それは、とてもお天気のいい日曜日でした。
東京の桜も、牛田くんが来るのを待ち構えていたかのように一斉に花開きました![]()
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2018年3月25日(日)15:00~
牛田智大 ピアノリサイタル
練馬文化センター
練馬には、学生時代に仲良くしていた友達が一人暮らしをしていたのでよく遊びに行きました。
今は大江戸線も通っていて、すっかり大きな駅になっていてびっくり。
会場の練馬文化ホールは、駅からすぐ。
建物には、こんな大きな垂れ幕が。
建物の前は公園になっており、たくさんの人たちでにぎわっていました。
青空の下、桜の木もこの日を祝うように花開いています。
オールショパンのリサイタル。
大阪に始まり、愛媛、北海道、福岡、熊本、石川と
日本のあちこちを飛び回り、ここ東京で千秋楽。
おかえりなさい。牛田くん。
初日の大阪を聴いた私は、どうしてもそんなふうに言いたくなってしまう。
高校生最後のリサイタルツアーはどうでしたか?
いろんな地域の空気に触れて、多くの人たちと出会い、
様々な会場でそれぞれのピアノとの一期一会を経て
あなたの奏でるショパンには、どんな音色がプラスされているのでしょう。
それとも、より楽譜に忠実に、余計なものをそぎ落としたようにシンプルになっているのでしょうか。
オールショパンのプログラムは、
♪ノクターン第17番 ロ短調 Op.62-1
♪スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
♪バラード第1番 ト短調 Op.23
♪ポロネーズ第6番 変イ長調 Op.53「英雄ポロネーズ」
~ ~ 休憩 ~ ~
♪24の前奏曲 Op.28
会場は小ホール。
今回チケットは完売で、買いたくても買えなかった方達が何人もいると聞きました。
その方たちの分もしっかり聴いて帰ろう。
牛田くんの高校生最後の演奏を、しっかりこの耳に心に焼き付けよう。
舞台中央に置かれているのはスタンウェイ。
舞台の照明が明るくなり、登場しました、牛田くん。
衣装は燕尾服。手には水色のタオルを持っています。
拍手の中、挨拶をすると、とても優雅な仕草で燕尾服の裾を払い、椅子に腰かけました。
手を膝の上に置いて目をつぶり
やがて心を決めたように目を開くと、弾き始めたノクターン。
ああ…。なんて、なんて美しい音色なんだろう。
なんて柔らかく、優しく、清らかに心の奥深くまで沁み込んでくるのだろう。
牛田くんがfacebookに書かれていたように、
それは、温かくて深くて、人生の哀しみや苦しみを全て背負ったような音色そのものでした。
このところ、仕事でもプライベートでも、ストレスが溜まったり、傷ついたり、心が疲弊することが続いていました。
そんな私を、「すべて知ってるよ。大丈夫だよ。」って温かく抱きしめてくれるように。
私なんかの比じゃないくらい、人生の苦しみや痛みを知っているかのような音色に包まれて、
早くも涙腺が緩みました。
牛田くん。
こんなに人の心を動かす演奏をしてしまう あなたは一体何者?
どんなに質の良いピアノでも、
どんなに腕のいい調律師に調律されていても、
やはり奏者の「心」がなければ、こんな音色は出せないと思うんです。
それはもはや「技術」を超えて、魂レベルで牛田くんが経験してきた
温かさや愛情、痛みや哀しみだと思うんです。
1曲目を弾き終え、すっかり聴衆を牛田ワールドに引き込んだ牛田くん。
立ち上がるとニッコリと微笑みを浮かべて舞台袖に立ち去って行きました。
この、ニッコリが大好きなんです。
瞳がキラキラして、白い歯が見える口元が上品で。
そう、これです。この笑顔!
