おはようございます。
4日の愛知のリサイタル、ワケあってレポートを書くことが出来ないのですが
ゴメンナサイ
この感動の余韻が消えないうちに、海老名リサイタルのレポをサクっと書きたいと思います。
2022年3月5日(土)14時開演
ピアノ・リサイタル
海老名市文化会館(神奈川)
<プログラム>
オールショパンプログラム
♪ バラード4番
♪ 舟歌
♪ ポロネーズ第6番『英雄』
~ ~ ~ 休憩 ~ ~ ~
♪ 3つのマズルカ 作品56/マズルカ第49番 ヘ短調 作品68-4
♪ 幻想曲
♪幻想ポロネーズ(ポロネーズ 第7番)
ピアノは艶消しスタンウェイ
調律師は佐々木修嗣さん
会場の照明が暗くなり
オフホワイトの壁に囲まれた舞台のピアノが静かに浮かび上がりました。
登場した牛田くんがピアノの前に座った瞬間から
空気が変わるのを感じました。
集中し、左手を鍵盤の上に構えるその様子は
「気」を操る武術のようにも見えました。
バラード8番。
左手が低音を紡ぎ出した瞬間
ギッシリしと充満した客席の空気が浄化され
お客さん一人ひとりが持ち込んできたそれぞれの「色」が
透明度を伴って一色に統一されたように感じました。
あたたかな音色は、例えると何色だろう?
懐かしさを伴ったオレンジ色…?
柔らかな薔薇のつぼみのようなノクターンの
最後の一音まで 大切に 大切に 演奏されました。
立ち上がってお辞儀をすると、一度袖の中に入って行きましたが
戻ってくるまでに、割と長い時間があって
舞台の上の艶消しスタンウェイは
聴衆と共に、うっとりと余韻に浸っているようでした。
バラード4番。
昨年までのリサイタルでは、舟歌とセットで後半に演奏された曲が
今回は前半に演奏されます。
息を詰めて獲物を狙うハンターのように
今度は右手をそっと構えて始まりました。
ペダルによって混ざり合う音色は
水に落とした赤や青のインクが
ゆっくりと広がって別の色に変化していく様に似ていました。
私は最初の頃
この大曲をどう解釈して良いのか分からず
毎回翻弄されて
嘆きと狂気の入り交じったようなとっつきにくい曲だと感じてきました。
けれど今日の演奏は
ぐるぐると続く人生の螺旋階段を駆け下りていくイメージと共に
寄り添ってくれるような優しさや柔らかさを感じました。
弾き終わると、鍵盤から手を下ろさずに、そのまま続けて始まった舟歌。
ずーんと深く響く低音は心地よく、
たっぷりとためて静かに海に漕ぎ出します。
だだ、もう波に漂う船に身を任せて聴きました。
すべてをおおらかに抱きとめてくれる大海原のような懐の深さと
聖母のような慈悲深さ。
弾き終わって、タオルで目元を拭う牛田くん。
横顔だったのでハッキリ分かりませんでしたが、
もしかして、また演奏しながら涙をこぼしてた…?
演奏が終わっても
この世界観を壊したくないというかのように
拍手は起こらず
客席は静まりかえったままでした。
前半ラストの英雄ポロネーズ。
より音の粒が揃い、磨きがかかっていました。
元々私は牛田くんの弾くこの曲が大好きですが
12歳の頃から弾き続けているこの曲を
彼が決しておろそかにせず
愛馬にブラシをかけるように
道具を磨き上げるように
大切に大切に扱うことによって
聴くたびに輝きを増していることが、とても嬉しいです。
中間部に、今までは気付いたことのない
媚薬の粉を振りまくような艶めいたメロディが隠れていたり
雄々しさと気品の中に、母のような深さを感じる瞬間があったりして
ああ、やっぱり大好き!
勇ましくて、力強くて
でも、「猛々しい」のとはちょっと違う。
華美でなく、信頼に足る英雄のポロネーズ。
最高です!
ブラボー!って叫べたら、どんなにいいだろうと思いました。
休憩時間には、佐々木さんが調律されていました。
舞台に近付いて、その様子を見たり
ピアノの写真を撮る人の姿がたくさんありました。
土曜日だからか、小学生くらいのお子さんも多かったです。
後半に登場した牛田くんの表情は、さっきより柔らかくなっていました。
聴き慣れた3つのマズルカは
かじかんでいた心がほぐれていくようでした。
午後の木漏れ日
豊作を祝って踊る農民のダンス
夜の森
いつもこんなイメージを抱きます。
そして、今日初めて聴くマズルカ遺作。
思っていたよりかなりゆっくりめのテンポでした。
消えかかっている命の灯火。
止まらない咳。
生への執着と絶望。
ショパンの直筆譜を見ても
そこから感じられるのは「苦痛」とか「嘆き」とか
色を失いかけた世界だったはずなのに
牛田くんの演奏は
優しくて
柔らかくて
ふくよかで
かなしくて
人生の旅を終えたショパンをそっとねぎらうようで
乾いて固まった土や草に
そっと水をかけて、本来の色を取り戻させているようで
衝撃的でした。
寂しく儚く39歳で人生の幕を閉じてしまったショパンに
「あなたの人生はあたたかく豊かでしたよ。」
とでも言うように
加筆することも、何かを損なうこともなく
モノクロになった過去の色を蘇らせるかのような演奏に
牛田くんのショパンに対するリスペクトと深い愛を感じました。
この地味な(すみません)曲が今回のリサイタルのテーマの1つって
シブすぎる…とか思っていたのですが
この演奏を聴いて、目から鱗でした。
いや、「目から鱗」なんていう軽々しいものではなく
「虚を突かれた」というべきなのか…。
気付いたら知らないうちに涙が頬を伝っていて
マスクの下に入り込んでしまって顔がかゆかった…。
幻想曲は、艶消しの黒いピアノと鍵盤のあたりから
いろんな色が滲み出ているような錯覚を覚えました。
夢見るような音色なのに、
くっきりと際だった音…。
40年前からホールにあるという、このピアノから
こんな音色を引き出す牛田くんって…。
ショパンがいたずらしてあちこちに隠した宝物を
1つ1つ見つけ出すように
全体を通して、あちらこちらに
今まで気付いたことのない、可愛い音が隠れていたことに気がつきました。
ラストの幻想ポロネーズときたらもう!
