みなさま、こんにちは。
浜コン2次予選の審査結果、なかなか発表が始まらず随分じらされましたねー。
それだけ接戦で、審査が白熱していたのでしょうか?
私、ヤキモキはしたけど、ドキドキはしませんでした。
あの演奏を聴けば、2次審査通過になんの不安もありませんでしたから。
でも、小川審査委員長の口から「ナンバー、セブンティーナイン…」の言葉が出た時は、思わず「やったー!」と大声で叫んでしまいました。
パネルに新たにつけられた銀色のリボン
さて、牛田くんの第3次審査の演奏は10月19日の16時45分から。
この日は開演がいつもより遅く、12時30分からでした。
開場の30分前の12時に開場に着いたというのに、
ナニコレー!
平日だというのに、今までにない長蛇の列。
今まではずっとまっすぐにガラスの壁に沿っていた行列が、今日はぐるりと回って折り返しています。
2次、3次と進むにつれ、聴く側にも熱が入るのでしょうか。
今日は地元静岡出身の安並貴史さんの演奏があるからでしょうか。
いや、なんといっても、牛田智大さんの演奏がありますから。
開場は満席。
既に熱気でムンムンしています。
最初に演奏したのはロシアのアンドレイ・ゼーニンさん。
コンテスタントの持ち時間は70分。
最初にモーツァルトのピアノ四重奏がありました。
ここでコンテスタントは他者との息の合わせ方などを見られるのでしょうか。
さすが第3次まで進んできただけあり、呼吸の合わせ方が見事でした。
そのあとにソロで演奏されたときは、
・・・ごめんなさい。心地よくて、軽くお舟をこいでしまいました。
今までの審査と違うことは、演奏時間の中で、おじぎをして拍手をする時間があること、
演奏終了後にカーテンコールがあること、などでしょうか。
15分の休憩の後登場したのは日本の務川慧悟さん。
一次審査の時から、この方の演奏はとても美しく深みがあり、注目してきたコンテスタントの一人です。
やはり勝ち上がってきたか!という感じでした。
彼が演奏した四重奏は、第2番の方。
1番が短調なのに対し、2番は長調で明るく、可愛らしく、うわー、モーツァルトだ!と嬉しくなりました。
シャコンヌも、ラヴェルの「鏡」も秀逸で、牛田くんの強力なライバルだな、と思いました。
後ろの列に、熱心なクラシックファンの男性がいるらしく、隣り合わせたおば様方と話す声が聞こえてきます。
とても丁寧な敬語を使うその方の熱を帯びた話し声を聞くともなしに聞いていると、
本当にコンクールは楽しい。こんなに高レベルな演奏が聴けてとても幸せ。
牛田さんの演奏楽しみですねー。リストのソナタロ短調ですよ!ロ短調!
と、牛田くんの演奏をとても楽しみにしている様子。
ほかにもあちこちで、牛田くんの演奏が楽しみだ、とか、牛田くんの演奏は別格だ、等の話し声が聞こえて、嬉しくなりました。
この日は日本人男性のコンテスタントが3人いました。明日演奏する人も合わせると5人。
第3次に進んだのは全員男性。
すごいぞ、日本男児!
次に登場したのは地元の星、安並貴史さん。
この写真がロンドンブーツのあつしをキリっとさせた感じなので、私的には心の中でずっと「ロンブー」と呼んできました。
(参考写真)
安並さん、爽やかな好青年で表情も柔らかく、とても感じがよかったです。
彼の弾いたモーツァルトの四重奏第1番をあらためて聴いて、ああ、短調も魅力的だな、と思いました。
そのあとソロで演奏した曲は、シューベルトの即興曲Op90-1と、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番。
そしてE.ドホナーニという初めて聞く作曲家の曲を3曲。
ベートーヴェンは、牛田くんの演奏を思い出し、懐かしく辿るように聴きました。
ドホナーニの曲は、知らない曲が3曲続いたので、あれ?まだあるの?と正直ちょっと飽きてきました。
知る人ぞ知る、という感じのこれらの曲。ロンブー、こだわり屋さんなんでしょうかね?
休憩時間の照明が明るいうちに、次の奏者が何を演奏するのかプログラムを見てチェックするのですが、
なにせ、字が小っちゃくて、コンタクト入れてると老眼で見えない![]()
(裸眼なら見えます←意地)
パンフレット作ってる業者さんまたは編集の方!次はもっと大きな字でお願いします!
ロンブーの演奏が終わると、袖に一度入った彼が再び登場して挨拶しているというのに、かなり多くの方が立ち上がって帰り支度を始めました。
ちょっと、アンタたち!失礼じゃない!![]()
と思ったのですが、つまりは彼の演奏を聴くために来た地元の方達だったのでは?とあとで思いました。
さて、次はいよいよ牛田くんの演奏です。
牛田くんの演奏中にトイレに行きたくなって演奏に集中できなくなるといやなので、
トイレにダッシュしましたが、既に調ロングな行列。
いろんな意味で浜コンってすごいわ。
休憩時間が終わり、舞台のスクリーンに「79」の数字が映し出されました。
ピアノはヤマハ。
白く重厚な扉が開き、牛田くんの登場です。
あ、今日は黒牛田じゃない!
