無事に行ってくることが出来ました。
2021年9月9日(木)11時15分開演
牛田智大 ピアノ・リサイタル
第一生命ホール(東京都)
私が彼のリサイタルレポを書くのは、約5ケ月ぶりになります。
嬉しい~っ!![]()
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実は前日体調が絶不調。
仕事から帰ると夕飯すら作ることが出来ず横になってました(T T)
でも、睡眠のチカラは素晴らしい!
朝になったらかなりマシになってました。
この日は朝からしっかりと雨。
会場の第一生命ホールがあるのは大江戸線 勝どき。
埋立地でもあるこの土地は、四角い形をしています。
動く歩道で会場に向かうと、すぐ横に流れる隅田川。
で、さっき朝ドラ見てて気が付きましたけど
ここ、『おかえりモネ』のロケ地にもなってますね。
(後ろに見えるのが勝鬨(かちどき)橋)
小学生並みに奥手な二人。やっとここまでこぎ着けてよかったわ。
晴海トリトンスクエアのビルの中にあるホール。
『トリトン』といえば、ギリシャ神話に登場する人魚のような姿の海の神。
過去には手塚治虫さんの作品にも。
『トリトン』と聞いた時から、私の中で広がるイメージはマリンブルー。
マリンブルーのお茶を飲みながら書くことに致します(*^.^*)
767席。明るい木の色調が若々しく洗練された印象です。
曲線を描いたブルーのシートが並ぶ様は、まるで人魚の鱗。イメージ通り。
プログラム
prgram
フレデリック・ショパン
♪ 3つのマズルカ Op.56
・第33番
・第34番
・第35番
♪ 24の前奏曲 Op.28
・第1番~24番
♪ 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
プログラムと一緒に配られた「トリトンアーツ通信」にも、牛田くんのインタビュー記事が載ってました。
今日のリサイタルは休憩無しの60分。
開演の15分前から、ナビゲーターの山野雄大さんによるプレトークがありました。
黒いシャツをお召しになって登場した雄大さん、この絵にそっくりでした。
当初は昨年5月に予定されていたけれど、コロナの影響で一度は中止になったこのリサイタル。
なぜ今日牛田くんをお招きしたのかを説明して下さいました。
音楽ライターの雄大さん。音楽誌『レコード芸術』に執筆されていますが
牛田くんのCDの『24の前奏曲』を聴いて、ショパンに対する想いや音楽との格闘の瑞々しい表現にびっくりしたそう。
実際にインタビューで牛田くんと会ってみたらすごくいい人だった。
丁寧で正直で誠実で、その人柄は演奏に通じるものがあり
ずっとこのコンサートに呼びたかったとのこと。
約4000文字のwebのインタビューでも誠実に語ってくれた、とおっしゃってました。
↓ぜひお読み頂きたい深い内容のインタビュー記事。
このコンサートでは演奏家に対してリクエストをすることはあまりなく
演奏家の今やりたいことをやってもらっているとのこと。
今日のプログラムは、ショパンの独創性をうまく組み合わせていて一貫した考え抜かれたプログラム。
曲と曲のつながりを考えて聴いていただきたい。
ピアノが語るように、歌うように、詩を読むように奏でられる彼のショパン。
日進月歩の演奏は、この演奏会の1時間の中でも進化していくかもしれません。
若いピアニストが格闘しきった姿を見て下さい。
という感じの内容のお話でした。
舞台の上のピアノはスタンウェイ。
(調律は佐々木修嗣さん)
照明が絞られ、登場した牛田くんは、黒い蝶ネクタイ姿。
手には黒っぽいタオルを持ってます。
8月の朝日カルチャーセンターの時も髪の色が茶色っぽいな、と感じたけれど
光の加減でしょうか?さらに茶色く見えました。
前髪はナチュラルに斜めに流れ、短い襟足も、耳の見えるサイドの髪も、清潔感に溢れています。
お辞儀をするとマイクを持って話してくれました。
…すみません。
牛田くんの解説を再現してみようとしばし格闘してみたのですが
単語やエッセンスは覚えているものの、正確に再現できる自信がなく…![]()
m(_ _)m
トークの最後に
このホールで前回演奏したのは11年前、小学生の頃だったこと、
ショパンの人間らしい心のうちを表現している曲を、彼と会話をしている感覚で聴いていただきたい、と話されました。
マイクを置くと、ピアノの前に座ってそっと両手を鍵盤に置きました。
3つのマズルカ。
例えようのないほど柔らかでせつなげな音色でした。
指が鍵盤を離れても、音の色は束の間空気中に漂い
水に落としたインクのようにゆっくり溶けていく。
残り香のように耳に残る音色…。
土着的な2曲目は仄暗い郷愁と同時に、豊かさや故郷の肥沃な大地を感じさせます。
ああ、マズルカって秋…。
ショパンが一番似合う季節は秋じゃないかしら。
しんとした夜の森。
漆黒の闇が、どこまでも深く濃く広がるような3曲目。
嘆き。寂寥。孤独…。
寂しさを味わい尽くしているうちに、やがて孤独が昇華されていく気がします。
なんて極上のマズルカだろう。
こんなふうに自分の想いを表現してもらったら、きっとショパンも嬉しいだろうなあ。
そのまま続けて24の演奏曲。
雄大さんは、「24枚の扉が開いていく」とおっしゃっていました。
牛田くんが「ためらいなく繰り返されるモチーフは時間を表現している」と言っていたからでしょうか。
いつもは川の流れのように感じていた一連の曲を、時間が形になって流れていくように感じました。
