みなさまこんにちは。

 

行ってまいりました。

 

 

2019年10月24日(木)19:00~

第10回浜松国際ピアノコンクール入賞者コンサート

ヤマハホール(銀座)

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このヤマハ銀座本店のイベントスペースには何度か足を運んだことはありますが、ホールは初めて。

 

 

 

なんてモダンで素敵なホール!

 

1階250席、2階83席、計333席のこぢんまりとした空間。

 

 

 

デザインがビルの外観と統一されてるところも素敵!

 

 

銀座の夜に 金色の魚の鱗のようなビルは一際映えています。

 

 

ホールまではエレベーターで移動したのですが、

 

コンサート用の大きなピアノまで運ぶからでしょう。

 

とっても広いエレベーターでした。

 

 

 

 

この日のプログラム

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<今田篤>

♪S.ラフマニノフ:前奏曲、ガヴォット、ジーク

 (J.S.バッハの「ヴァイオリン・パルティータ」ホ長調から)

♪L.v.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 Op.111 ハ短調

 

<イ・ヒョク>

♪L.v.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 ヘ短調 Op.57

♪N.カプースチン:ピアノ・ソナタ第2番 Op.54

 

<牛田智大>

♪P.l.チャイコフスキー:「6つの小品」Op.19より 第4曲「ノクターン」

♪P.l.チャイコフスキー:「くるみ割り人形」より「冬の樅の森」(プレトニョフ編)

♪F.リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調

 

 

 

牛田くん1人のリサイタルではなく、約1年前、コンクールで切磋琢磨した仲間達との演奏会。

 

5月の入賞者ガラコンサートでは、牛田くんだけ海外に行っていて不在だったので

 

今回のこの共演、とてもとても楽しみでした。

 

 

 

舞台に置かれた艶やかな長いピアノはおそらくYAMAHA最高峰のCFX。

 

 

 

 

登場しました、今田さん。

 

 

椅子の前に立ち、しっかり客席に目を向けて挨拶する姿は

 

どこか武骨で好感が持てました。

 

椅子に座るとハンカチで鍵盤をサッと一拭き。

 

 

ラフマニノフの前奏曲。

 

ああ、なんて美しい音色!

 

縦長の舞台に置かれた漆黒のピアノから

 

音がまっすぐに 上へ上へと立ちのぼっていく感じ。

 

さすがYAMAHA。音響を計算しつくしているのね!

 

 

「誠実」という言葉がピッタリの今田さんは

 

演奏姿もどこかしら公務員っぽい風情。

 

その音色には重力があり、鍵盤の深いところまで沈み込むような感じ。

 

前から今田さんは ショパンやモーツァルトよりも

 

ずっしりとしたベートーヴェンやバッハが似合うと思っていたので

 

今日の選曲はまさに!という感じでした。

 

後半のメロディ。ああ、これね!聴いたことがある。

 

なんだか嬉しくなる私。

 

 

私、今まで今田さんの演奏を3回聴いたことがあります。

 

自慢ではありませんが、その3回とも聴きながら寝てしまいました(;^ω^)

 

毎回毎回 なぜにこんなに私を眠らせる…?

 

と思っていたのですが、

 

今田さんの音色が とっても心地よいことに気付きました。

 

なんだか安心するんです。

 

 

ベートーヴェン ソナタ。

 

穏やかな安らぎに包まれて 目をつぶって聴きました。

 

 

第2楽章。

 

…ん?ベートーヴェンなのになんかジャズっぽい?

 

スウィングしてる?

 

ゆらゆらと音の揺らぎに身を任せ、ああ今回も夢の世界に誘われそう…。

 

いや、今日こそは寝ないわよ、私!メラメラ

 

 

第3楽章。

 

川の底から水面に向かって上がっていく空気の泡を見ているような不思議な感覚。

 

小学校の頃、国語の教科書に載っていた宮沢賢治の詩を突然思い出しました。

 

 

『クラムボンはわらったよ』

『クラムボンはかぷかぷわらったよ』

『クラムボンははねてわらったよ』

『クラムボンはかぷかぷわらったよ』

 

 

なんだか心がとても落ち着いてくる…。

 

 

演奏が終わってお辞儀をする今田さん。

 

ずっと自分のスタイルで演奏を続けて欲しいなあ、と思いました。

 

 

 

 

 

スタッフの男性がやってきて、メジャーで鍵盤と椅子の距離を測りました。

 

そっかあ。1人のリサイタルじゃないこのコンサート。

 

演奏者によってそれぞれの決まりがあるのですね。

 

 

 

 

二番手のヒョクくん登場。

 

椅子の前に立ち、片手をピアノの角に置き、

 

歯を見せてニッコリ笑ってご挨拶。

 

 

か…可愛い~っ!(≧∇≦)

 

 

この時点で、彼は既に聴衆を虜にしました。

 

 

ハンカチで手のひらと鍵盤を拭いて

 

鍵盤の上にそっと手を置く構えからして

 

柔らかで優雅でエレガント。

 

 

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ。

 

え…?これさっきと同じピアノ…?