濃いグレーのスーツに紺色のネクタイ。手にはオフホワイトのハンドタオル。
弦楽器の方達を引き連れるように、微笑みながら颯爽と舞台に登場すると、
ピアノの椅子の後ろ側に立って、深々とお辞儀しました。
うわ、既に空気が違います。
さっきっまでのコンテスタント達は、弦楽器の方達にサポートされているような印象を受けたのですが、
まるで牛田くんがリードして弦楽器の人たちを気遣うように彼らに頷いて微笑みかけます。
椅子に座った牛田くんが「ラ」の音を出して軽く音合わせ。
傍目には分からないくらい自然に一斉に音楽が始まりました。
牛田くんが選んだのは短調のピアノ四重奏曲第1番。
光と闇があったなら、彼は闇を選んで演奏するのではないかと思います。
これからも人生の光の当たらない部分、悩みや葛藤、孤独など、負の部分を好んで演奏するピアニストになるのではないかと。
あくまでも私の勝手な思い込みです。
ピアノ四重奏曲第1番。
聴き慣れてくると、この短調の出だしが、なんともカッコいいのです。
そして、牛田くんの紡ぎ出す音色の美しいこと!
高音はほろほろと口の中で溶けていく赤ちゃんの大好きな卵ボーロのよう。
何度も弦楽器奏者達に視線をやり、自分だけが前面に出ようとすることはなく、
この曲は4人の柱で成り立っているんだと感じさせる。
そこには完全な調和がありました。
音と音が掛け合い、重なり合い、共鳴し合い、
畳みかけるように凛々しいメロディラインを駆け巡る。
第一楽章が終わり、真ん中のヴィオラの男性を見て、にっこりと2回頷きました。
こんな至近距離でこんな笑顔をされたら、私、トロトロに溶けて液状化現象を起こさない自信がありません。
長調に転調した第二楽章。
幸福過ぎて思わず漏れるため息のような音色。
ゆったりと、伸び伸びと、
野に咲く小さな花をそっと愛でるように。
舞踏会の始まりのような心躍る第三楽章。
ピアノの独奏から始まり、弦楽器の音色が重なります。
互いに語り掛け、おしゃべりを楽しみながら共に喜びの歌を歌い上げます。
牛田くんのピアノは、細やかに音のレースを編み上げながら弦楽器の音色を縁取ります。
ときには柱となって頼もしくリードしながら、次々と花のつぼみを開かせていくように。
牛田くんの表情に何度も微笑みが浮かびます。
音楽は楽しい。音楽は幸せ。
そんなことを教えてもらったようで、とっても幸せな気持ちになりました。
ピタッとスケールで測ったかのように息を合わせてフィニッシュ。
演奏が終わると、牛田くん微笑みながら立ち上がり、なんと、弦楽器奏者の方達に拍手を送りました。
そして、自ら手を差し出して、一人一人とガッチリ握手を交わしました。
今までのコンテスタント達は、弦楽器奏者達と横一列に並んで挨拶をして、
少し促されるようにして遠慮がちに最初に舞台袖に入って行ったんです。
牛田くんは胸に手を当て、深々とお辞儀をすると、微笑みながらやや大股で1人で舞台袖に消えて行きました。
場数を踏んでいるプロだからこその違いなのかもしれません。
このプロっぽさを、審査員の先生方はどう捉えるのかしら、と考えながら、
単に場数を踏んでいるからだけでない、彼のワールドワイドな器の大きさと、
どんな時でも他者を尊重する優しさを感じました。
十代でありながら コンテスタントでありながら
彼はもはや立派な一人の紳士です。
舞台が暗くなり、中央にピアノだけが残りました。
再び登場した牛田くん。
深々と長めのお辞儀をして、椅子に座り
落ち着いた様子で上着のボタンをはずします。
そして、何かが降りてくるのをそっと待つように、天を見上げてしばらく動きませんでした。
演奏前のこの仕草、彼が十代前半の頃によくリサイタルで見られましたが、
私はいつもこの瞬間がとても好きでした。
次に演奏するシューベルトの即興曲Op.90-3は、初めて中村紘子先生にレッスンしてもらったという曲。
今彼は初心に戻って、心の中で中村先生と会話してるんじゃないかな、と思いました。
やがて下を向き膝に手を当て、ゆっくりと鍵盤に手を置いて弾き始めました。
なんて、なんて優しい音色なんでしょう。
7年という月日を超えて、なんて豊潤でまろやかな音色に醗酵しているのでしょう。
それは 弱き者、小さき者を思いやり慈しむ愛に溢れ
眠る幼子にそっと毛布をかけるように
絶望し、涙する人にそっと寄り添うように
罪深い私達のすべてを包み込み、抱きしめてくれるようでした。
癒しの中に、中村先生への「感謝」や「尊敬」の音色が含まれているのを感じて
思わず涙が溢れました。
ピアノの音でありながら、楽器を超越した真心の音を聴いているようでした。
3曲目のリストのピアノ・ソナタロ短調。
やはりゆっくりと上を見上げ、膝に手を置き、そっとその手を鍵盤に移して始まりました。
数えきれないくらいある音の中から極上の逸品を取り出してきたように
その音色はとても純度が高く、意図が明確で
1音たりともおろそかにしない牛田くんの決意のようなものを感じました。
リサイタルで何度か聴いたこの曲。
それまで私にとってのリストのピアノ・ソナタロ短調は、
ついていくのに必死で、頭の中で一生懸命考えながら聴く曲でした。
この日も朝からアルゲリッチの演奏で聴いて頑張って馴染もうとした曲です。
それがどうでしょう。
豊かな彩りを持った演奏は、物語の中に私達を引きずり込み、
次々と展開していきます。
楽しくて、ワクワクして息をするのも、瞬きするのも忘れそうでした。
リサイタルで聴いた時よりもずいぶん明るくなった印象。
こんなに素敵な曲だった?
