森永乳業株式会社は、ミルクタンパク質であるカゼインの加水分解物「カゼインペプチド」を開発し、機能性素材「ペプチドMKP」として製品化しています。また、カゼインペプチドを含むヨーグルト「トリプルヨーグルト」や、サプリメント「トリプルサプリ」を販売しています。

 

森永 トリプルヨーグルト

画像出典:森永乳業株式会社

 

森永乳業株式会社は、最近カゼインペプチドの脳機能への効果を検討しています。ここでは二つの論文を紹介いたします。

 

①健康な成人の脳機能への効果
『Effect of the Casein-Derived Peptide Met-Lys-Pro on Cognitive Function in Community-Dwelling Adults Without Dementia: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial(認知症のない地域生活の成人における認知機能に対するカゼイン由来ペプチドMet-Lys-Pro(MKP)の効果:無作為化二重盲検プラセボ対照試験)』

Clin Interv Aging. 2020; 15: 743–754.


同研究では、40歳以上の健康な男女268名を2つのグループに分け、カゼインペプチドもしくは偽薬(プラセボ)を24週間摂取しました。摂取期間前後に、認知機能テストである「Alzheimer's Disease Assessment Scale(ADAS)認知テスト)」を実施しました。

カゼインペプチド群は、認知テストにおいて、自身の位置把握能力を示す「オリエンテーション」の項目で、プラセボ群と比較して有意な改善を示しました(P = 0.022)。同結果は、カゼインペプチドの認知機能への有用性を報告した初の研究と述べられています。

 

②高齢者の認知機能への効果
『The effect of casein hydrolysate intake on cerebral neural regulation during cognitive tasks in the elderly(高齢者の認知課題における脳神経調節に対するカゼイン加水分解物摂取の影響)』

Exp Gerontol. 2022 Aug:165:111853. 

 

同研究では、65歳以上の男女高齢者47名を3つのグループに分け、カゼインペプチド、カゼインタンパク質、難消化性デキストリンのいずれかを摂取した後、脳機能試験、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)検査、およびアンケートによる気分の評価を行いました。

 

fMRI検査において、カゼインペプチド群で、二つの脳部位(補足運動皮質と後帯状回)の活動が有意に減少し、一つの脳部位(扁桃体)の活動が有意に増加しました。気分に関するアンケートスコアは、カゼイン由来ペプチドが有意に優れていました。このことは、特定の脳領域の神経活動を一時的に制御することで脳の実行機能を高め、脳機能を改善させたと考察されています。