UNHCRは、脆弱な立場にいる難民の権利が侵害されないよう、1979年に難民認定ハンドブックを制定した。制定の最初の動きは、1977年の国連総会におけるUNHCRの報告である。UNCHRはこう述べている。「庇護希望者が、個別、あるいは集団として、国境で入国を拒絶され、そのような国に強制送還されている。出身国に送還され迫害されたことが確認されている事例も存在する。(・・・)UNHCRは、難民地位の決定の適切な手続きの制定に最も大きな重要性を引き続き与えている。そのような手続きの形態は、もちろん、それぞれの国のそれぞれの法律構造、行政構造によって異なる。しかし、そのような手続きは、個々の申請者の正当な関心および利益を保護するために必要な一定の共通の特徴と保証を保有しなければならない。」
極論すれば、送還がなければ、認定手続きがなくても、いわゆるノンルフールマン原則は守らられている。しかし、受入れ国が送還を開始するなら、送還されてはならない人を守るための保障措置、セーフガードを定めなければならない。それがUNHCRのハンドブックだった。
UNCHRは、1977年に、最も深刻な状況に直面したと述べている。その危機意識の中から、このハンドブックが生まれた。そのセーフガード的性格を最も端的に表すのが、このハンドブック制定に先立って、定めた基本要件である。
(i)締約国の国境または領域で申請者から申し立を受ける権限ある職員(入国管理局職員または国境警察職員)は、関連する国際文書の適用対象となりうる可能性がある事案を扱うための明確な指示を受けているべきである。当該職員は、ノン・ルフルマン原則に従って行動し、その事案を上位機関に伝えることを義務付けられるべきである。
(ii)申請者は、従うべき手続きに関して必要な指導を受けるべきである。
(iii)明確に識別された機関が存在すべきである。できる限り単一の中央機関が、難民の地位の申請を審査し、第一審級における決定を下す責任を負うべきである。
(iv)申請者は、適格な通訳者による通訳を含め、権限を有する機関に申請者が自身のケース(難民の主張内容及び資料)を提出するために必要な便宜を提供すべきである。申請者に対し、UNHCR担当者との連絡を取る機会が与えられるべきであり、またそのような機会が与えられることがしかるべく申請者に伝えられるべきである。
(v)申請者が難民と認められた場合、当人に対しそのことが告げられ、難民の地位を証明する文書が発行されるべきである。
(iv)申請者が難民として認められなかった場合、同一の機関に対して行う場合、または異なる機関に行う場合を含め、また、その機関が行政機関である場合、または司法機関である場合を含め、一般的な制度に従って、処分の正式な再考を求める不服申し立てを行うための合理的時間を与えられるべきである。
(vii)申請者は、権限を有する機関によって、申請が明らかに濫用的であると立証されていない限り、上記パラグラフ(iii)に述べた権限ある機関による最初の申請に関する決定が下されるまでの間、当該国に留まることを許容されるべきである。また、申請者は、上級の行政機関または裁判所への不服申し立てに決定が下されるまでの間も、当該国に留まることを許容されるべきである。
つまり、立証のための便宜を図れ、国内の行政、司法の救済手段がすべて十全に利用できるようにしろと書いている。
この基本的要件は、ハンドブックにも記されている。それに対して、日本の入管は、ハンドブックには法的拘束力がないとして、これを尊重しないとしている。他の国ではあたりまえのようにハンドブックにもとづく認定が受けられ、一人日本が、ガラパゴス的な認定実務を閉じこもり、立証責任は申請者にあると言って、難民申請者の提出する証拠も訳文をつけなければ突き返す。
難民には、一定の共通の特徴と保証を保有する手続きを受ける権利がある。そう、それが権利であり、権利であるかぎり、法務省はこれに拘束されると、みんなで言おう
難民には、一定の共通の特徴と保証を保有する手続きを受ける権利がある。そう、それが権利であり、権利であるかぎり、法務省はこれに拘束されると、みんなで言おう