とうとう千秋楽となった、こちらに行ってまいりました。
2026年3月22日(日)14時開演
牛田智大 ピアノ・リサイタル
京都府中丹文化会館(京都)
この日、東京は朝からいい天気。
まるで牛田くんの完走を祝福しているみたい♪
一昨日乗ったばかりの東海道新幹線に再び乗って京都へ。
東京駅の混雑は、一昨日ほどではありませんでした。
新幹線の窓からは、ちらほらと咲き始めた桜の淡いピンク色が見え
この一か月弱の間に 春が来たんだなあ、としみじみ。
京都駅から特急「きのさき」に乗り換えました。
こんなホームベーカリーみたいな、とんがってない特急があるのね。
向かい側のホームには、キティちゃん柄のかわいい電車。
特急きのさきの窓から見えるのは、林や田んぼ、古い瓦屋根の家など素朴な田舎の風景です。
いつのまにか、天気は曇り空。
のどかというよりは、ちょっと殺風景な景色を眺めながら
今回のツアーでは、いろんな場所に足を運んだなあ、としみじみ思いました。
遠征のほとんどが一人だったこともあり
晩年のブラームスの小品集を聴くと
つい、自分の心の奥深くへと内観していくような感覚になって
まるで、巡礼の旅みたいだったな、と。
昨夜の洗練された都会の大ホールのあとで
田舎のホールで最後を締めくくるのは
派手な終わり方をしないブラームスのこの作品に、どこか似ているような気もします。
特急で約1時間。到着しました。会場最寄りの綾部駅。
会場に問い合わせの電話をかけたとき、「京都と言っても本当に田舎なんですよ」と、スタッフの方が言っていたけれど、本当に何もない…(^^;)
最寄り駅とはいえ、会場までは徒歩約30分。
会館が駅前から送迎バスを出してくれました。ありがたい![]()
しかし、そのバスがかなりの田舎道を通り、川を渡り、最後には山道を上っていくのでちょっと心配に…![]()
到着したホールが思っていたより普通だったので、バスの中から安堵の声が洩れました(笑)
開場までまだ時間があったので、そのへんの椅子で時間をつぶしましたが
じっとしてると建物の中も寒い。外も寒い…🥶
ツアーの間中、全国各地で会場を彩ってくれたファンからのお花。
「20公演完走おめでとうございます」
「千穐楽おめでとうございます」
どちらも、ハードなスケジュールだったツアーの完走をねぎらう言葉が書いてありました。
京都府中丹文化会館(886席)
(画像お借りしました)
白い壁と天井、赤いカーペット
赤い座席の前後左右はかなり狭めです。
舞台の上には、艶消しスタンウェイ。
背もたれ付きの椅子と共にかなり年季が入っており
角の部分は塗装が剥げて木が剝き出しになっていました。
艶消しなのか、艶が消えたのか、ちょっとよく分からない…😅
今まで、いろんな会場に足を運んできましたが
ここまでボロい古いピアノは見たことがなくて
ちょっと衝撃的でした。
地元の人たちが多いのか、客席はザワザワと賑やかで
開演時間直前まで、あちこちから関西弁のおしゃべりが聴こえてきました。
牛田くんが登場しました。
手にはチェック柄のタオル。
照明のせいなのか、サラサラの髪が いつもより茶色く見えました。
20公演最後の千秋楽。
一曲一曲、一音一音を
噛みしめながら聴きたかったのですが
前半はあまり集中できませんでした。
静かな曲調の作品なだけに
低音の振動のような空調の音や
プログラムを広げる、カサカサした紙の音が気になってしまって。
1970年代後半に開館したホールということなので
約50年ものだと思われる古いピアノは
残響が短く、少し硬めの音色でした。
残響が短い分、音色が軽快にも感じられ
陰鬱で重々しい孤独を歌うようなOp.117-3では
いつもより受け取る印象が明るかったです。
太く低い声で絶望するような嘆きのメロディを
そっと励ますような 慰めるような
もう一つの小さな優しい旋律が好きです。
小さな雑音がすると、いつも以上に自分が神経質になっていることに気が付きました。
どうしてだろう。いつもはあまり気にならないのに。
少し前から私は結構小さな雑音を気にしています。
今日が最後のこのプログラムをしっかり聴きたいという思いと
この静かな作品を、静かに聴いて欲しいし、気持ちよく演奏させてあげたいという思い。
あと、都会のホールで聴く時の、牛田ファンの集中力の高さに慣れてしまったからなのかもしれません。
とはいえ、地元の人たちは
きっと普段もこんなふうに自分たちの街に来る音楽を楽しんでいるはずで
よそから来た私が、それにピリつくのもおかしいよな、と。
そんなことを頭の中でぐるぐる考えていたら
さらに集中できなくなってしまいました。
千秋楽なのにぃ…![]()
あと、途中で空調を切ったのか
さっきまで気になっていた振動のような音がしなくなったのはいいのだけど
…寒い![]()
休憩時間にトイレから戻ったら、調律をしていました。
高音の響きを聴いて、ちょっと心配に…。
古いピアノなのは重々承知だけれど
調律師さん、よろしくお願いします。と祈るような気持になりました。
後半になると、ずっと集中して聴くことが出来ました。
