行ってきました。

 

 

 

 

2025年7月12日(土)14時開演

華麗なるコンチェルトシリーズ 第29回

横浜みなとみらいホール(神奈川)

(神奈川フィルハーモニー管弦楽団/指揮:米田覚士)

 

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全4回シリーズの、今日は4回目です。

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10月のショパンコンクールへの参加も発表され

 

ここ数ヶ月は演奏会もほとんどなく

 

留学先のワルシャワで充実期間を過ごしてきた牛田くん。

 

 

その牛田くんのショパンピアノ協奏曲が2曲も演奏されるのですから

 

たくさんの人が、どれだけこの日を心待ちにしていたことでしょう。

 

 

もちろん、私もです(*^.^*)

 

 

 

 

 

 

 

 

みなとみらいホールはもう何度も足を運んでいるし

 

駅から直結してるのに

 

ボヤボヤしていて出口を間違えたらしく

 

ちょっと迷ってしまいました(^^;)

 

 

 

 

 

そうそう、まずはこの長いエスカレーターを昇っていくのよね。

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着きました。横浜みなとみらいホール。

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このホールに来るのは、今年1月のリサイタル以来ですが、随分遠いことのように感じます。

 

 

 

 

 

 

 

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おっ、今回もありました。今やすっかり風物詩?となった、ファンからのお花。

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みなとみらいホール(2020席)

 

 

 

(画像お借りしました)

 

 

 

 

 

 

 

舞台の上にはオーケストラ用のオフホワイトの椅子が並んでいます。

 

黒い譜面台と、鮮やかな黄色い台紙の譜面。

 

 

既に前面中央にスタンウェイピアノが配置されていました。

 

今日の椅子は、いつもより少しだけ高めのような…。

 

 

 

 

 

 

プログラム

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チラシと同じA4サイズ。

 

「牛田智大のショパン」だって!

 

 

 

 

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♪フェリックス・メンデルスゾーン:序曲「美しきメルジーネの物語り」Op.32(管弦楽のみ)

 

♪フレデリック・ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 変ヘ短調 Op.21

 

       ~ ~ ~ 休憩 ~ ~ ~

 

♪フレデリック・ショパン:ピアノ協奏曲  第1番 ホ短調 Op.11

 

 

 

 

昨年10月のオペラシティでは、室内楽で この2曲のピアノ協奏曲を

 

第1番 → 第2番 の順に演奏したので今日はどうだろうと思っていましたが

 

第2番 → 第1番 と、作曲順のようです。

 

 

 

 

 

 

開演時間になると銅鑼が鳴り、注意事項を伝えるアナウンスがありました。

 

その文言の中に、補聴器に関するものもあり

 

1月のリサイタルの時、補聴器のハウリング音で残念な思いをしたことを思い出しました。

 

 

あの補聴器の主は、その後誰かから注意を受けたりしたのでしょうか。

 

その人が今も変わらずに、音楽を楽しんでいるといいなと思います。

 

 

 

 

 

 

オーケストラのメンバーが舞台に登場しました。

 

 

 

男女ともに黒い衣裳ですが

 

昔に比べ、最近ではパンツスタイルの女性奏者が増えたように思います。

 

これも時代の流れを反映しているのかもしれませんね。

 

 

 

 

今回、コンマスの石田さんの登場を秘かに楽しみにしておりました。

 

 

だってこの方、ヴァイオリニストというよりも任侠っぽすぎるじゃないですか。

 

 

 

 

ツカツカと登場しました、石田組長。

 

薄い色のヴァイオリンの下部分を、ぐわしっと片手で掴んでいます。

 

 

黒いスーツに白っぽい縁の眼鏡。

 

やや細身のジャケットは、シングルの3つボタンです。

 

太めのズボンがまるで学ランのボンタンのようで

 

中学時代の、ワルだけど硬派でモテてた先輩を思い出しました。

 

 

