高校生の時朝玄関のドアを開けると目の前にニワトリがいた。

あまりに突然に、そしてあまりに当たり前にニワトリがそこにいたので僕は一瞬時間を止められた。
そしてニワトリの時間も止まっていた。

おそらく玄関前を通り過ぎる瞬間にドアが開き、不意に出てきた人間に驚いたのであろう。

ニワトリは顔だけこちらに向け、半歩踏み出した状態で固まっていた。

僕もドアから半歩踏み出した状態で固まった。

しばらく見つめ合う人と鳥。

動いたらやられる。

そう思わせるに充分な程ニワトリはでかかった。

僕は踏み出した足をそ~っと戻し、開けたドアをそ~っと閉じた。

心の中で静かに十秒数え、こそ~っと、もう一度ドアを開けた。

ニワトリがいた。

…どっか行けよ!!
十秒やったじゃねーか!!

なんだコイツは一体どこから来たんだ。
野生のニワトリ?

そんな事はどうでもいい。
いつまでもこんな鳥類に構っているヒマはないのだ。
学校に遅刻してしまう。

僕は思い切って足を踏み出した。

一歩外に出るとニワトリも動き出す。

フンッ早くどっか行ってしまえ。

ニワトリは裏の畑の方にコケコケと歩き出した。

ニワトリの後ろ姿は驚くほどかわいかった。

僕はニワトリのお尻を追いかけた。

若干前かがみになり、両手を広げ、ニワトリを追いかけた。 夢中になって追いかけた。

畑の中を一定の距離を保ちながら追う者と追われる者。

畑の中をグルグルグルグル。

僕はふと思った。


『俺はいったい何をしているんだ』


我に返った僕は最後ニワトリに威嚇をして学校へと向かった。

もちろん遅刻した。
しかしニワトリを追いかけていて遅刻しましたとは言えなかった。