みなさま。

 

日経新聞社が主催するクローズドコンサートに幸運にも行ってくることができました。

 

 

ここであらためて、チケット入手に携わったすべての大切な方達に、幸運をもたらせてくださった神様に、そしてこの素晴らしいコンサートを企画してくださった日経新聞社様に、心から感謝します。

 

 

 

たしか、2014年の10月26日、埼玉で牛田くんがラフマニノフピアノ協奏曲第2番を初披露した時は、前の日からソワソワして、当日も興奮のあまり早く目が覚めてしまい、

自分を鎮めるために布団の中でスマホでダイオウイカの画像を検索していたら、

 

 

こんな画像を発見して

MPicSOP.jpg

 

 

ますます心拍数上がったんだよなー(;^_^A

(あとでこの画像はニセモノと判明)

 

 

 

しかし今回は平日。仕事があるのでいやでも早起き。

 

通勤電車に揺られながら、バタバタと仕事をしながら、頭の中をずっと流れ続けていたのは もちろんラフマニノフピアノ協奏曲第3番。

 

仕事の後は電車に乗って総武線で会場のある津田沼に直行。

 

ファン智さんとラインでやり取りしていたら、同じ電車に乗っている事が分かり、合流して一緒に会場に向かいました。

 

 

仕事の後で疲れてるし、夜のコンサートだし、ファン智さんと早めの夕ご飯も食べたし、この記念すべきコンサートで万が一睡魔に襲われてはイカん!

 

そう思って、コンビニでリポビタン(一応女子っぽいヤツ)ビタミン。をゲット!

 

店の前で座り込んでタムロしてる(←これ死語?)若者たちの横で立ったまま一気飲み。

 

よっしゃー!今から聴きに行くぞ。

牛田くんのラフマニノフピアノ協奏曲第3番!炎力こぶ

 

 

 

 

 

2017年6月27日(火)19:00~

日経ご愛読者キャンペーン2017

新日本フィルハーモニー交響楽団コンサート

習志野文化ホール

 

指揮:山下一史

ピアノ:牛田智大

 

 

プログラム。

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Program

 

♪ グリンカ : 歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲

 

♪ ラフマニノフ : ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 op.30

 

♪ ベートーヴェン : 交響曲第5番 ハ短調 「運命」 op.67

 

 

 

座席数1475の会場はほぼ満席。

 

席に着くと、舞台ではオケのメンバーが音出しを始め、真ん中に蓋を閉じた艶消しのスタンウェイが置かれていました。

 

このピアノで、今日牛田くんは、コンチェルトの最高峰、ラフマニノフピアノ協奏曲第3番を初披露するのね。

 

そう思うと感無量で、早くもこみ上げてくるものが。

 

 

時間になり演奏会が始まりました。

 

女性も黒い衣装で統一された新日本フィルの方達。

 

登場したダンディな指揮者、山下一史さん。

 

 

勢いよく始まった『ルスランとリュドミラ』は、繊細な弦楽器の音の重なりがとても美しく明るく、これから始まる楽しい時間を想像させてワクワク感が高まります。

 

なんて幸せで心地よい時間…。

 

今日も一日仕事を頑張っただけに、その心地よさも格別です。

 

 

そしていよいよ…。

 

ピアノの蓋が持ち上げられました。

 

さっきまで忘れ去られていたようなピアノは、

 

それまでとは打って変わって 命を吹き込まれたように

 

鍵盤がキラキラキラキラと輝きを放ち

 

今から自分を歌わせてくれるソリストの登場を待ちわびているようです。

 

 

黒いスーツに身を包み、登場しました。

 

17歳のピアニスト。

 

髪を切ったらしく、さっぱりと短くなっています。

 

黒っぽいネクタイ、手には淡いブルーのタオル。

 

ピアノの前に立ち深々とおじぎをすると、ピアノの前に座りました。

 

 

私の席からは、ほぼ背中と指しか見えませんでしたが、

 

その背中は これから始まる歴史的瞬間への責任と緊張、そして未知の領域に足を踏み入れる興奮と喜びに満ちているようでした。

 

膝に手を置き、指揮者の山下さんとしっかりアイコンタクトを取り、

 

「いい?」

 

「はい。大丈夫です。」

 

無言でそんなやり取りを交わして演奏が始まりました。

 

 

こぼれ落ちる音をそっとすくい上げるように弾き始めたその音色は

 

哀しみを宿し、決然とした意志を持ち、

 

そして紛れもない、他の誰でもない

 

牛田智大 そのものの音色でした。

 

 

クリアな音色でピアノを歌わせ、あの旋律を奏でます。

 

それまでぐっと固くなっていた全身の力が、ふっとほどけていくのを感じました。

 

「牛田くんが世界一の難曲のラフマニノフピアノ協奏曲第3番を初披露する!」

 

ずっとそんなふうにかまえていたけれど、

 

牛田くんの演奏はまるで呼吸をするように自然体で

 

生まれた時からこの曲を知り、弾いていたのではないかしら?と思ってしまうほど

 

生き生きと 伸び伸びと オーケストラの音色と見事に融合していました。

 

 

主旋律のバトンをオケに渡したあと その指は早足に蠢く蜘蛛のように鍵盤の上をせわしなく動き回ります。

 

 

ずっと知っていた。ずっと待っていた。

 

そんなふうに、とても当たり前のように、力み過ぎずにラフマニノフを奏でる牛田くん。

 

 

きっとここに至るまでには、練習して、練習して、練習して、

 

もう自分自身と曲の境目がないくらいに弾き込んで、

 