すごい個性と吸引力。

 

渋さと硬派でかつて一世を風靡した、「一世風靡セピア」を思い出しました。

(いろいろ古くてすみません(^^;))

 

 

 

 

 

そして、米田マエストロの登場です。

 

右手にタクトを持ち、左手を優雅に踊らせるように現われたその姿を見て

 

舞台に立つ人というのは、皆それぞれに個性豊かなオーラを持っているものだな、と感心しました。

 

 

 

 

 

 

メンデルスゾーン:序曲「美しきメルジーネの物語り」

 

 

最初は管楽器のモコモコした印象

 

やがて弦楽器がギザギザと力強く

 

そして優雅になめらかに

 

 

そんな印象の曲でした。

 

 

 

プログラムの解説によると、

 

フランスやドイツに伝わる昔話のメルジーネの物語は

 

土曜日になると下半身が蛇の姿になってしまう水の精メルジーネと

 

騎士が恋に落ちて子供をもうけるが

 

「土曜日だけは絶対にその姿を見ないこと」という約束を騎士が破って見てしまい

 

メルジーネが夫や家族の元を去ってしまうという内容。

 

日本の「鶴の恩返し」とも似ていて

 

「人とならざるものの恋」「禁忌を破る」という

 

古来からの世界各地で語られたテーマの物語だそう。

 

 

下半身が魚の人魚ならまだしも

 

下半身ヘビってのもイヤですねえ(^^;)

 

そんな姿、絶対好きな人に見られたくない。

 

好きな人じゃなくても見られたくない。

 

いや、よく考えたら下半身魚も結構グロい。

 

あ、そういえば今日は土曜日だ!

 

 

などと考えているうちに、演奏が終わりました。

 

 

 

 

 

舞台上手からスタッフの男性が登場し、ピアノの蓋を持ち上げて、指揮台の前の譜面を交換しました。

 

クリームがかった表紙は、パデレフスキ版ですね。

 

オケの配置はそのままです。

 

 

 

石田さんが立ち上がり、ピアノの「ラ」の音を打鍵して

 

オーケストラがいっせいに音を出してチューニングを始めると

 

舞台の照明が少し暗くなりました。

 

 

 

 

 

木の扉が開くのを待ちながら

 

心臓がコトコトと早くなりました。

 

 

 

登場しました、牛田くん。

 

 

黒いスーツにグレーのベスト、斜めにストライプ柄が入った紺色のネクタイをしています。

 

 

バンコク公演の時、かなり髪が伸びていたので、髪を切って登場するのではないかと思っていたけれど

 

今日も髪は長いまま。前髪を分け、おでこを出しています。

 

 

次いで、登場した米田マエストロ。

 

黒いスーツの下に黒いシャツ。

 

 

 

このお二人は、3年前の冬、福岡で共演しています。

 

 

このときに、「うっしー」「よねちゃん先生」と呼び合うほどに打ち解けたお二人。

 

開演前に楽しいトークを聞かせてくれて

 

終演後も深夜1時まで博多の屋台で二人で飲んだそうですから

 

きっと今日も若い音楽家同士の遠慮の無い化学反応が起こることでしょう。

 

 

 

 

 

ピアノの前に腰を下ろした牛田くんは

 

座ったまま椅子の両サイドのつまみを後ろに回し

 

椅子をやや低く調節しました。

 

 

 

 

 

憂鬱な色調で どんよりと始まったピアノ協奏曲第2番。

 

 

雲間から射す 弱い光のような管楽器の音色。

 

 

 

牛田くんは 上体をやや右側に倒し、呼吸と共に最初の音を紡ぎ出しました。

 

 

 

憂鬱さを嘆くような

 

一人静かに頬を濡らすような寂しげな音。

 

 

 

生まれた音色は、空気の中を漂って

 

みなとみらいホールの後ろの方まで飛んでいきます。

 

 

