★同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬 | うまうまセブンのブログ

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同志少女よ、敵を撃て

逢坂冬馬


なんだろう。
大作を読んだ筈なのに、全く心を揺さぶられない。
主人公セラフィマに対して、全く感情移入できない。
アガサ・クリスティ賞や本屋大賞受賞作さらには、直木賞候補作という前評判を期待し過ぎていたのだろうか……

”戦争は終わろうとしていた。”

エピローグの前、ロシアへ帰る船上のシーン。
ここで脱稿であれば、まだ多少の余韻はあったかもしれない……

物語を振り返ってみよう。

まず作中、男性=悪 という表現が顕著に見てとれる。
さらに善人の男性は、ほぼ登場しない。
唯一ハッピーエンドを予感させた、セラフィマの幼なじみミーシャも、感動の再会とは程遠く、険悪な別れを経て、呆気なく撃たれて死んでしまう。
そして、かくいう私は男性である。
非常に不快に感じるのも事実だ。

そう、明らかにこの作品は、世の女性に向けて発信された女性優位論である。
シスターフッド或いはレズビアンノベルと言ってもいいかもしれない。

それ故に、私は読後のカタルシスを味わう快感に浸る事ができないのであろう。

もしかして、作者の逢坂冬馬氏は女性なのではないか❓(実際は男性らしい…)
そんな疑問が湧いてくるのも否めない。

確かに、戦闘シーンや狙撃シーン、さらには狙撃兵の葛藤といった場面の筆致は素晴らしい。
しかし、ほぼ全編が人を撃ってナンボといった殺戮のオンパレードには少々疲労困ぱいである。

アガサ・クリスティ賞受賞作ならば、もう少しミステリー色を出して欲しかったというのは本音だが、ほぼ同じ時代が舞台となる、深緑野分氏の「ベルリンは晴れているか」位の物語の奥深さを味わいたかった。
あわよくば、真藤順丈氏作「宝島」のドキドキワクワクをまた体験してみたかったと思うのである。

それはさておき、昨今、ゲームやアニメのサブカルに於いて、「ガールズ&パンツァー」、「艦隊これくしょん」等、少女戦記物が根強い。
こういった背景も、本作のグッドレビューを後押ししたのかもしれない。
そういった意味では、時代の流れに沿った作品であり、評価の高い要因なのだろう。

それにしても、エピローグはいらなかったと思うのは私だけだろうか……… 


[了]