“時”を音にしたら、きっとこんな感じなんだろうなあ、と。
前回牛田くんの生演奏で『24の前奏曲』を聴いたのはいつだろう。
一曲一曲が本当に磨き抜かれていて衝撃を受けました。
春風のように始まった1番。
風に翻る布のような3番。
ときに立ち止まって途方に暮れ(4番)
歩調を速めて(5番)
嘆きと諦め(6番)
第6番のあとのしばらくの間。
そのあとの第7番がとても柔らかく印象的でした。
胃腸薬のCMでも同じみのこの短い耳なじみのある曲を、こんなにも優しく丁寧に聴かせてくれるなんて…。
疾走。濁流。変わりゆく時の中で抱き続ける孤独(8番)
大地を揺るがすように轟く低音(9番)
軽やかな妖精の羽ばたき(10番)
心に強く残った12番。
直情的で、ドラマチックで、慟哭して堕ちていく。
どこか民族舞踏のような雰囲気も。
少しの間の後の13番は、聖母の抱擁のようでもあり、熱い愛の告白のようでもありました。
14番は土の中で蠢く虫の集合体。
15番の雨だれは、スローモーションで 雨粒の球体が見えるよう。
一音一音を丁寧に大切に扱う牛田くんの演奏は、
雨粒ひとつひとつを慈しみ、それぞれに人生や物語があるんだよ、と教えてくれているみたい。
無数だけれど唯一無二の雨のしずくは、人間そのものでもあると思いました。
力みがないのに芯がある優しい音色は、まさに『癒やし』。
サラサラの黒髪と黒目がちの瞳がトレードマークだった少年ピアニスト。
牛田くんには黒い髪の方が似合うと思っていたけれど
シャープな鼻梁と顎のラインを持つ横顔に
艶やかな茶色の髪はとてもよく似合い
まるでヨーロッパの青年のようでした。
成長し、洗練されたのは見た目だけでなく
身も心も捧げてショパンと向き合ってきたことがよく分かる牛田くんのピアノ。
誰よりも牛田くん自身が、ショパンとの会話を続けてきたのでしょうね。
牛田くん。もう準備は出来ているんだね。
圧倒的だった16番。
激しくドラマチックな中にも気品を感じます。
光の中を漂う1枚の白い羽毛のような優しげな17番。
厚い雲間から射す救済の光。
響く低音は優雅に時を知らせる振り子時計の音のよう。
ステンドグラスの光の下でひざまずき、神に祈りを捧げるような20番。
光のプリズム。プチプチと跳ねる丸い光の精(23番)
24番は濃い墨汁で書いたくっきりとした楷書体。
絶望の叫びと嘆き。
ひと思いに振り下ろされる凶器のような低音のフォルティッシモ!
とどめを刺され、目の前が真っ暗になりかけたところに
間髪入れずに始まった舟歌。
完璧でした!
もう、表現する言葉が見つかりません。
小舟が漂う水面の煌めきが見えるよう。
柔らかく美しく幻想的な中に垣間見える強い憧れと切なさ。諦念のような感情。
そうか、これはただの美しさや心地よさだけではなく、ショパンの悟りのようなものが含まれていたのか…。
前奏曲のような直情ではなく、一歩離れてショパンが思い描いた夢の世界。
最後の最後、少し濁った音色をそのまま残しているのは、叶うことのなかった絶望の余韻…?
か、感動した~っ!!!
(T T)(T T)(T T)
ああ、「ブラボー!」って叫べたら!
いつもいつも聴くたびに、前回を超えてると思うのに。
思わずコロナに感謝してしまいました。
延期になった1年間。
牛田くんがここまで辿り着いた状態で、コンクールに臨めることに。
素晴らしいーっ!
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立ち上がってお辞儀をし、ニッコリ微笑む牛田くんは
見知らぬヨーロッパの青年から、いつものよく知ってる牛田くんに戻ったようでなんかホッとしました。
もう、弾いてる間はショパンだったんじゃないの?って思うくらい。
英ポロやバラード、幻想曲やピアノソナタ。パンチの効いた大曲が並んだいつものリサイタルもいいけれど
こんなふうに作品一つ一つにじっくり入り込める、今日のプログラムもすごくいいわ-![]()
ショパンの人間らしい心のうち…。
今日のプログラムは
・郷愁
・日常における様々な感情
・戻らない眩しかった日々
といった感じでしょうか。
それにしても、このプログラムを一気にこれほどのクオリティで演奏するなんて信じられない。
牛田くん、素晴らしい!
(T T)(T T)(T T)
アンコールも当然ショパンかと思いきや、シューマンのトロイメライでした。
ああ、久しぶりに聴く牛田くんのトロイメライ。
懐かしさと、なんとも言えない安堵に似た感覚で体も心もほぐれていく…。
全面的に受け入れてくれるような柔らかくあたたかな音色は
今度はまっすぐに上へ上へとのぼっていきます。
ああ…。
なんという幸せな時間…。
牛田くん、ありがとう!
(トリトン・アーツ・ネットワークTwitterより)
ホワイエには、秋を感じる素敵なディスプレイが。
終演後の彼のツイートにため息が出ました。
『日常の小さな心の移ろいを書き留めたかのようなノスタルジックな小品』
『静かに灯る蝋燭のような音』
豊かな感性と表現力。
つくづく彼は詩人です。
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コンサート情報です。
2022年2月12日(土)15時開演
群馬交響楽団
指揮:太田弦
ピアノ協奏曲第2番
美喜仁桐生文化会館(群馬県)
『美喜仁』を『ビキニ』と読むって👙、なんか衝撃的だわ(///∇//)
(^-^)ノ~~

