今日の音色は、色で例えるならワインレッド。

 

 

 

懐かしむように

 

苦悩するように

 

混沌とした群衆の波の中で一人立ち尽くし

 

飲み込まれて見えなくなる。

 

 

 

短く弦を弾く弦楽器のピチカートは

 

ポツポツと頬にあたる雨粒。

 

 

 

ピアノの音は、やがてクリスタルのように透明に昇華して

 

ゆったりと両手を広げ

 

大地を湿らせる慈雨のよう。

 

 

 

 

 

 

第二楽章の始まりは

 

 

一晩中泣きはらした夜が明ける瞬間に似ていると思います。

 

 

 

黒い夜が徐々に灰色に変わり

 

白い光に包まれたときに聴こえるピアノの音色。

 

 

 

なんて美しいんだろう…。

 

小鳥の水浴びを見ているような

 

鈴のようなトリル。

 

 

ショパンの2曲の協奏曲の全6楽章

 

それぞれが素敵だと思うけれど

 

この第2番の第二楽章のメロディの美しさは言葉に出来ないくらい。

 

 

私は幸運なことに、この曲を11歳の牛田くんの演奏で初めて聴きました。

 

おおげさではなく、この世にこんな美しい音楽が存在することが驚きでした。

 

 

その後、図書館で借りたラン・ランのベストアルバムに、この第2番第二楽章が抜粋で収録されていて

 

スマホに落として繰り返し繰り返し聴きました。

 

 

 

ふたたび暗雲が立ちこめて 強いフレーズを弾く瞬間

 

うなり声に近いほどの、牛田くんの凄まじい吐息が聴こえました。

 

 

 

この曲は、14歳の牛田くんが、初めての海外オーケストラとのツアーで演奏した曲。

 

きっと牛田くんにとって、原点とも言える曲でしょう。

 

 

 

鍵盤の上を、ゆったりと駆け上がっていく楽章最後のピアノの音は

 

泣きはらした重い瞼に

 

「ここだよ」と、朝の地平線の位置を教えてくれているみたい。

 

 

 

 

 

 

民族舞踊のような第三楽章。

 

 

牛田くんの足が、ダンダンと床を蹴ります。

 

 

 

私の場所からは、牛田くんの表情を見ることは出来なかったけれど

 

後ろ姿と両手の動きがよく見えました。

 

 

 

長く伸びた黒髪は、ナチュラルにおりていて

 

サイドの耳も隠れています。

 

ひよこのしっぽみたいに、ちょっとはねた後ろの髪。

 

こんなに長い髪の牛田くんを見たのは初めてかも。

 

 

茹でたささみのような色の手が、鍵盤の上を踊るようにして生み出す音の波。

 

 

「もう悩むのやーめた!」とでも言うように

 

明るく突き抜けて、軽やかに自由に歌うピアノ。

 

 

 

ドラマチックに盛り上がったオーケストラの音が消えると

 

ファンファーレのように何かの始まりを告げるホルン。

 

 

それを受け、いっそうキラキラとピチピチと

 

若い命を輝かせて歌うピアノ。

 

一緒に跳ねて踊る、ヴァイオリンのピチカート。

 

 

猛スピードでピアノが鍵盤の上を駆け上がり

 

オーケストラがフィニッシュを迎えた瞬間

 

会場から、いくつもの「ブラボー!」の声があがりました。

 

 

 

 

立ち上がり、米田マエストロと握手を交わし

 

握手をしたままペコペコと互いにお辞儀をする二人(可愛い)。

 

 

次いでコンマスの石田さんと握手をし

 

客席の方に向き直った牛田くんの額から、一筋の汗が滑り落ちました。

 

 

明るい表情で歯を見せて微笑む牛田くん

 

 

 

ブラボーーッ!