 

コロコロと転がるような音色。

 

まろやかで角がない。

 

ずっしりと重力を感じた今田さんの音色と対照的に

 

まるで重力を感じない 羽毛のように軽やかな音。

 

なんて華やか!

 

なんて天使的!

 

 

微笑みながら楽しそうに演奏している姿を見ていると

 

聴いているこちらも とっても幸せになってくる。

 

 

突如、私の頭の中に

 

『国民の弟』

 

という、素晴らしいキャッチフレーズが浮かびました。

(彼は韓流ボーイだけどね (;^ω^) )

 

 

その天真爛漫な音色は、ラン・ランの演奏を彷彿とさせるけれど

 

ラン・ランほどには線が太くなくて

 

十代らしい軽やかさに溢れています。

 

 

ベートーヴェンなのに重くない。

 

自分のカラーに聴衆も作曲家さえも巻き込んでしまうような

 

ヒョクくんのスター性。

 

ソンジンさんといい、彼といい

 

韓国はなんというお宝を抱えているのでしょう宝石ブルー

 

 

 

2曲目のカプースチン。

 

おおっ!これはジャズではないか!

 

そうだ。牛田くんも14歳の時に演奏したカプースチンの『トッカティーナ』。

 

ジャズテイストがかっこよかったなー。

 

 

なんて楽しいの?!なんてワクワクするの?!キラキラ

 

ピアノ・ソナタということは、第3楽章まで堪能できるのねラブラブ

 

もう、この曲に 一目惚れならぬ一聴き惚れラブ

 

 

今はとにかく天使的だけど、

 

年を重ねていった彼の演奏も聴いてみたいなあ。

 

 

ヒョクくんの選曲も これまた彼の個性にぴったりです。

 

ああ、心地よい。目をつぶると素敵なレストランにいるみたい。

 

「ちょっと、ボーイさん。白ワイン白ワインお願いね~。」

 

ナンツッテー!(≧∇≦)

 

 

それにしても、リズムもメロディも覚えるのが難しそうなこの曲を

 

よくもこんなに軽々と演奏するものだわー。

 

 

 

第3楽章は超絶技巧。

 

神業のように速い指の動き。

 

あまりにも速すぎて、手が何重にもブレて見えるのに

 

それを本人は柔らかく、いとも簡単にやってのける(ように見える)。

 

 

ソフトで可愛いらしい見た目とキラキラでキレキレの音の洪水。

 

目と耳からの情報が一致しなくて軽くパニック!

 

 

フィニッシュのポーズもエレガントでどこまでも天使的。

 

 

ヤバイ。持ってかれた…。

 

 

聴衆が大きく手を上げて惜しみない拍手を贈ります。

 

立ち上がり、やはりピアノの角に片手を当てて

 

歯を見せてニッコリ笑うヒョクくん。

 

ああ、こんな弟がいたらいいなあ。。。ラブ

(年齢的には息子だけどな!)

  

モー大満足!私もう帰ってもいいカモ (≧∇≦)(ダメだろむかっ

 

 

 

 

休憩のときにスタッフさんに確認してみました。

 

「今日のピアノはCFXですか?」

 

やはりそうでした。

 

「本当に素敵な音色ですね。」

 

と伝えると、スタッフの男性の顔に、ぱあーっと花が咲くような笑顔が広がりました。

 

ああ、この人たちは、

 

音楽を愛して ピアノを愛して

 

自分の仕事に誇りを持っているんだなあ。

 

なんだか嬉しくなりました。

 

 

 

 

さて、とうとう20歳になった牛田くんの登場です。

 

 

この日の牛田くんも、黒タートルに黒スーツという黒牛田スタイル。

 

 

前出のお二人とは違い、椅子の後ろに立ってご挨拶。

 

黒い衣装とのコントラストで 

 

胸に当てた美しい手の白さと大きさが一層際立って見えました。

 

あれ?2週間前 新潟で見た時は、まだ横顔に幼さが残っていたのに

 

なんだか急に大人びたみたい。

 

サイドの髪が滑らかに後ろに流れ、いつも以上に王子っぽい。

 

 

が、しかし、

 

 

椅子に座って構えた瞬間

 

彼は自分の色にすべてを塗り替えました。

 

 

ノクターン。

 

ああ、なんて深い音色。

 

深くて、哀しい…。

 

鍵盤の芯をまっすぐに捉えて、CFXから引き出す純度の高い透明な音。

 

音の波はホールの上に舞い上がり

 

しんしんと降り積もる雪のように

 

聴く者の胸に着地して静かに横たわります。

 

その音色を聴きながら

 

なぜだか牛田くんが何かに傷ついているように感じました。

 

 

最後の一音が生まれてから消えるまでを

 

そっとそっと見守るように ノクターンが終わりました。

 

 

立ち上がることも 顔を上げることもなく

 