どんなに成長されようとも、この気品ある笑顔は全く変わってないと思います。
繰り返します。
このニッコリが大好きなんです。
(///∇//)
2曲目のスケルツォ。
不気味な何かが蠢いているような短調から始まるこの曲。
やがてダイナミックに、展開し、
力強い打鍵で曲の輪郭を際立たせます。
前の方の席に座っていたため、
牛田くんの息遣いが聴こえてきました。
それはまるで、ピアノと一体になってダンスでも踊るかのように。
指先だけでなく、
呼吸で、心臓で、細胞のひとつひとつで。
我を忘れて「無」の境地に入っているかのような演奏に
体中に電気が走るような衝撃を受けました。
この曲をこんなに魅力的に弾く人がいるでしょうか。
いえ、私は素人で耳も肥えていません。
たくさんの人たちの演奏を聴いたわけでもありません。
でも、昔音大生だった姉がこの曲を練習していた時
「どこがいいの?」とうんざりしながら聴いたスケルツォ2番です。
牛田くんの奏でる音色はキラキラキラキラしていて、
音のつながりが、メロディの移行が、まるで星でつないだ天の川のよう。
たくさんの星が音となって降ってくるような気がしました。
この日の牛田くんは、とっても気持ちよさそうで、
楽しくて楽しくてたまらないのを、どこかで頑張って自制しているような印象を受けました。
牛田くんが楽しそうに気持ちよさそうに演奏している。
ファンとして、こんなに嬉しいことはありません(^^)
弾き終わると拍手の中、立ち上がってお辞儀をしてくれるのですが、
立ち上がりながら両手は自然とスーツの前ボタンをはめるために一瞬お腹の上まで動き、
そうだ、燕尾服だったんだ、というように下におろされました。
こんな無意識な動きが何度か見られましたが、なんだか微笑ましく、可愛かったです。
3曲目のバラード1番。
大阪で聴いた時よりずっと情熱的に感じました。
魂が入っている。
そんな演奏でした。
一音一音が命を吹き込まれ、まるで呼吸をしているかのよう。
嘆くように。絶望するように。
そして、愛しいものをそっと抱きしめるように。
最高の作品を作り上げるために
丁寧に丁寧に、自分の命を削るようにして
ピアノと向き合うその様子に胸が熱くなりました。
牛田くんはエンターテイナーではなく職人だと感じました。
力強い打鍵に、牛田くんの体が浮きます。
踊るように髪が跳ねます。
堕ちていくようなラスト。
嘆き、叫び、絶望するように。
この世界観を壊してしまうのが怖くて、
牛田くんの集中力を途切れさせたくなくて、
誰一人、拍手をする者はいませんでした。
圧倒されていた、と言ってもいいのかもしれません。
音のない拍手。
沈黙もまた称賛なのだと感じました。
そのまま続けて弾いた英雄ポロネーズ。
凛々しくて、気品に溢れ、力強くて…。
より完成度が高まったように感じました。
牛田くんの英ポロを聴くと、アドレナリンが体中を駆け巡っているのを感じます。
ああ、彼は本当に 演奏家になるべくしてなった人だ、と思いました。
そんな彼の高校生最後の演奏を今ここでこうして聴いていられる幸せを噛み締めながら、
同時に寂しさもこみ上げてきました。
後半の24の前奏曲。
牛田くんがどれだけ真摯にピアノと向き合ってきたのかを物語る演奏でした。
どの曲も1音たりともおろそかにせず、とても丁寧に
陰と陽を繰り返しながらつづら折りになった音の布を織っていくようでした。
曲と曲の間に生まれる一瞬の沈黙。
これも含めて、とても美しい流れを作り上げていました。
ぶった切った感じが少しもなく、
1曲1曲が見事に手をつないで、キラキラした音のリボンが艶やかに光っていました。
雨だれは今回もとっても素敵でしたが、
大阪で聴いた時ほど突出した印象がなく、
どの曲にも心を込めてスポットライトを当てている、そんな印象でした。
そして、牛田くん自身も、自分の紡ぎ出す音を楽しんでいるのが分かりました。
1曲1曲進むにつれ、
終わりが近づいていることを宣告されているような気がして
どうか終わらないで!と心の中でずっと願っていました。
極上の音色を聴きながら、
ああ、やっぱり自分はこの瞬間のために生きているんだな、と実感しました。
牛田くんより何十年も多く生きてきた私が、