 

 

 

 

 

カーテンコールでは、万雷の拍手の中、左手を米ちゃん先生とオーケストラの方にかざして登場しました。

 

 

 

 

 

晴れやかな表情で、繋いだ手を高く掲げる若きソリストとマエストロ。

 

 

素晴らしい再共演です。

 

 

 

 

 

なんか私はもう喉がカラカラで

 

休憩時間に持参した麦茶をゴクゴク飲みました。

 

 

ああ、素晴らしかったー!笑い泣き

 

このあともう1曲協奏曲が聴けるなんて夢みたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩時間が終わり、すべての準備が整うと

 

コンマス石田さんが登場しました。

 

 

さすが組長、むやみに愛想を振りまかないんですね。

 

 

 

 

牛田くんが登場し、

 

そのすぐ後ろを、米ちゃん先生がパチパチと拍手しながら登場しました。

 

 

 

 

 

ショパン:ピアノ協奏曲 第1番

 

 

オーケストラが、聴きなれたあのメロディを奏でます。

 

 

もっと陰鬱な雰囲気をイメージしていたけれど

 

ふくよかで明るめのオケの音色。

 

 

 

よく耳をすませて聴いていると

 

かすかに近付いてくる春の兆し。

 

 

低音のバスの音色は

 

氷山が崩れて海に落ちる音。

 

 

ポトポトと弾く弦は

 

雨樋を伝って地面に落ちる 溶けた雪の雫。

 

 

 

大地を震わす地鳴りのように始まって

 

繊細なメロディを紡ぎ出すピアノ。

 

 

 

このショパンのピアノ協奏曲第1番第一楽章には

 

若きショパンのすべてが凝縮されているように感じます。

 

 

望郷 渇望 怒り 悲しみ 諦め 葛藤

 

 

 

真剣な表情で、時々ピアノの方を振り返るマエストロ

 

両手の動きがとても滑らかで柔らかい。

 

 

 

前足を投げ出して演奏する石田組長は

 

やっぱりちょっと学ラン姿の不良みたい。

 

投げ出した足の先のエナメルの靴もワルっぽい。

 

 

 

隆起した地層のような大きなうねりには

 

出口を求めてさらに加熱する

 

ショパンの若い生命力が溢れてる。

 

 

 

悲しげで優美なピアノの音色。

 

あ、深い闇に落ちていくような左手が、何かを懸命に訴えてる。

 

 

 

やがて平穏を取り戻し、微かに感じる懐かしい日向の匂い。

 

もう取り戻すことの出来ない過ぎ去った日々が

 

さらさらと指の間からこぼれ落ちていく。

 

 

金切り声で叫ぶような右手

 

足元の床が崩れ落ちるような左手

 

 

重々しく第一楽章が終わりました。

 

 

 

 

 

静かに始まる第二楽章。

 

 

白いクレヨンで、太い線を引くようなホルンの音。

 

ショパンの協奏曲は、どちらもホルンが重要な役割をしているように感じます。

 

 

 

上体をのけぞらすようにして、弾き始めた牛田くんのピアノ。

 

 

ああ、なんだろう。このせつなさは。

 

 

 

優美さや可愛らしさ、メロディの美しさで言ったら多分第1番の第二楽章の方だと思うのに

 

ちょっと洗練された第2番の第二楽章のこの世界観。

 

 

甘酸っぱいせつなさと 愛しさや恋しさが胸いっぱいに広がってくる。

 

誰かに片想いしてる時みたい。

 

 

そう、まだ異性と付き合ったことがなくて

 

遠くから憧れる好きな人への恋心を、独りよがりに募らせて胸を焦がすような

 

まだ幼さの残る 青くて若い痛み。

 

 

自分なんか…と諦めてみたり

 

それでも目の端でその人の姿を探してみたり…。

 

 

 

きゅ~ん…

 

 

 

 

 

光のように繊細で清らかなピアニッシモ。

 

 

最後に魔法の粉を振りまくような展開部分では

 

いつも、デンマークの童話「雪の女王」を思い出します。

 

