大はし夕だち少女
藤沢周平
(文春文庫「日暮れ竹河岸」収録)
おつかいに出た少女が帰路で夕立にあい、感じの良い若者が傘を差し出してくれた… という、それだけの何気ない話を爽やかに描いた短編でした。
主人公の少女は火事で親を亡くし、まだ12歳というのに奉公に出ていました。
奉公先での少女は仕事ぶりが良いので重宝がられ、今日もおつかいに来ていたのでした。
用を済ませて帰ろうとしていたところ、急な夕立に動揺しますが、そんな彼女に通りかかった20歳すぎぐらいの青年が傘を差し出します。
二言三言、交わした言葉だけでもその青年の人柄の良さが伝わります。
雨上がりの空気のしっとりとした爽やかさ、人気の無い道、伸びる影。
去っていく若者の背に、もう聞こえていないだろうに「ありがとうございました」とつぶやく少女。
大人になりかけた少女の清らかさがとても印象に残る作品でした。