日常で傷ついた心や、日々知らず知らずにたまった心の澱を抱えて
18歳の牛田くんのピアノに慰められている。
洗い流されている。 癒されている。
うん。だからまた私、明日から頑張って働くんだ。
またこうして牛田くんのピアノを聴くために。
雨だれからの流れが大好きですが、
24番が一番好きかもしれません。
運命のうねりのようなものを感じるんです。
力強くて、ドラマチックで、圧倒的で。
ラストは右手で強く強く、
地球の反対側まで届きそうな低音を3回。
左手はブランと力を抜いて肩から揺れています。
素晴らしい、と言う言葉で片づけてしまうにはもったいないくらいの演奏でした。
手が痛くなるほど熱い拍手を贈りました。
ありがとう。
牛田くん。
ありがとう。
アンコールの拍手に応えて登場した時、
最近にしては珍しく、フラっと力なく歩いてきました。
分かります。だってあれだけの演奏をしてくれたんだもの。
身を削るように、心血注いで最高の作品を作り上げたんだもの。
アンコールの拍手に応えて登場した牛田くん。
左手にマイクを持っていました。
「えー… あ、今日はお越しいただきありがとうございます。
今日は実は私の高校生最後の演奏会になります。
そんな特別の演奏会を こうして皆さまと一緒に過ごすことが出来て
とても嬉しく思っております。
今から、アンコール曲で『トロイメライ』を弾かせていただきます。」
そう。牛田くん、自分のことを「わたし」と言いました。
(実は聞き逃しちゃってて、ファン智さんから教えてもらったんですが)
そう言ってマイクを置くと、弾き始めたトロイメライ。
優しい優しい音色を聴きながら、
今牛田くんは、3年間の高校生活に、ゆっくりと決別しているのだと思いました。
2曲目は、ピアノの前に立ち、胸にぽん、と手を当てて、
「わかってます。今から弾きますよ。」というようにピアノの前に座りました。
シベリウスの樅の木。
アルバムに収録されているのと同じ曲なのに、
あの時は感じなかった「孤独」を感じるのは何故なんでしょう。
人生とはなんて孤独で切なくていとおしいものなんだろう。
どっしりとした包み込むような温もりを今日も感じました。
3曲目は子犬のワルツ。
ワルツ6番とも言うのですね。
(facebookでアホなコメントをしたので しっかり覚えました(/ω\) )
遊び心いっぱいで、さらりと撫でるように弾く子犬のワルツ。
でも、たっぷり歌ってます。遊んでます。楽しんでます。
4回目に登場した時は、ピアノから離れた位置に立ち、
深々と頭を下げて
もうこれで終わりです、という匂いを放って舞台袖に戻っていきました。
サイン会、小ホールで全体の人数少ないはずなのに、超長蛇の列でした。
牛田くん、お疲れのはずなのに、今回も一人一人に丁寧に接してくださいました。
黒い渋いプログラムにサインをいただいたのですが、
お話したら緊張して、書いてもらったばかりのサインを触ってしまいこんなことに(T_T)
皆さま、ゴールドとシルバーのマジックは要注意ですよ!
そして、サインのお顔は今回も平安調ですね。
ちなみに、このパンフレット、裏面も素敵でした![]()
…というわけで、終わってしまいました。
牛田くんの高校生最後のオールショパンのリサイタル。
かつて私もそうであったように、
高校卒業は人生における大きな転機のひとつだと思います。
6年間、中高生であることで ある意味守られてきた牛田くん。
いよいよ自分の足で歩くときがやってきましたね。
それは、決して平坦ではないかもしれない。
居心地がよくないかもしれない。
けれど、あなたの人生の中でとっても大切な
大きな大きな意味のある経験になるでしょう。
まだ私達はあなたの選択を知りません。
だけど、どんな道を進もうと、
牛田くんはいつだって、しっかりと牛田くんです。
あなたがピアノを心から愛する気持ちが、きっと全く変わらないように
私達も変わらずにあなたを応援し続けます。
ありがとう。
そして
おめでとう。
あなたの18歳の春に大きな祝福を!
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おまけ。
昨日職場の先輩からもらって
なんか嬉しかったおせんべい。