 

鏡が砕けてできたガラスの破片。

 

たしか、この破片が、男の子の目に入ってしまうのよね。

 

 

 

オーケストラが紡ぐ柔らかな音色は

 

朝靄のようなオーガンジーのカーテン。

 

 

ピアノが名残惜しそうな余韻を残して

 

第二楽章が終わりました。

 

 

 

 

 

 

第二楽章から第三楽章に移行する瞬間の

 

「さあ行くぞ!」というような

 

「静」から「動」への転換がたまらなく好きです。

 

 

勢いよく飛び跳ねるピアノの入りに、いつもものすごくワクワクします。

 

 

 

すべてを振り切り、ただ喜びだけを受け止めて走っているような

 

今まで気付かなかった幸せに気付き、それを抱きしめ謳歌しているような。

 

 

 

窓辺に吊した水晶のサンキャッチャーが

 

太陽の光を取り込んで、あちこちに映し出す小さな虹の陰。

 

万華鏡のように細かく華やかに広がる光。

 

 

なんだかとても心地よい。

 

なんだろう、この安心感。

 

 

 

大丈夫。牛田くんは絶対大丈夫!

 

 

 

 

そしてこの曲は、今日も眩しいくらいの生命力に溢れてる。

 

音の洪水が、幾重もの幸福の渦になってホールいっぱいにに広がっていく。

 

 

 

右手と左手を 太い輪ゴムで固定したみたいに

 

双子のように同じ動きをする牛田くんの指。

 

 

劇的なフィニッシュを迎えると

 

さっきよりたくさんのブラボーの声がいくつもあがり

 

立ち上がる人の姿もありました。

 

 

 

今度は駆け寄って、ハグを交わす牛田くんと米ちゃん先生。

 

 

すごいなあ。

 

3年ぶりの二人の共演に、今日はどんな化学反応が見られるかしらと思っていたら

 

ちゃんとショパンの世界観を損ねることなく

 

必要以上に自分の色を織り交ぜることもなく

 

ただ共に 本物を創り出すことに専念しているように見える。

 

 

なあなあになったりせず

 

真剣に より質の高い音楽を追求している。

 

 

 

 

譲り合うように、互いに手をかざす二人。

 

 

いい表情です。

 

 

 

 

 

 

 

アンコールを弾くために牛田くんがピアノの前に座ると

 

照明がさらに暗く絞られました。

 

 

そっと引き出すように奏でた音色は

 

なんと、バラード4番でした。

 

 

え、アンコールに、こんな大曲を!?

 

 

もしやこれは、よねちゃん先生のリクエストでは…?

 

 

そうよね。なんと言っても今日のプログラムのタイトルは「牛田智大のショパン」だもん。

 

 

 

なんて悲しげな音色。

 

 

やがて大きく膨らんで

 

別次元へといざなっていく…。

 

 

 

ああ私、また油断してた。

 

 

 

 

これから書くことが、ちゃんと表現出来るか分からないけれど…。

 

 

 

 

 

 

今日、ショパンの2つの協奏曲を聴いて

 

まだ病気に冒される前の

 

若く健康なショパンをたくさん感じました。

 

 

祖国への思いや政治背景への怒り

 

自身の不甲斐なさや悩み

 

初恋の胸の痛み。

 

まあいいや、と吹っ切って

 

謳歌する青春の喜び。

 

 

 

 

私はショパンの曲が好きだけれど

 

その反面、ショパンが円熟して以降の作品は

 

正直ちょっと苦手だったりします。

 

 

単細胞な私には、繊細すぎて ちょっと難解で

 

傷つけてはいけない 解釈を誤ってはいけない

 

そんな  おっかなびっくりな部分があります。

 

 

 

特に、3年前のデビュー10周年記念のリサイタルで

 

牛田くんが演奏した数々の後期の作品なんて

 

