「Ⅲ」
瞼を開けると強い風が吹き付けてきて、すぐにまた目を閉じる。
なんだ?なんで正面から風なんて…
それから、ゆっくりと目を開けると、電車の窓には外と内を隔てるものはなくなっていて、そこには大きな…人が一人乗れそうな程大きく、黒いような青いような生きものが止まり、こちらを じっとみていた。
「鳥…か…?」
鳥。耳の様な羽がついている。ミミズクに近いかな、なんて、動物園で見た姿を思い出していた。
何かあっても、叫び声をあげるような性格ではないと自負していたが、本当に出ないものなんだな。
そんなどうでもいい事を考えていると、その鳥は嘴をゆっくりと開け、
《幸せとは?》
と問うた。
幸せ とは。
「そんなもの、」
《そうか みえないか》
「…は?」
見えない?見えないって?
この訳のわからない生きものも、“普段は気がつかない身近にある小さな幸せを大切にして生きていこう”とか、そんなネットにあるような、生きている事が幸せな人が言うような事を言いたいのだろうか。
俺がじわじわと絶望した、人間みたいな、事を。
怒りが込み上げてくる。いや、悲しみか?怒りと悲しみとどうしようもない感情がぐちゃぐちゃと ぐちゃぐちゃと
「もういいって…言っただろ…お前は!俺を終わらせてくれるんじゃないのか!!なんで現れた!?何しに来たんだよ!!」
感情の制御ができない俺を、黒い大きな鳥は真っ直ぐ見つめ、
《きみの ねがいなら》
そう言うと、ホー と一つ鳴き、羽ばたいた。
電車は消え、都会のビルが消え、俺と大きな鳥だけになった時、俺は、闇に、溶けた。