言葉になりません。
ただ、感じたのは
ショパンコンクールが終わっても
牛田くんは命がけでショパンと対峙し続けてきた、ということ。
ああ、もう、なんて人なの?あなたって人は…。
デビュー10周年だからといって
浮ついているわけでなく
本当に真剣にショパンの人生の最期と向き合ってきたことが痛いほど分かりました。
死期を悟っていた晩年の作品でありながら、
何度も何度もファンファーレを思わせる音が登場するのが不思議な気がしました。
これは、ショパンが「生きたかった」と願う渇望?
それとも、天国とか、来世とか、自分がこれから向かう世界への希望?
とにかく、こんなに死生観について身を浸すほどに考えさせられた
というか、実感させられた演奏会は初めてでした。
多くの人が4年後の牛田くんのショパンコンクールへの再挑戦を期待していますが
ここまで突き詰めたのなら、
もう牛田くんの中では、ショパンはこれで完了ではないだろうか
なんて、勝手に思ったりしました。
こんな演奏を聴いたら
ショパンコンクールは全く別の次元で
取るに足らないもののようにさえ感じました。
マイクを持って、トークもしてくれました。
海老名には初めて来たけれども、同じ沿線の「新百合ヶ丘」には12月まで通っていた昭和音楽大学があり、先輩の地元でもあるのでなじみがある。
今日のプログラムは、昨年11月に決めたものだけれど、奇しくもロシアがポーランドを侵略した時期の作品が重なり、この時期に演奏するのに葛藤があった。
けれど、明日を生きる希望という意味を込めて演奏したい。
この3月でデビュー10周年を迎えるけれど、10年前自分がデビューすることとなったきっかけは、東日本大震災で世の中が打ちひしがれていた時、希望のような存在になれば、という意味があった。
アンコールで演奏する『葬送』は、dとbを繰り返し、それは生死を彷徨う「deth」と「birth」という意味合いもある…。
細かな表現は違うかもしれませんが、だいたいこんな感じだったと思います。
アンコール、4曲も弾いてくれました![]()
♪ ショパン:ピアノソナタ第2番 第3楽章『葬送』
♪ リスト:愛の夢
♪ リスト/シューマン:『献呈』
♪ シューマントロイメライ
『葬送』では、死を強く感じるほどに、生の光がくっきりと浮かび上がりました。
久しぶりに聴いた愛の夢と献呈は、音色がすっかり大人になっていて
当時の「愛がよく分からないけれど一生懸命イメージして弾いた」
という演奏から
他者の痛みに心を寄せるような深い演奏になってました。
ああ…
(T^T)゚。
この10年の牛田くんの軌跡に想いを馳せ
まだ10周年の記念日は先なのに
私はもう勝手に母みたいな気持ちになっちゃって、泣けて泣けてしかたありませんでした。
しまいには泣きすぎて頭が痛くなり、重くなった瞼が熱を持ってジンジンしました。
今からこんなんで、オペラシティやサントリーホールで、どうなっちゃうんでしょう?私…![]()
トロイメライには、今東ヨーロッパで傷ついている人達への想い
平和への願いがこめられていて
会場が一体になって、祈りを捧げているような気持ちになりました。
海老名文化会館Twitterより
えびかんクラシカルコンサート「#牛田智大 ピアノリサイタル」ご来場ありがとうございました。先ほど無事終演いたしました。渾身のショパン、感動的でしたね!牛田さん、ご出演本当にありがとうございました。あ〜音楽って素晴らしい!公演リポートはまた明日〜。 #海老名市文化会館 pic.twitter.com/pmnJKETmFl
— 海老名市文化会館 (@ebican2) March 5, 2022
夜は、インスタライブもやってくれました。
個人的には、このくらいの時間(夜10時から15分間)だと、とてもありがたいです。
猫ちゃん2匹をお風呂に入れて、ちょっとお疲れの牛田くん。
ほっぺのポツンは、髭剃ってて切っちゃったんだって(≧▽≦)
そして、新しいニュース。
牛田くんが、あのキムタクの長女、ここみちゃんとコラボ!
本日10時より、14日のオペラシティ、15日のサントリーホールの関係者席を追加販売!
今日は14時から、さいたま市プラザノースにてリサイタルです!