拍手をする隙も与えることなく

 

弾き始めた「冬の樅の森」。

 

ずっと聴きたかった大好きな曲です。

 

 

音の広がりがすごかったです。

 

そして、とっても情熱的でした。

 

雪景色の曲のはずなのに

 

根雪を溶かす温泉のよう。

 

凍てついた体と心が ゆっくりと体温を取り戻して

 

絶対的な大きな何かに抱かれているみたい。

 

 

 

またしても拍手をする隙を与えず

 

そのままリストのピアノ・ソナタ ロ短調へ。

 

 

弾き始めて2小節目のあたりから

 

息遣いという言葉では形容できない

 

「んーーー!」

 

という地鳴りのような力み声とともに

 

ピアノの角に前髪が触れるほど前かがみになった牛田くんの顔が真っ赤に紅潮して

 

小刻みにブルブルと震えました。

 

 

「渾身の」「全身全霊」

 

そんな言葉では とても追いつかないくらい

 

その凄まじい迫力に圧倒されました。

 

 

牛田くんの演奏でこの曲を聴くのは、約1年前の浜コンの時以来。

 

まるで同じ曲とは思えないほどダイナミックで力強くて

 

そう。牛田くんがかつて楽しそうにレクチャーしてくれた

 

どこかに隠れている登場人物のフレーズも

 

すべて忘れてしまうほどに圧倒的でした。

 

 

かつて見たことのない強い打鍵は

 

批判を恐れずに言うのなら 暴力的にさえ感じられました。

 

情熱というよりは、行き場のないエネルギーをぶつけているように感じました。

(あくまでも素人の私の印象です)

 

フォルティッシモなんてもんじゃない。

 

フォルティッシッシッシッシッシモ!

 

 

最初のフレーズと同じところで

 

ふたたび呻くように唸り声をあげ

 

真っ赤になって小刻みに震える牛田くん。

 

 

どうしよう。牛田くんが血管切れて脳溢血でも起こしたら(T_T)

 

成人になった途端に成人病になっちゃったら(T_T)(T_T)

 

どうしよう。牛田くんがCFX叩き壊しちゃったら(T_T)

 

ピアノが保険に入ってなくて高い修理代請求されたら(T_T)(T_T)

 

どうしよう。牛田くんの指が骨折したら(T_T)

 

美しい白い指が傷ついてしまったら(T_T)(T_T)

 

 

トモハルーっ!

いらん心配させるなやーっ!

えーんえーんえーんえーんえーん

 

 

 

 

それはもう、魂の演奏でした。

 

技術的なことは私には分かりません。

 

理屈抜きに直球ストレートで魂に訴えてくる

 

炎が燃えうつって魂を焦がすような

 

熱くてスケールの大きな演奏でした。

 

 

浜コンの時、コンテスタントが次々とこの曲を演奏したことについて

 

批判的なコメントを寄せていた偉い先生がいたけれど

 

今の彼のこの演奏を聴かせたい!

 

文句あるか!もう何も言わせない!

 

 

息が出来ない。 瞬きできない。

 

金縛りにあったみたい。

 

身じろぎできない。

 

 

 

ヒョクくんの演奏でこの上ない一体感を感じた後の

 

牛田くんのこの演奏は

 

まるで 「支配されている」 そんな感覚でした。

 

 

ぽたりと落ちた汗のしずくが

 

牛田くんの涙のように見えました。

 

 

大きな嵐を目の当たりにしているみたい。

 

 

今日のこの演奏、絶対絶対忘れません。

 

多分これからも進化し続けていくリストのピアノ・ソナタ ロ短調。

 

こんな演奏は、あとにも先にも一度だけだと思います。

 

 

 

演奏が終わって 牛田くんが我に返ったように顔を上げ、立ち上がるまで

 

誰一人、動けませんでした。

 

 

彼が立ち上がり、夢から覚めたように我に返った聴衆から起きた割れるような拍手。

 

牛田くんは深々と頭を下げ、しばらくその体勢のままでした。

 

こんなに長いお辞儀は初めて見ました。

 

 

一度袖に消え、戻ってきた牛田くん。

 

まだ夢と現実の狭間にいるような不思議な空気感。

 

再び深く、長く、お辞儀をしました。

 

 

2回目のカーテンコールのあと、やっと彼の顔に浮かんだ笑顔。

 

彼は紛れもない芸術家だと思いました。

 

 

彼が袖に消え、重い扉が閉まってからも

 

しばらく拍手は続きました。

 

もう彼が姿を現さないと分かっていても

 

拍手を贈らずにはいられなかった。

 

聴衆の心はひとつだったと思います。

 

 

 

 

ああ、なんて特別な演奏会だったんだろう。

 

これで3千円ですよっ!

 

モー、2万円くらい出してもいいくらい笑い泣き

 

 

 

三者三様、個性が輝き、本当に素晴らしい演奏会でした。

 

 

もう、本当に最高!

 

 

クラシック界の未来は明るいです!キラキラ