皆さまこんにちは。
転職してから、土曜日の仕事がなくなったので、牛田くんの土曜日のコンサートに行けるようになりました\(^_^)/。
1月に行ったコンサートは合計5回。
ワタクシ、なんて幸せ者なのでしょう
が、どうにもこうにも時間がなくて、先週行った鶴見と習志野のリサイタルのレポ記事、書くことが出来ませんでした(泣)。
どちらも素晴らしいリサイタルだっただけに残念(T_T)
皆さまのブログにもなかなかうかがえず、大変失礼しておりますm(_ _ )m
このブログを始めて以来、行ったコンサートのレポはほぼ全部書いてきたので、非常に心残りではありますが、とにかく時間がないので、次に進んで行こうと思います。
2017年1月28日(土)14:00~
牛田智大ピアノリサイタル
横浜みなとみらいホール(神奈川県)
まるで雑誌の表紙のような素敵なチラシ。
電車で横浜に行ったのはいつ以来だろう。
普段は車で行っているので、同じ横浜なのに、まるで違う場所に来たような感覚。
渋谷で乗り換えたけど、東横線って、こんなに歩くんだっけ(^_^;)
プログラム
三つ折りになったA5サイズ。
Program
♪ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番変イ長調 Op.110
♪ショパン:4つのマズルカ Op.33より 第3曲、第4曲
♪ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66
♪J.S.バッハ/F.プゾーニ編:シャコンヌ
~ ~ 休憩 ~ ~
♪チャイコフスキー/プレトニョフ編「くるみ割り人形」組曲より「間奏曲」
♪チャイコフスキー:18の小品 Op.72より「瞑想曲」
♪ムソルグスキー:展覧会の絵
初めて行ったみなとみらいホール。
(お写真お借りしました)
前方に立派なパイプオルガンがあり、舞台を何重にも取り囲むようにぐるりと客席が並ぶ、とても素敵なホールでした。
低めの舞台の前方には全体が階段のように2段の段があり、中央に置かれたスタンウェイ。
右側にはピンクを基調にした花が飾られていました。
割と明るめの照明の中、登場した牛田くん。
ジャケット姿。クロスするように白いラインの入った黒っぽいネクタイ。
手にはグレーっぽいタオル。
今回は演奏前のトークはなく、前方に、後ろのP席に丁寧にお辞儀をすると、すぐにピアノの前に座りました。
椅子の位置を少し後ろにずらして修正。
落ち着いた様子でジャケットの前ボタンをはらりとはずします。
集中するように膝に手を置いて目をつぶり、指と一緒に心も鍵盤に置くようにして、丁寧に弾き始めたベートーヴェンのソナタ。
今日のピアノの音色は、ちょっと硬質。
でも、私の好きな音色です。
美しい花束をそっと差し出しているかのように優しく始まる第一楽章。
躍動感のある第二楽章。
ピアノのある舞台をぐるりと取り囲むように席が並んでいるのに、
牛田くんと客席の距離は近いはずなのに、
どうしてなのか今日は牛田くんとの距離を強く感じました。
牛田くんがまっすぐにピアノと向き合っている姿は、私などが想像もつかない世界のものを追い求めているようで、ただひたすらに音楽に入り込んでいるようで…。
『孤高のピアニスト』
そんな言葉が浮かんできました。
牛田くんの奏でるソナタは、特に第三楽章に大きなストーリー性を感じます。
悩み。苦しみ。絶望。諦め。
苦しみ、もがき、あがき、倒れた後で、時間とともにゆっくりと立ち上がる再生。
実は、つい最近、娘と同じ年の一人息子を亡くした女性がいます。
優秀な息子さんで、中学受験を頑張って、4月から人気の難関校に通っている愛されキャラの男の子でした。
その彼が、今月の初めに突然自宅で倒れ、帰らぬ人となりました。
