日。












































ごめんね、私はがさつな女だけれど、

芸術という言葉に対しては、どうしても

子供っぽい好感を抱いてしまうの。




衛慧 著  

上海ベイビーよりマドンナの告白