行ってきました。
2025年9月1日(月)19時開演
アンナ・スウコフスカーミゴン 指揮
ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ:牛田智大
サントリーホール(東京)
チラシの裏側に、音楽ライターの高坂はる香さんの解説文が載ってます。
なかなか読み応えがあるのでご紹介しておきますね。
ポーランドで1901年に創設された伝統あるオーケストラ・ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団。ショパン国際ピアノコンクールのファイナルで共演するオーケストラとしてもお馴染みだが、今年が5年に1度の開催年にあたるそんなコンクールの前月、ポーランドで今期待を集める女性指揮者、アンナ・スウコフスカーミゴンとともに来日する。
ショパンの祖国であることからまずピアノ音楽を想い浮かべがちだが、ポーランドには、オーケストラ、特に弦楽器の分野でも、名手達が脈々と受け継ぐ豊かな伝統がある。
今回、ソリストとしてワルシャワ・フィルとショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏するのは、牛田智大。
2022年からワルシャワでも研鑽を積む彼は、時間を見つけてはフィルハーモニーホールに足を運ぶうち、「弦楽器が深い呼吸を持って主体となり、その歌にオーケストラ全体がついてくる」この楽団の音色に魅了されているという。
そして近年ショパンに集中して向き合い、ポーランドの歴史文化や作曲家の心情をより知っていくうち、「この作品は一般的にセンチメンタルな歌と軽やかな舞曲が特徴とされるけれど、実際には、ポーランドで革命の機運が高まっていた頃に書かれたもの。もう少し砂埃の香りが出せたら」と思うようになったそうだ。
そしてスウコフスカーミゴンもまたワルシャワで学んだ演奏家だ。ポーランドの文化に生きてきた共演者たちと牛田がステージで対話し、何かを受け取ってゆく様子を目の当たりにできるかもしれない。
オーケストラがあわせて共演するのは、ショパンの約20年後のドイツに生まれたブラームスの交響曲第1番。
牛田のいう弦楽器の“深い呼吸”は、もちろんブラームスでも十分に生きてくることだろう。
偉大な指揮者たちと共演を重ねてきた伝統あるオーケストラが、次世代を担う祖国の女性指揮者と届ける新しい音楽、さらなる飛躍への期待が高まる日本の俊英との共演と、注目すべきポイントの多い公演。会場で聴き届けよう。
音楽ライター 高坂はる香
いつもならちょっと早めに到着して、開場時間に建物入口のパイプオルゴールを聴くのが好きなのですが
今回は開場時間に間に合わず、聴くことが出来ませんでした。
(写真がブレました(^^;) )
ホール入口には今回もファンからのお花。
サントリーホール(2006席)
(画像お借りしました)
パイプオルガンの中央から両翼のように立体的に突き出したパイプ。
銀杏型の舞台を取り囲むように並ぶシート。
この特徴的な舞台配置は「ヴィンヤード形式(ぶどう畑形式)」と言うそうです。
入口のパイプオルゴールの人形が、ぶどう畑のおじいさんと少年というのは、これと関連があるのでしょうか。
サントリーホールの客席は、P席や2階席が低く近く感じます。
だけど何故か私は、ここに来るといつもちょっと緊張するんですよね。
前回牛田くんがここで演奏したのは今年3月。
あのときは、牛田くん終演後にロビーに立って能登半島地震の募金活動をしたのよね。
…って、あれもう半年前? はやっ!
舞台の上にはオーケストラ用のオフホワイトのパイプ椅子が並び
中央にはスタンウェイピアノがありました。
背もたれのない椅子の座面部分のサイドには、赤いラインが2本入っています。
耳をすますと管楽器の音出しの音が聴こえてきます。
でも、よくある光景のように、一部の奏者が舞台上で音出しする姿はありません。
一斉に登場するスタイルなのね。
座席について入口でもらったチラシを見ていると、
今後の牛田くんの演奏会のものが何枚か。
…って、
ちょ、見て皆さま!
ブーーツ!!!
未だかつて見たことないような牛田くんのどアップ。
(サイズ参考画像)
裏面も素敵!![]()
プログラム
♪:ショパンピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
~ ~ ~ 休憩 ~ ~ ~
♪:ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 Op.68
おとといの大阪の後半は「新世界」だったけど、今日はブラームスなんですね!