まだ13歳。脳溢血だったそうです。
彼のお母さんは、今、実家に帰り、何も考えられない、なんの気力もわかない。
ただ自分を責め続ける毎日だそうです。
彼女の苦しみは、とても軽々しい言葉で語ることなど出来ません。
この世に生を受けた限り、誰でもその人なりの苦しみを抱えるものなのかもしれません。
人は突然、身を引き裂かれるほど、辛い目に遭うことがあります。
大なり小なり、人はそれぞれに悩みを抱えていて、
それまで悩みなんかなくても、ある日突然、絶望の谷底に突き落とされることがあって、
それは、病気だったり、老いや死に対する恐怖だったり、家族との別れだったり、言いようのない不安だったり…。
それでも生きていかなければならない。
どんなに絶望の淵にいても、陽は沈み、夜がやってくる。
そして、夜の次には朝がやってくる。
なんのために生きるのか分からなくても、起きて、食べて、生きなければならない。
それを繰り返さなければならない。
気が遠くなるほどそれを繰り返した先に、聴こえてくる鐘の音を、牛田くんのピアノの中に聴きました。
散々絶望したあとに、涙が枯れ果てた後に、ゆっくりと歩き始める力を宿す。
そういう強さを、きっと人間は持っている。
そんな希望の音色を聴きました。
前のめりになり、ひたすらピアノに向き合う牛田くんは、まっすぐに自分の人生に立ち向かう一人の人間そのものに見えました。
ショパンのマズルカ。
踊るような長調の第3曲を想像してたら、あれ?短調だ。
前回の習志野では違う曲だったのに…・
どうやらこちらの短調が本来の第3曲だったようです。
マズルカを弾く牛田くん。
ここでも何故か「孤独」という言葉が浮かんできました。
人間のもつ本来の哀しみや愁いを感じました。
幻想即興曲。
いろんな人の演奏で、何十回とこの曲を聴きました。
そして、牛田くんの幻想即興曲を聴いて、この曲のイメージが変わりました。
私の中では、この曲は繊細でどちらかというと女性的で、
色に例えるなら紫がかったワイン色。
でも、牛田くんの演奏は、黒。
太く大胆で、肉厚で、骨太で。
ショパンの狂おしいほどの故郷への想いを強く強く表現していると思いました。
誰のとも違う、牛田くんにしか弾けない幻想即興曲。
鬼気迫るほどの迫力に、胸の奥が熱くなりました。
そして、シャコンヌ。
牛田くんがそっと目をつぶり、かまえた瞬間から、会場の空気が変わりました。
荘厳なパイプオルガンが、まるで教会にいるような錯覚を起こさせます。
唸るような牛田くんの息遣いが聞こえ、響き渡る深い音色。
「慟哭」以上に感じる魂の叫び。
深い嘆き。人間の「業」。
牛田くんのシャコンヌは本当に特別だと思います。
魂で弾いている。
そして、私達も、耳ではなく、理屈を超えた場所、魂で聴き、受け止めている。
だからでしょうか。
理由の分からない涙が、次から次へと頬を伝いました。
生きること。死ぬこと。そのすべてに向けられた厳しい愛とでも言うのでしょうか。
神の存在を感じます。
ずっと踏み続けられたペダルを踏む足に、
力の限り鍵盤を叩く指に、
真剣な眼差しに、
魂ごと自分の存在をぶつけているような牛田くんの演奏に、
まるで奇跡を目の当たりにしているようで、「畏れ」すら感じます。
17歳…。
いったいあなたの魂年齢はいくつなのですか?
渾身のフィニッシュ!
客席から飛び交う、いくつものブラボーの声。
額の汗を拭いてニッコリ笑い、深々とおじぎをする牛田くん。
ああ、今日もすっかり魂抜かれました。
休憩になるとすぐ、興奮冷めやらぬ様子で友人グッジョブが駆け寄ってきました。
彼女が牛田くんの演奏を聴くのは11月のNHKラジオ収録以来。
コンサートでいえば、10月のせんくら以来です。
「私みたいに間があいてると(いや、結構頻繁だよね)、彼の成長ぶりがすごくよく分かる!