最初は私にはレベルが高すぎて感性がついていけないのだけど

 

聴き慣れてくると、今度はショパンの世界に入り込みすぎてしまう。

 

 

まるで幽体離脱でも起こすかのように

 

時空を越えて、別の次元に連れて行かれ

 

これでもかというように死生観を問いかけられ

 

翻弄されすぎて、気持ちが日常に戻るのに時間がかかるような気がする。

 

 

海老名で初めてマズルカ遺作を聴いたときの衝撃は、今でも忘れられません。

 

 

 

 

あの頃のショパンのリサイタルは

 

素晴らしかったし、ものすごく聴き応えがあったけど

 

ある意味とてもハードだった。

 

 

それを考えると、今日のコンチェルトは気楽に聴ける。

 

 

 

…なんて、さっきまで思ってたのに…

 

 

 

 

今、目の前で繰り広げられている

 

猛り狂うバラード4番に

 

息をするのも 呼吸をするのも忘れそう。

 

 

 

 

そして、

 

4年前のショパンコンクール。

 

 

 

緊張と興奮と動揺で

 

まるで自分が自分じゃないようだった あの何日間。

 

 

いつ眠ったのか いつ食べたのか

 

自分でも分からないような心ここにあらずの時間。

 

 

心の傷を封印するように 違うものに目を向けようとしたけれど

 

やっぱり本当は傷ついていた。

 

客観的に「コンクールを楽しむ」なんて、とても出来なかった。

 

 

 

その後、爆発した牛田くんの人気。

 

あの時を境に、それまでとは いろんなことが確実に大きく変わった。

 

 

 

今度はもっと、大きな変化が待っている。

 

そのことが、正直私は怖い。

 

 

だから、ショパンコンクールの話を誰かに振られても

 

「楽しみ」よりも「怖い」という感情を先に感じてしまう。

 

もっと ずっと先のことのように 見て見ぬ振りをしてしまう。

 

 

なんてダメなファンなんだ。

 

なんてちっぽけなファンなんだ。

 

ずっと応援してきた人が

 

今度こそ世界の頂点に立とうとしてるのに。

 

 

 

挑むような 飲み込むような迫力のバラード。

 

 

 

もう既に 始まっているんだ。

 

牛田くんは、とっくにコンフォートゾーンを越えているんだ。

 

本当に震えそうなのは、私じゃなく彼の方なのに。

 

 

 

 

 

 

何十年も先のことを思い描きました。

 

 

牛田くんがどんなに遠くに行っても

 

どんなに有名になっても

 

ずっと彼のピアノが聴きたい。

 

 

シワシワになっても ヨボヨボになっても

 

演奏会に足を運びたい。

 

 

チケットは簡単に取れないかもしれない。

 

今よりも私は瞬発力が鈍っているし、情報収集も難しいかも。

 

 

そうだ、孫を味方に付けよう。

 

孫にチケットを取ってもらおう。

 

 

そのためには、素敵なおばあちゃんになって、孫と仲よくなって

 

いや、その前に娘が子供を産まなくちゃ。

 

ということは、その前に結婚を…

 

 

…って、もういいわ!(;^ω^)

 

 

 

 

 

 

そんなことを逡巡しながら

 

一音たりとも聞き逃すまいと 前のめりになって聴いていたせいか

 

演奏が終わった時には、100メートルを全力疾走したみたいに

 

ヘトヘトになってました。

 

 

 

私以上に10㎞を全力疾走したみたいに

 

息が上がり、汗をかいて立ち上がる牛田くんを

 

たくさんのブラボーと熱い拍手が包みました。

 

 

 

舞台の上で発光するような彼の姿を見たら

 

自分の中のモヤモヤが 吹き飛んだような気がしました。

 

 

 

 

 

 

「牛田智大のショパン」

 

 

 

牛田くんの決意表明を目の当たりにしたような演奏会でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神奈川芸術協会 Xより