開演時間にチャイムが鳴り、両サイドからオーケストラのメンバーが登場しました。
特に男性の年齢層が高めの印象で
白い髪に白いお髭の紳士が何名か。
チューニングが終わって空気が落ち着くと
牛田くんが登場しました。
一昨日と同じ黒蝶ネクタイのタキシード。
そして、指揮者のアンナ・スウコフスカーミゴンさん。
始まった弦の音色は軽やかで圧がなく
いつもなら重苦しく垂れ込める雲を連想するのに
心地よいそよ風のように感じました。
前を向き、膝の間に両手を挟むようにして座る牛田くん。
ピアノの演奏が始まる直前
マエストロが振り返り、牛田くんに向かって小さく合図するように眉を上げました。
すうっと大きく息を吸い
体ごと鍵盤に乗っかるように始まったピアノ。
美しい…。
オケもピアノも弱音が素晴らしい。
特に規則正しく短いリズムを刻む左手は
しとしとと降り続く小雨のよう。
0.1㎜くらいしか 鍵盤を押してないんじゃないかと思うくらい ささやかで繊細です。
弦楽器の音色は撚る前の絹の糸。
白い繭玉を転がして 取り出す細い細い糸。
深い紺色の海のように
すべてを厚く抱き込んだと思ったら
内側に滾(たぎ)る思いを吐き出すように
情熱的に感情を吐露します。
なんて自由に饒舌に 情感豊かに歌うんだろう。
やはり今までのこの曲の演奏と
何かが少し変わった気がします。
この音色。調律は佐々木さんかな。そうだといいな。
ピアノの指をよく見ていると
左手はオーケストラの奏でる音とリンクしているみたい。
5本の指が、小さなオーケストラみたい。
濛々と立ちのぼるような熱を帯びた音のうねりに
「砂埃」という表現がよく分かる気がしました。
一楽章の後半にさしかかると
牛田くんの首筋を伝う一筋の汗。
シートに身を沈め
ここ、サントリーホールでの いろんなことを思い出していました。
11年前ここで、ユンディのリサイタルに来たとき
受け取ったチラシの束の中に牛田くんのリサイタルのものを見つけ
憧れのピアニストの演奏会で、彼のチラシが配られるようになったことが嬉しくて
いつか、この場所に立つ彼の姿を思い描いたこと。
中村紘子さんのピンチヒッターで
16歳になったばかりの牛田くんが
はじめてここで『戴冠式』を演奏した時のこと。
初めてのソロ・リサイタルが
コロナの感染拡大で、当日になって中止が発表されたこと。
悔しくて悔しくて ファン友さんと電話しながら二人で泣いたこと。
8月に行われた振替公演のリサイタルは
ちょっと重苦しい雰囲気に包まれて
みんながマスクして ブラボーも禁止で
一席ずつ空けて座っていたこと。
デビュー10周年の追加公演リサイタルで
ロビーに置かれた大きな大きな花。
収録のためのカメラやマイクが設置され
演奏が始まる前の客席が、息苦しいほどの緊張感に包まれたこと。
「牛田智大 ラフマニノフを弾く」
と銘打ったコンチェルトの演奏会で
私の席からは、ほぼ視界がピアノに占領されて牛田くんの姿がほとんど見えず
後遺症になりそうなくらい、激しくダメージを受けたこと。
そんなこんなの軌跡を残し
気がつけば、もう牛田くんは
このホールを満席にして、世界のオーケストラと素晴らしい演奏をする
超一流のピアニストになっていた。
そう思ったら、胸がいっぱいで
ただただ私は嬉しかった。
ピアノの出番が終わると
マエストロは左の肩ごしに牛田くんを振り返りました。
第二楽章も
なぜか印象がいつもと少し違ってました。
目を瞑ると広がる金色の稲穂の波。
ショパンが異国の地で故郷ワルシャワに思いを馳せたように
脳裏に浮かんだのは私の故郷。
金色に波打つ初秋の田んぼ。
その上を 泳ぐように飛ぶトンボ。
第二楽章は、柔らかなカーテンのような朝靄だと感じていたけれど
今日感じるのは肥沃な大地。
土の匂い。
あれ?こんなに骨太だったっけ…?
豊かな故郷の土地への愛情を
厚い音楽でしたためる想い。
次の展開を予告するチャイムのように
チャラリン…と響くピアニッシモ。
「さあ、次のステージが始まるよ。ちゃんとついてきて」
うんうん、知ってる。分かってる。
楽しみにしてたよ。ここからの展開が大好きなんだもの。
第三楽章に突入すると
曲線的だったマエストロの指揮が、キレのある直線的なアクションに変わりました。
幕が開けた。春が来た!
視界いっぱいに広がる きみどり色の世界。
ピアノの音色も オーケストラの音も
昔お土産でもらった小さなカウベルや土鈴のように
コロコロと土の匂いを含んで歌ってる。
熱い。
体が熱い!
何万回・何十万回辿った道を記憶しているように
奇跡のような速さで動く牛田くんの指。
瞬きできない。
呼吸が出来ない。
手のひらが汗ばんでるのが分かる。
音楽ってすごい。
なんかもう言葉にならない。
オーケストラが楽譜をめくる音も
ピアニストの唸るような息も 床を蹴る靴の音も
自分の内側で脈打つバクバクした鼓動も
全部含めて音楽だ!