ピアノも、牛田くんも、ホール全体も、すべてがキラキラと金色に輝いて見えました。
これコンクールだっけ?
こんなにワクワクしていいのかしら?
リサイタルで牛田くんが説明してくれた「ファウスト」の登場人物たちのテーマのフレーズを聴くと
ワクワクを通り越してゾクゾクしました。
まるで神降臨!
今ここでこうして素晴らしい音楽を聴いていることに、言いようのない喜びを感じました。
暗く立ち込めた雲の間から光が差し込み、
キラキラと海の水面を輝かせている。
やがてまた不気味な余韻を残し、ゆっくり物語は終わりを告げる。
いや、「つづく…」という感じかな。
演奏が終わっても、その世界観を壊してしまうのが申し訳ない気がして、しばらくは拍手出来ませんでした。
さざ波のように遠慮がちに始まった拍手が、やがて割れるように大きな波となって会場を包みました。
やりきった、という表情で微笑む牛田くん。
後味のよくない曲のはずなのに、なぜ?こんなに後味がいいんでしょう。
もう、驚きと喜びと幸福感でどうにかなりそうでした。
牛田くんが袖に入っても拍手は鳴りやまず、誰一人席を立つ人はいませんでした。
だって、この素晴らしいコンテスタントを讃えるのに、もっともっと拍手を送りたかったんです。
もう一度舞台に姿を見せると、胸に手を当て、微笑みながら深々と頭を下げる牛田くん。
後ろの列から、しきりにすごい!と感嘆の声が上がっていました。
休憩時間に入ったので、我慢できずに後ろの列の男性に話しかけてしまいました。
「牛田さんの演奏、いかがでしたか?」
「もう、もう、神がかってましたよ。鬼気迫る演奏。初めて聴いたけどまた是非聴きたいです!僕もファンになっちゃいました!」
と、興奮冷めやらぬ様子。
彼の隣のおば様方も「初めて聴いたけど、もうダントツですね。」と。
ああ、ファンとして、どんなに誇らしかったか!
やったね!牛田くん。
この選曲、全体のプログラム、他に考えられないほど素晴らしいと思います。
ぴろ子先生も嬉しいだろうなあ♪
牛田くんの演奏の後、75分の休憩に入ったので、ファン智さん達とケーキを食べに行き、牛田くんの演奏のCDの受け取りと新たな発注をしました。
せっかくなのでもう1人だけ、聴くことにしました。
韓国のキム・ソンヒョンさん。
私は勝手に「佐良直美(さがら)直美」と呼んでおります(知ってる?)
(参考写真)
彼のトレードマークは、キノコ雲みたいな髪型と大きな体。
なんと、まだ16歳なんですよ。
なのに、彼の醸し出すオーラにも演奏にも自信が溢れてるんです。
片手をピアノに置き、屈伸するようなお辞儀も独特。
そして、一次審査の時から思ってましたが、特に高音部の音色がとっても綺麗。
堂々たる演奏で、四重奏のあとは、牛田くんと同じように、弦楽器奏者一人一人と握手をしてました。
シチェドリンという、これまた聞いたことのない作曲家の何とも不思議な曲を演奏して、
ショパンの24の前奏曲を演奏しましたが、こちらも見事でした。
佐良直美キムさんの演奏を聴きながら、私はさっきの牛田くんのピアノの余韻に浸ってました。
ごめんよ、直美。
私やっぱり、牛田くんのピアノが好き。
本当は最後のザン・シャオルーさんまで聴きたかったのですが、新幹線に乗れなくなると困るので諦めました。
さて、今夜はいよいよ審査結果の発表ですね。
当然牛田くんは本選まで駒を進めていくでしょう。
牛田くんの顔写真のパネルには、新たに金色のリボンが飾られることでしょう。
牛田くんが「12歳でデビューした少年ピアニスト」から脱皮して、
実力ある演奏家として認められつつあることが
とてもとても嬉しいです。













