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原作を逸脱し、作者である司馬遼太郎の意図を踏みにじる改変が、
NHKドラマ「坂の上の雲」に加えられている問題について、
いくつかの情報へのポインターをまとめておきたい。
なお、「坂の上の雲」は「プロジェクトJAPAN」の担当である。

問題点のまとめ


司馬遼太郎は、太平洋戦争(大東亜戦争)末期に徴兵で陸軍に入り、戦車隊の小隊長で敗戦を迎えている。その際、彼の心に去来したのは、なぜこんな無謀な戦争を始めてしまったのかーという一点ではなかったか。それだからこそ、彼は、昭和の戦争を描くことはなかった。むしろ、維新と文明開化の明治期の日本をこのんで取り上げ、ここに昭和の軍人が失ってしまった日本人の原点があるとしたのである。

しかし、12月20日放映のNHKドラマ「坂の上の雲」の第4回「日清開戦」では、原作にない次のようなシーンが挿入されている。

 ・正岡子規ら新聞記者らを引率したソウチョウ(曹長)が、酒の徴用をしぶる老人に乱暴

     これが史実かどうかは私には分からないが、たぶん創作ではないかと思う。
     戦争末期のこの時期ともなると旅順には多くの観戦武官や外国人記者が滞在していた。
     不平等条約改正問題を抱える最中、旅順虐殺事件まで起こしてしまった日本としては
     軍紀粛正を徹底していたはずである。史実にも原作にもないエピソードをあえて挿入
     したということになろう。

 ・老人が幼い子供を指さして「この子の親は日本人に殺されたんだ」と中国語で言っているのを、
  子規がなんと言っているかと曹長に尋ねると、
  曹長は「日本の兵隊さんありがとう、と言ったのだ」と強弁し、
  「うそだろう」という子規に対して、「うそとはなんだ」と刀を抜こうとして脅す。

     日清戦争において徴兵で出征した兵士たちは殆どが農村出身であり、
     ロクに訓練も受けておらず、未だプロの戦闘員としての自覚がなかった。
     朝鮮半島を北上していく際、現地の畑で農作業をしているのに出会ったりすると、
     隊列から勝手に離れて彼等を手伝う光景さえ見られたという。
     あまり「横暴な進駐軍」というイメージを強調するのもいかがかと思う。

 ・森鴎外が登場して、日清戦争を論評。森にそこまでの歴史観はない。
  冷静に清国の行く末を見る目があったとは信じられない。
  しょせん、現在から見た歴史観をしゃべらせているにすぎない。

     面談そのものは史実のようだが、会話の内容はおそらく創作であろう。
     森鴎外は伊東祐亨の丁汝昌への降伏勧告文について言及し「ふしぎな親切」と評した上で
     「近代化と文明開化の押しつけ」「清国・朝鮮にとってみれば余計なお節介」と批判する。
     いわば日本の軍国主義、侵略戦争を非難するという論調である。
     この「ふしぎな親切」という表現は原作にも出てくる。

     原作においては、この言葉は極めて肯定的に用いられる。むしろ原作の主題と言っても良い。
     すなわち司馬は「ふしぎな親切であり、古今を通じこのような親切や提案を敵将に対して
     申し送った例はなかったであろう」という批評に続いて、独自の明治人論を展開する。

     「この時代の日本人は、そういうものであったのかもしれない。隣国のシナは日本人に
     とってながい歴史の時間、文化と文明の模範として尊んできた国であった。
     それと戦い、一朝にしてやぶってしまった。伊東の勧降状には、
     なにやらそれを気の毒がる気分が底にある。だから、貴国も強くなりうる、
     それは、秩序を一新することだ、とすすめているのだ。
     こっけいなほどのおせっかいだが、伊東は真剣だった。
     その真剣さは、かつて師匠の国であったことについての感傷だけでなく、
     ヨーロッパの技術文明の前にあやうく国がほろびようとしたそのおなじ条件下に
     清国もまた置かれつづけていることへの同情も入っている」

     以上に紹介したように、伊東祐亨の降伏勧告文は原作にあっては、
     明治の日本人の精神の象徴として扱われている。
     まさに「司馬史観」の根幹なのである。
     それを「清国・朝鮮を侵略した上で説教までする日本の傲慢」という形で描いてしまっては、
     原作の意図は180度ねじ曲げられてしまう。

 ・子規の母親に「一番の友人と戦争したのですね」とかいうようなことを語らせているが、
  それが当時の考え方だったとは思えない。

     原作では母親は笑顔を作っていて、「子規への優しさだけで生きているような
     このご婦人は、たしかに一人息子の子規がよろこぶところのものを素直によろこばねらば
     ならぬと自分に強制しているようなところがあり、とたんに感じた恐怖を顔には出すまい
     と努めた」とある。
     息子の身体を案じるというならまだ分かるが、念願の従軍記者決定に大喜びする息子に
     冷や水を浴びせかけるような発言をするというのは、極めて不自然である。
     「昔から文物を教えてくれた恩人である中国に侵略戦争をしかけた日本」という
     NHK史観がそこに混入している。

日本の近代化の「影」の部分を描くな、と言いたいのではない。
負の側面は間違いなくあったのであり、そこを描きたければ大いに描けば良い。
しかし、それをテーマに据えたいのならばオリジナルドラマを制作すべきであり、
司馬作品を原作にするのはおかしい。

国民作家司馬遼太郎のネームバリューを利用しておきながら、
司馬の主張を歪めるのは、原作者への尊敬を完全に欠いている。
作品の根本的なテーマを尊重しないのは「歪曲」であり、「演出」の域を越えている。


<まとめのソース>


Novels&Column |何やらおかしくなってきたNHK「坂の上の雲」
Novels&Column |やはり原作になかった「坂の上の雲」の数々のシーン
古今亭日用工夫集 |原作の趣旨を歪めるNHKドラマ『坂の上の雲』
書道家ABC版|小説「坂の上の雲」を読み直す・その2

公式サイト・ファンサイト


NHK 松山放送局|スペシャルドラマ 坂の上の雲
司馬遼太郎原作のNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」公式サイト
担当部局「プロジェクトJAPAN」

坂の上の雲ミュージアム

坂の上の雲マニアックス
日露戦争における最大の海戦「日本海海戦」テーマとしたサイト。
春や昔 ~「坂の上の雲」のファンサイト~

問題提起しているブログ


オノコロ|拡散 NHK「坂の上の雲」が、おかしい

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Novels&Column |やはり原作になかった「坂の上の雲」の数々のシーン
古今亭日用工夫集 |原作の趣旨を歪めるNHKドラマ『坂の上の雲』

書道家ABC版|小説「坂の上の雲」を読み直す・その2
書道家ABC版|小説「坂の上の雲」を読み直す・その3
すがすが日記|『坂の上の雲』、4話で『谷底のドツボ』と化す
まさか、右翼と呼ばないで!|NHKの台本は左翼の香り

問題提起している掲示板


・2CH関連スレッド 【大河ドラマ】坂の上の雲
  http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/nhkdrama/1261368294/

Re: やはり変だぞNHKの坂之上の雲!
馬脚を表し始めたNHKの坂之上の雲!

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