演奏が終わると、男性の叫ぶようなブラボーの声が飛びました。
感・動 ・!
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サッと立ち上がった牛田くんは
マエストロと握手して互いを讃え合い
次いでコンマスとも握手しました。
ああ、やった。完走した!
素晴らしいゴールを切った!
私ったら、牛田くんの呼吸や指の動きを見ているうちに
まるで、共に約40分の難局を乗り越えたような気持ちになりました。
汗かいちゃった(^^;)
なんだろう?この心地よい疲労感。
カーテンコールでオーケストラに片手をかざしながら登場した牛田くん。
歯を見せてニッコリ笑っています。
振り返ってP席に 高く2階席、3階席に
視線を上げて丁寧なお辞儀。
最後はマエストロと繋いだ手を高く上げてお辞儀しました。
自分は座っていただけなのに
なぜかものすごいやりきった感(笑)
今日も牛田くんのアンコールはありませんでした。
ピアノを移動するスタッフの中に
調律師の佐々木さんの姿がありました。
わーい、やっぱり佐々木さんだったのね![]()
もう私は勝手にゴールテープを切ってしまったので
後半は抜け殻状態でした。
今日は日中いろいろ大変だったんです。
仕事がお休みだったので、午前中ジムに行ったのですが
外でドシン!と大きな音がして
出てみたら男の人が自転車ごと倒れてて
口から血を流して痙攣していたんです。
そこにいたみんなで慌てて救急車を呼んだり
大声で何かを叫んで暴れようとする彼を落ち着かせようとしたり
水や座布団を用意したり
そのうちその人は、みんなの制止を振り切って
救急隊が到着した頃には
逃げるように駅の方に走り出し
万が一電車に飛び込んだりしたら大変なので
一人が走って追いかけたりして
ちょっといろいろ衝撃的でした。
トレーニングもそこそこに
もうみんなグッタリで
帰ってシャワーを浴びようとしていたら
荷物が届いたり、水道メーター取り替え工事の人が来たり
実家の不動産屋さんから、何度か連絡が来たり…。
そうこうしていたら、思いがけず嬉しい依頼が舞い込んできて嬉しくなっちゃったり
体もだけど、気持ちもとても忙しかったんです。
やっとシャワーを浴びてサッパリしたら
なんか今度は力が抜けてあくびがいっぱい出始めました。
演奏会中に眠くなったりしてはイカん!(`Δ´)
と、濃いコーヒーを飲んでから家を出ました。
ブラームスの交響曲第1番は
20年以上かけて作られたというのだから驚きです。
気が長いんですねー、ブラームス。
私は一昨日の大阪に続き
確かめるように、穴が開くほどマエストロの後ろ姿を見つめたけれど
やっぱり信じられないくらい脚が長い。
いいなあ、お尻小さくて。
第二楽章のコンマスのソロの音色が
とってもとっても素敵でした。
プログラムの解説に書いてあったように
ベートーヴェンにそっくりだと思ったのが第4楽章。
でも、ベートーヴェンと違うのは
生真面目に考え尽くした感じもする。
ベートーヴェンは、もっと猪突猛進なイノシシっぽいイメージ。
…って、素人が偉そうにすみません(;^ω^)
アンコールは、舞台袖から勢いよく登場したマエストロが
指揮台に駆け上がるとすぐに始まりました。
大阪の時と同じ、ブラームス:ハンガリー舞曲第6番でした。
マエストロの指揮は、踊るようにキレッキレです。
あれ?私、大阪の時のレポに「優雅」とか「聖母のような微笑み」とか書かなかったっけ…?
ちょっと自分の感性が信用できなくなりました(^^;)
ものすごくパワフルで
エネルギッシュな瞳は、時々獲物を狙うヘビのようで
(カッコイイって意味ですからね)
聖母と言うより女性闘牛士みたい。
好きだわ~![]()
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で、駆け足で登場したり退場したりする様子は
走ったら絶対短距離速い人な感じ。
やっぱりお転婆な長靴下のピッピみたい(≧▽≦)
背が高いんですね。
男性のコンマスも長身の方なのに、彼よりさらに高いんです。
(牛田くんと並んだ時、同じくらいだったかな…?)
アンコールが終わると、今日もマエストロ自らコンマスを促して腕を組み
まるでマエストロの方ががコンマスをエスコートするみたいな雰囲気で
仲良く何やらおしゃべりしながら舞台袖に消えていきました。
ホールの建物を出た瞬間、夏の熱気が身体にまとわりつきました。
ああ、お腹すいた~。
こちらからは、以上です。
(^-^)ノ~~















