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もしも自分が絶対絶命の状況に陥ったら。
それは非現実的な妄想であり、その妄想の中での自分は
不思議な力を持っていたりなんかして、たくさんの人を助けたりとか
気になるあの娘をピンチの中から英雄的に救出してみせる!
ああ。なんて非現実的な妄想であろうか。
現実というものは無情にもそんな甘ったれた幻想を打ち砕く。
いや、無情というのは間違いなのだ。何故ならそれは至って当然であり、
常に付き纏っているものじゃないか。だって現実だもの。
明日、明後日、いや今この瞬間死んだところで、
それを無情、残酷と嘆くのは甚だ見当違いもいいところ。
受け入れるしかない。むしろ今までよく生き残ってこれた。
誇ってみればいい。ここまでよく頑張ってこれたね。
はっきり言わせてもらうが、
俺はそんな現実を受け入れるつもりなんざない。
自分の大切な人が亡くなって、あらそうですか、なんて
物分りよく二つ返事で返せるもんかよ。
錯乱して混乱して憤慨して、現実なんて野朗の存在を否定してやるさ。
東日本大震災。東北地方太平洋沖地震。
という地震が起きたそうだ。
はっきり言わせてもらうが、そんなこと知らん。
確かに揺れたな。何か物が落ちてたな。
特に花瓶が割れたのはやれやれ厄介だ。
掃除が面倒くさいもんだね。
スーパー行ったら驚いた。あんなスカスカになってるもんとは吃驚仰天。
モヤシと卵がなかったのは自らの不幸を呪わざるを得なかった。
ま、ホウレンソウとシメジと豚肉が有り余ってたからまったくもって無問題。
家に帰って調理して、普通においしくいただきました。
そうだ、テレビは何やってんだろうな。
おいおい、マジかよニュースだらけか。
地震?大変だなぁー。
ん?不謹慎?失礼?無神経?
じゃあカワイソウでした、無事を祈ってます、頑張ってください。
これでいいか?響きがいい言葉だし満足かな?
被災者の気持ちも分からない俺からの同情で飯が食えるのか?
日常に大した変化もない俺からの哀れみで寒さを凌げるか?
俺は昔大事な人をなくした。
この年になればおそらく誰もが一度や二度は経験することだろう。
そんな俺が同じように大事な人をなくした人の気持ちが分かるか。
分からん。分かるわけないだろうが。
だって違うじゃないか。
あんたと俺は違うだろ。分かるわけねえ。
人間の感情は同じだとでも思ってるのか?
同じように苦しい、悲しい、辛い?
そうだったらきっと世の中もう少しマシになってただろうよ。
俺は勉強する。色んなことを知る。
色んな本を読んで色んな人と話して色んなことをする。
そうして臨床心理士になる。
無論そこで終わるつもりはない。そうしてやっとスタートラインだ。
今の俺には何もできない。
でもな、待っててくれよ。あんたらに迷惑のかからない、いやむしろ
笑顔を作ってやれるような、そんな人間になってみせるからな。
それが今も伸う伸うと生きている俺にできることだと思う。
今、震度3きちゃった。
生意気なこと書いてごめんなさい女神様。
びびって端折ってしまった。
おっと、気付いたら二日書かずにいたことになってしまったか。
まぁそれも致し方ない。
分かる人には分かるはずだが、そう寒かったのだよ。
身を刺すような寒さにマイフィンガーも力なく項垂れ、
心は更新を求めようとも、身体がそれに応じない。
不甲斐無いぜ我が五体。
特に一昨日の朝は酷かった。
冷蔵庫を開けてみると、人体に有益そうな物もなく、
已むを得ず外に買出しにいかねばならん。
そこで窓の外を見る。
私はその光景に驚愕の念を抱かずにはいられなかった。
一面白銀の世界!という程でもなったが白いじゃねえか。
雪、白い魔物、snow。
雪が大好き、なんて物好きはいるのか?
いきなり降り始め、あらあら綺麗ねと触ってみると液体化し、
積もった上を歩くと勢いよくスライディングをかます。
一昨日俺は2、3回余儀なくスライディングをかましてしまった。
そして翌朝には水溜りを残していく。
こんなもん好き!なんてやつは夢見すぎ現実を知らん愚か者だ。
もしも本当に好きであるとしたら、それは雪自体ではなく、
そこから連想し得る何かしらの記憶があるんじゃないだろうか。
そう、あれはざっと一年前のことだ
2010年2月2日。俺は彼女と出会った。
その日は異常に寒く、2月の到来という節目の片鱗さえ感じさせぬ
相変わらずの寒さであった。
寒い。寒すぎるだろ。
少しは春に近づいたんだ。それらしい茶目っ気の一つでも見せてくれ。
とはいえ仮にこの寒さを許すとしようじゃないか。
それでもな、お前だけは許さん。そう、雪、お前だ。
足元に目を向けてみると、いつもの崩れたアスファルトの欠片は見当たらず、
不健康そうな青白さが広がっていた。
これから俺は予備校に行ってお勉強をしなけりゃならないんだ。
哀れな俺に微笑んでください、女神様。
と、都合のいい女神像を作りだし天に詠唱してもみるが、
変わらぬ空からの贈り物に溜め息ばかりだ。
そうして予備校への通学路をせっせと歩き、
いつものマイウェイ、路地裏という名のちょいとばかしの
近道を利用する。
すると、そこには傘があった。
赤い傘。ただそれはどちらかと言えば白い傘だった。
雪。雪が積もって、本来の赤みよりかは白の際立つ傘だった。
無論、傘だけがそこに鎮座していたというわけではなく、
俺から見て傘が広がってるわけであり、
おそらく何者かが蹲っているのだろうと思えた。
何をしているのかは知らん。そんなことには興味ない。
俺はせっせと通り過ぎるのみなのだ。
そうして横を通るのだが、やはりどんな人間にも好奇心という
死亡フラグメーカーがあり、俺もつい惑わされてしまったのだ。
傘の下にはダンボールがあり、
そこから可愛らしい小動物が顔を覗かせていた。
そうかい。こいつがどんな野朗かは知らんが、
よくもまぁこんな肌寒い極寒の地で愛護精神を
発揮できるもんだな。精精がんばってくれ。応援してるぜ。
そろそろ時間もなくなっちまう。行くか。
しかし何故だろうか。俺は立ち止まってしまった。
なぁ俺、どうしたよ。
行かなきゃいけないだろ。遅れるぜ。
それともなんだ、お前も愛護団体に入団か?
半端な同情心でできるもんじゃないんだ、やめとけ。
「雪。積もってますよ。」
自分の口から雑音が聞こえた。
滔々俺も受験のストレスってやつにやられたのかおい。
蹲っていたその人が顔を向ける。
そこには女神がいた。
「雪。積もっちゃってますね。」
30分経過。強制終了。
*This story is a fiction, and it doesn't relate to the event of real existence