これ以上ないくらいこの曲と向き合ってきたのでしょう。

 

 

 

若々しい力強さ、葛藤、苦しみ、哀しみ、情熱…。

 

時に慈しむように、いたわるように、

 

彼の指から紡ぎ出される音色は、オケの音色と溶け合い、絡み合い

 

ひとつになって心地よく会場を包み込みます。

 

 

素人の私にはよく分かりませんでしたが、第一楽章のカデンツァは、ossia版ではなく普通バージョンだったようです。

 

十分に牛田くんの色を持った、力強く誠実な、そして情熱的で繊細なカデンツァでした。

 

 

 

たとえば、チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番のように、楽章の終わりが華やかで分かりやすく、思わず拍手を誘ってしまうメロディと違って、ラフマ3番は各楽章の終わりがとっても自然です。

 

読んでいた本の表紙をそっと閉じるように、第一楽章が終わりました。

 

 

また山下さんとアイコンタクトをとって始まった第二楽章。

 

 

優しく、キラキラと降り注ぐようなメロディは、パガニーニの第18変奏を彷彿とさせました。

 

やがて力強くその輝きは一層強さを増し

 

地平線に沈みゆく太陽のようにダイナミックに。

 

ときに憂鬱を抱え込み、

 

ときに溢れるような愛を注ぎ、

 

人生の不条理と 森羅万象の不思議を謳い上げるように。

 

 

遠くて見えませんでしたが、牛田くんタオルでしきりに汗をぬぐっていました。

 

 

ジャンプする前に大きくしゃがみ込むように

 

牛田くんの指が鍵盤の頂へ上り詰めます。

 

 

遥かなる宇宙へ飛び出したような勇ましさで始まった第3楽章。

 

なんて広々とした空間を感じさせるのでしょう。

 

10本の指は、「本当に十本だけ?」と確認したくなるほど

 

驚くべきスピードで多彩な音色を生み出し

 

88個のの鍵盤の上を解き放たれたように疾走します。

 

 

終盤は本当に牛田くんの中にある無限の宇宙を感じました。

 

 

煌く星々の合間を縫って 共に銀河の中を進みゆくオーケストラと17歳のピアニスト。

 

囁きながら、歌声を上げながら、めくるめく宇宙の旅に聴衆をいざないます。

 

 

大きく両腕を広げてこの世のすべてを包み込むような音の抱擁。

 

 

渾身の演奏。

 

牛田くんの打鍵はとても力強く逞しく男性的でした。

 

 

そしてとうとう一気に上り詰める力強いコーダによるフィニッシュ!

 

 

 

思わず「ブラボー!」と叫んでしまいました。

 

 

素晴らしい!本当に素晴らしかった!

 

会場から割れるような拍手。

 

牛田くん、立ち上がると、指揮台に片足を乗せ、山下さんとガッチリハグ。

 

指揮者の山下さん、新たな歴史を刻んだソリストに向かって、大きく大きく拍手を送っていました。

 

見事に弾き切った牛田くん。

 

また1つ、大きな大きな階段を上ったのですね。

 

 

そこには、古い皮を脱ぎ捨てて

 

数十分前より一回り大きくなった 

 

晴れやかな笑顔の脱皮したばかりのピアニストがいました。

 

 

熱風のような興奮の渦の中、深々と頭を下げる牛田くん。

 

山下さんは、ずっと牛田くんに向かって拍手をし続けました。

 

もちろん、会場の拍手も鳴りやみません。

 

額の汗を拭いた時、前髪が上がり、おでこが出た牛田くんが大人っぽく見えました。

 

おでこが出た状態のまま舞台袖へ。

 

そして、聴衆の拍手に応えて登場するとき、前髪を直しながらピアノに向かい

 

ピアノの前に座りました。

 

水を打ったように静まり返る会場。

 

 

弾いてくれたのは、牛田くんが編曲したパガニーニの第18変奏。

 

難曲を牛田くんが見事に演奏しきったことにホッとしたのと、

 

牛田くんが紡ぎ出すあまりにも美しい音色に 自然と涙がこぼれました。

 

 

いつまでもいつまでも続いてほしい時間。

 

いつまでもいつまでも決して忘れない時間。

 

こんな瞬間のために 私は生きてるのかもしれない。

 

そんなふうに思うんです。

 

 

毎日の家事や仕事や雑事。

 

やらなければならないこと、こなさなければいけないこと、

 

頑張っていることのあれこれ。

 

そんな繰り返しの毎日だけど、

 

こんな時間があるから頑張れる。

 

こんな瞬間があるから、明日からもまた頑張ろうって思える。

 

牛田くんのピアノに出会えて、本当に本当によかった。

 

 

弾き終わって、また深々と頭を下げ、舞台袖に消えて行った牛田くんを追いかけるように

 

山下さんが、袖の方まで追いかけて行って、もう一度出ておいで、と手招きを。

 

拍手の渦の中、再び登場した牛田くん。

 

自らもオーケストラに拍手を送った後、山下さんと二人、ぴったりと綺麗に揃ったタイミングで頭を下げました。

 

いつまでもいつまでも続く拍手。

 

 

本当に素敵な時間でした。

 

 

 

牛田くん。

 

大曲への挑戦、お疲れ様でした。

 

成功おめでとうございます。

 

 

そして、たくさんの感動をありがとう。

 

たくさんの幸せをありがとう。

 

 

これからさらにその羽根を広げ 羽ばたいていくあなたに

 

大きな大きな拍手を贈ります。

 

 

あなたは素晴らしいピアニストです!