昨夜、東京芸術劇場の大ホールで、佐々木さんの調律で極上の音色を聴いたばかりだったので
いろいろが違いすぎて、さっきまで戸惑っていたけれど
そもそも、このブラームスの小品集に
残響や音色の透明感を求めなくてもいいのではないかと。
コンディションが完璧でない空間だからこそ
ひとつひとつの響きがくっきりと立ち上がり
作品の内側にあるものが、より深く伝わってくるようにも感じられました。
昨年1月の、鹿児島リサイタルの時のことを思い出しました。
演奏途中に古いピアノの弦が切れ、付け替えるのに少し時間がかかったお詫びにと
そのあとで牛田くんがマイクを持って話してくれたこと。
このピアノは黄金期に作られたもの。
ずっとこのホールで大切にされた来た、人の声に近いあたたかな音色だと
生き生きと語ってくれたこと。
最高のコンディションで演奏させてあげたかったと
傲慢なことを思ってしまった自分を恥じたこと…。
素人の私から見たら、ただの古いピアノでも
様々な会場で、さまざまなピアノを演奏し
ピアノを知り尽くしている牛田くんからしたら、一期一会のこのピアノ。
この会館で、地域の人たちとともに歴史を刻んできたこのピアノ。
きっと牛田くんは、今日もこの年季の入ったピアノを珍しがって
慈しみ、愛情をこめて仲良くなったのでしょう。
終演後に、毎回牛田くんがSNSでポストしてくれるリハーサルの写真。
まだ誰もいないホールの舞台で
ピアノと牛田くんが対話しているような静謐な空気。
私たちが享受する至福の時間の前に
牛田くんとピアノが積み重ねた時間。
Op.118の終わりからOp.119が始まるまでの
静かな移行の瞬間が今日もとても美しく
そのことが私はとても嬉しくて
ああ、こんな余韻や余白、無音の時間が生きている演奏だからこそ
私は今回こんなにも小さな音に敏感になっていたのだと気が付きました。
一音一音に、魂が込められているのを痛いほど感じます。
そこからの、ピアノと一体化したような演奏は、本当にすごかった。
演奏が進むにつれて、情熱的に朗々と歌い
このピアノからこんな音色が出せるのか!と思わず鳥肌が立ちました。
それはもう、音楽であると同時にエネルギーそのもので
技術やテクニックを超えた、作品への愛情やリスペクト
音楽家としての内面の資質がなせるわざだと思いました。
やっぱり牛田くんは世界一!![]()
情熱にあふれた最終曲のラプソディが終わった瞬間
開場は拍手で沸き、何人かの人が立ち上がりました。
おめでとう!
この超ハードなスケジュールを
牛田くんは見事に走り抜けました!
アンコールの一曲目は、ノクターン17番。
すっかり牛田くんと打ち解けたピアノの
コロコロ心地よく転がる音色を聴きながら
「おめでとう」「お疲れさま!」
そんな思いでいっぱいでした。
2曲目の舟歌は、さらにダイナミックな演奏で
新たな航海に乗り出した船の上で
目の前に広がる大海原の香りを胸いっぱいに吸い込んでいるような気持ちになりました。
舞台から姿を消しても鳴りやまない拍手に応えて再び登場し
「じゃ、もう一曲!」というように
ちょっとはにかんだように彼がピアノに近付くと
ヒューッという歓声が上がりました。
最後に弾いてくれたのは、シューマンのトロイメライ。
ここまでずっと、私にしては冷静に聴いてきましたが
さすがにいろんな想いが去来して
涙を我慢することができませんでした。
牛田くんは、最後の最後にもう一度登場し
両手の指を胸の前で組み
微笑んで「ありがとうございました」と挨拶してくれました。
ああ、終わってしまった、巡礼の旅。
寂しい気持ちはもちろんあるけれど
むしろ感じるのは達成感。
あ、私はただ聴いていただけですけが…(;^ω^)
だけど正直、リサイタルの情報が発表されるたびに
思わず次々チケットを買ってしまって
牛田くんを心配しつつ
自分自身も最後まで完走できるか心配だったから(〃▽〃)
遠征が続くとさすがにしんどくなってきて
自分の加齢を実感したけれど
今回、こんな素敵な作品の
こんな素敵な演奏をたくさん聴くことが出来て
本当に幸せでした。
陽が差し、やがて陰ってゆくような
ブラームスの心の奥をそっと見つめるプログラム。
ブラームスの心の内側に触れながら
誰しも自分自身の心の旅へと、いざなわれていたのではないでしょうか。
体力の衰えは実感したけれど
思いました。
年を取るのも、悪くないな…。
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コンサート情報です。
2026年7月10日(金)19時開演
コンチェルト(NHK交響楽団/広上淳一)
山形テルサ(山形)
♪ショパンピアノ協奏曲第1番
8月2日(日)15時開演
コンチェルト(東京交響楽団/指揮:現田茂夫)
昭和音楽大学 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
♪ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
(^-^)ノ~~













