最近書いたショーとショートです。
おい当たったよ。朝刊の広告欄の当選結果に男の名前が載っていた。えー本当。嬉しい。女も新聞の名前を確認した。抽選で10名、カップルでご招待。ある会社が企画した3泊4日の美食ツアーの募集に男はネットで応募したのだった。男はくじ運が強いわけでもなかった。くじ引きで当たったためしがなかった。そういや昨夜変な夢を見た。夕食に牛肉を食べた。朝起きると自分の顔が牛になっていた。そんな夢だった。まさか正夢じゃないだろうな。企画した会社は無名だった。これだけの宣伝費を使うからには何か画期的な商品を開発したのかな。男はフフっと笑った。こりゃ運が向いてきたかもしれない。男は人生が急展開する気がした。
1日目は都内の料亭だった。一人5万円の料理に感激した。魚も旬の野菜も選りすぐりの食材を贅沢に使い見て美しく食べて美味しい芸術品だった。美味しい料理にうまい日本酒。こんな経験二度と出来ないだろうな。男と女は満足感に浸った。2日目はフランス料理。三ツ星レストランで最高級の宮廷料理だった。いままで味わったことの無いソースにワイン。男も女も舌がとろけそうになった。まあ大変、ベルトがきつくなったわ。ワイングラスを傾けながら女は男にウインクした。その夜、二人は新婚の時のような熱い愛を交し合った。3日日は中華料理だった。和食、洋食、中華と世界の代表的な料理を味わいもう死んでもいいほど幸せな3日間だった。あとは温泉に入ってこのツアーは終わる。
男も女もツアー参加前よりしっかり太っていた。二人はメタボリックシンドロームを気にする年代に差し掛かっていた。そういやツアー参加者はみんな40過ぎで太りぎみだった。変なことにツアーは美味しいものを食べるだけで新商品の案内もなかった。男は心に何か引っかかるものを感じた。料理を食べ終わると社員らしき男がマイクロバスを走らせた。ねえ温泉ってどこにあるの。女が聞いた。都心からかなり離れたところに来たようだ。もうすぐ着きます。運転手が言った。山の一角に建物が見えた。旅館のようだった。男たちはそれぞれ各部屋に案内された。男が案内された部屋はどんぶり鉢のような湯船があった。おもしろい。女が楽しそうな声を出した。
男が先に湯に浸かり女が後から湯船にはいった。ちょっとぬるいな。男が言った。番頭さん、湯を温めてくれ。男が大きな声で言った。もうすぐ熱くなります。番頭らしき男の声が聞こえた。バタンと部屋の扉が閉められ突然天井のライトが光った。湯の温度が急に上がり始めた。おい、熱いぞ。男が水道の蛇口を探したがどこにも付いていなかった。熱いわ。女も我慢が出来なくなった。二人が湯船から出ようとしたとき突然湯船の蓋がしまった。ギャー、二人は逃げ場を失った。
チーン、電子レンジの止まる音がした。宇宙船からツアー客が降りてきた。さあおいしい料理が出来上がりました。たっぷり太った地球人の塩茹でございます。スープも下ごしらえが効いて濃厚な出来上がりです。おいしいですよ。宇宙船の横腹に銀河系美食ツアーと書かれていたのを見た地球人は誰もいなかった。