とうとう今月3回目の、そして最後の牛田くんのチャイコンです。

 

2019年2月16日(土)14:00~

読売交響楽団第109回 みなとみらいホリデー名曲シリーズ

指揮:小林研一郎

ピアノ:牛田智大

横浜みなとみらいホール

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プログラムは一昨日のサントリーホールと同じ。

 

♪チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23

 

♪ブラームス:交響曲大2番 ニ長調 作品73

 

 

大好きな牛田くんのチャイコンを、今度いつ聴けるか分からないので、

 

今日は全身全霊で、体中の細胞で、体中の毛穴で、髪の毛一本一本で

 

演奏を受け止めよう、楽しもう、と心に決めてました。

 

一昨日の読響、コバケンさん、牛田くんという取り合わせでの奇跡のような化学反応を知っていましたので。

 

 

思いのほか我が家から遠かったみなとみらい。

 

車ではよく来るけれど、電車で来るのは牛田くんのコンサートの時くらい。

 

駅からホールまでの雰囲気が、なんだか近未来みたいで好きです。

 

 

会場に着くと、ものすごい人、人、人…。

 

 

P席、3階席もある素敵なホール。

(お写真お借りしました)

 

今日、舞台の中央に置かれているピアノはYAMAHAです。

 

 

オケの方達が舞台上の椅子を埋めつくすと、それだけでなんだか圧倒されるものがありました。

 

読響、かなりの大所帯です。

 

 

コンマスの長原幸太さんは、正面から見ると髪が短いのに

 

横から見ると襟足が長いという独特の髪型で

 

その愛嬌ある雰囲気からも なんだかカピパラを連想してしまいました。

 

 

 

 

木の扉が開き、登場しました、マエストロと牛田くん。

 

白い蝶ネクタイの燕尾服。手には水色のタオルを持っています。

 

挨拶をして椅子に座り、バサッと燕尾服の尻尾をはらうようにし(この仕草、好きです(≧∇≦) )、

 

珍しく赤いラインが2本入った椅子のつまみをぐるぐる回して高さを調節しました。

 

準備が整った瞬間に振り上げられたマエストロのタクト。

 

その、時間の無駄のなさと集中力に早くも圧倒されました。

 

 

高らかに奏でられるドラマチックなあのメロディ。

 

そして、牛田くんが三拍子の和音を紡ぎ出した瞬間、別世界にいざなわれました。

 

なんて優雅で気品に溢れた音色。

 

 

ああ、なんて美しいの?!

 

なんて幸せなの?!

 

 

極上の音楽に身を委ねながら、

 

 

ああ、どうか終わらないで。

 

ずっとずっと続いていて!

 

 

そんな幸福な寂しさをずっと感じていました。

 

 

ウクライナ民謡に基づいているという第1主題。

 

弦が奏で、ピアノが奏で、

 

大自然の命のバトンを渡すように。

 

絡み合い、溶け合い、さらにスケールを増していく群星のように。

 

大所帯のオケの音に埋もれることなく、

 

牛田くんのピアノはしっかりとその存在感を放ち、

 

今まで聴いたどのチャイコンよりも男らしく情熱的でした。

 

 

既に第1楽章で、何度か額や頬の汗をタオルで拭っていました。

 

 

カデンツァは雄大で、繊細で、

 

1音1音、隅々まで魂が宿り、

 

広大なロシアの土地。降り積もった雪。

 

春の訪れと、雪が溶けて水となった川の流れ。

(私が感じたイメージ)

 

 

やはり、浜コンの経験が大きな自信と糧になったのではないでしょうか。

 

牛田くんの演奏にはどっしりとしたゆるぎない風格を感じました。

 

 

やがてラストのクライマックス!

 

そう。愛しい待ち人を待っているみたいに、

 

来る…来る…。

 

ついに来たーーっ!!

 

 

楽章と楽章の間、マエストロは一度もピアノの方を見ませんでした。

 

ソリストに全幅の信頼を寄せているのが分かりました。

 

そのかわり、楽章の始めに必ず「よろしくお願いします。」というように、オケに向かって軽く頭を下げるんです。

 

大巨匠なのに、なんて謙虚な…。

 

 

弦のピチカートとフルートの独奏で始まる第2楽章は

 

やっぱり私にとっては真冬の星座。

 

そして真夜中の遊園地。

 

 

第2楽章から間髪入れずに第3楽章へ。

 

このとき、オケとソリスト、マエストロが、三位一体となって呼吸を合わせたのを感じました。

 

 

それにしても、頬を高揚させ、膝を曲げたり大きく伸びあがったりするコバケンさんの指揮のエネルギッシュなこと!

 

その表情の豊かなこと!

 

省エネ?というくらい、手以外をほとんど動かさないプレトニョフさんの指揮とは対照的です。

 

さすが炎のコバケン!

 

彼の情熱の炎が飛び火するように、オケも牛田くんの演奏も熱い熱い!

 

音楽への情熱の相乗効果ですね。

 

どうかいつまでもお元気で、ずっとこんな音楽を聴かせて欲しいと強く思いました。

 

 

ああ、そして、とうとう来てしまった、最後のクライマックス。

 

オケの演奏が盛り上がり、

 

 

来るぞ…来るぞ…

 

 

片手に10本ずつあるのではないかと思うような牛田くんの指が

 

鍵盤の上を駆けのぼり、駆け下りて

 

 

きゃーー!たまらん!

 

(≧∇≦)(≧∇≦)(≧∇≦)

 

 

 

最後の鍵盤を強く押してフィニッシュ!

 

 

ああ、やっぱり牛田くんのチャイコンは男前!(←しつこくてスミマセン)

 

 

立ち上がるとマエストロのところに駆け寄り、両手でガッチリと握手をして

 

お互いを称え合うように2人して頭を下げました。

 

そこには、一つの作品を共に創り上げた達成感と充実感、

 

互いへのリスペクトと音楽を愛する喜びが溢れているように見えました。

 

 

次いで、牛田くんは微笑みながら、コンマス、副コンマスに自ら手を伸ばし握手。

 

 

そして晴れやかな表情で客席の前方に、後方に視線を送り、

 

胸に手を当てて心のこもったご挨拶。

 

後ろを向いて、P席のお客さま達を見上げ、十分な間を取ってご挨拶。

 

牛田くんのこのステージマナーには、人間性が現れていると思います。

 

これは、訓練や経験値だけで簡単に身に付くものではなく、

 

彼の生まれ持っての品格と謙虚な人柄ゆえだと思います。

 

そして、この愛されるステージマナーと存在感は、演奏家にとって必要不可欠なものだと思います。

 

約35分の演奏を終えて、彼は2000人の聴衆を、あっという間に魅了しました。

 

 

2度目に舞台に登場した時、彼は微笑みながら、ひたすらオーケストラに向かって拍手を贈っていました。

 

聴衆の拍手は、そんな牛田くんの姿を見て、さらに熱く温かく鳴り続けました。

 

拍手を受けてピアノの前に座り、演奏に入るまでのその流れるような所作がまた美しく、

 

思わず見とれてしまいました。

 

 

彼がゆったりと紡ぎ出したのは『トロイメライ』。

 

かつての彼の演奏は、少年の純粋な「夢見心地」だったと思います。

 

でも、今日の演奏には、もっと懐の深い、父性のようなおおらかさを感じました。

 

彼はもう、少年時代と決別し、自分より小さき者、か弱き者に心を寄せている。

 

そんな風に感じる演奏でした。

 

 

 

第2部のブラームス交響曲も、見応え、聴き応えがありました。

 

特に第4楽章のラスト、オケが大きくうねるように盛り上がり、

 

マエストロが聴衆の方に向かって高々と片手を上げた瞬間、

 

ゾクゾクと鳥肌が立ちました。

 

 

 

 

そして、アンコールは今日も『ダニー・ボーイ』。

 

コバケンさんがこの曲を紹介してくれた時、

 

心の中で大きくガッツポーズでした。

 

 

家族への想い。

 

もう戻らない、古きよき時代への郷愁。

 

 

大きな大きな愛に包み込まれているようで、

 

なんだか懐かしくてせつなくて

 

今日も涙がこぼれました。

 

『ダニー・ボーイ』

 

 

 

 

 

 

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ありがとう、牛田くん。

 

ありがとう、コバケンさん。

 

ありがとう、読響さん。

 

ありがとう、今日といういとおしい時間。

 

 

今日、会場に集まった2000人の観客一人一人が

 

心に温かな灯りをともし、家路についたことでしょう。

 

そして、この灯りを胸に、明日からの日常を生きていくでしょう。

 

 

 

 

 

入口で配られていたチラシ。

 

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3月21日のみなとみらいでの牛田くんのピアノ・リサイタルです。

 

 

駆け抜けた10代 その集大成を聴く

 

 

牛田くん、すごい勢いでピアノと共に10代を駆け抜けてきたものね。

 

そんなあなたを今も、これからも応援できること、

 

どんどん成長して立派な演奏家になっていくあなたを見守ることができることを

 

あらためて嬉しく、幸せに思います。

 

 

 

ありがとう。

 

お疲れ様でした。