すごいね!聴くたびにものすごく成長してるね!」
うん。本当に。(^^)
ホールから出るとCD売り場とは別に長蛇の列が。
5月31日のオペラシティの前売り券に並ぶ列でした。
今日初めて牛田くんのピアノを聴かれた方々の中には、
彼の演奏にすっかり心を奪われ、また聴きたくなった方もたくさんいらっしゃるでしょう。
牛田くん、演奏会ごとにファンを増やしていきますね。
まるで少し歩くごとに猿や犬のお供が増えていく桃太郎のように。
(へんな例え(;^ω^A) )
後半のチャイコフスキー。
「間奏曲」。
主旋律を右手の親指のみで弾き、左手と右手の残りの指はキラキラ
を振り撒いていました。
今日の演奏はいつもに増して重厚感があり力強く、凄みさえ感じました。
「瞑想曲」は、次々と小さな白い蕾が音を立てて花開いていくみたい。
そして、ラストの展覧会の絵。
集中するように膝に手を置き目をつぶり、
決心したように目を見開いて弾き始めたプロムナード。
いつもに増して凛とした音色が、何かを宣言しているように感じます。
演奏はさらに肉厚になり、奥行きを深め、牛田くん自身がすっかりこの曲を自分のものにしていると感じました。
そして、「さて、どんなふうに料理しようかな。」と、楽しんでいるように。
思いっきり歌ってみたり、目立たないメロディを際立たせてみたり。
これはもう、完全に「牛田智大版」ですね。
牛田くんの表情もクルクルと変わります。
「卵の殻をつけたひなどりのバレエ」では、とても楽しそうに、演奏もちょっとジャズピアノのようでした。
一つ一つにキレがあり、さらに磨きがかかっていました。
ラストはさらに力強く、音の広がりを見せ、まさに芸術作品を鑑賞しているようなフィニッシュでした。
今度も飛び交うブラボーの声と割れるような拍手。
完成しても更に進化し続ける。彼のハートは立派なアスリートです。
晴れやかな表情で立ち上がり、額の汗をぬぐうと、前方に、後方の席にお辞儀をすると、しっかりとした足取りで舞台袖に消えていきました。
拍手に応えて再び姿を見せた時、彼の前髪が少し乱れていて、なんだかとてもいとおしくなりました(*^.^*)
アンコールの一曲目は「トロイメライ」。
モー、散々「人生の苦悩」やら「慟哭」やら「死後の世界」を見せつけておいて、今度はこの上なく優しい音色で会場を包み込むのですから、初めて牛田くんのピアノを聴いてファンにならない人がいるのでしょうか?
この優しい音色は牛田くんの心の色。
優しくて、謙虚で、思いやりがあって、まっすぐで。
facebookで彼の人柄に触れ、彼のピアノへの強い想いを日々目の当たりにしているからでしょうか。
最近は彼のどんな曲を聴いてもうるうるしてしまいます。
2曲目はエディット・ピアフを讃えて。
最初の一音を聴いた時から「ああっ、やられた!」と思いました。
だって、何度聴いても心の琴線に触れ、涙腺を刺激してくるんですから。
深く切なく哀しく、そして優しく胸に沁みわたるこの音色。
最近の私は、この曲を聴くときは「自分を抱きしめる時間」にしています。
毎日毎日本当に頑張ってるね。お疲れ様。
自分を褒めていいよ。泣いてもいいよ、って。
3回目に登場した時、彼はマイクを手にしました。
「皆さま、今日は僕のリサイタルにお越しいただいてありがとうございます。
今日はお楽しみいただけましたでしょうか。」
大きな拍手が起こります。
そして、今日演奏した曲は、人生の苦悩や慟哭みたいなものを表現して哲学的な感じだった、というようなこと、
5月31日にデビュー5周年記念でオペラシティでリサイタルをやること、
デビュー当時の「愛の夢」などを久しぶりに弾くけれど、そんな小品が実は一番怖い(笑)、というようなことをおっしゃってました。
(あと、リストのソナタについてもちょっと言ってた気がするけど失念
)
そして、
「今日の僕の演奏を聴いて、また聴きたいと思って足を運んでいただけたら嬉しいです。」
と。
もちろん、みんなまた聴きたいと思ったでしょう。
だから前売り券にあんなに長蛇の列が(^^)
「最後に僕が編曲したパガニーニの第18変奏を弾かせていただきます。」
と言ってマイクを置くと、弾き始めました。
ああ、この曲を聴くと、深く深く深呼吸したくなります。
すべてが浄化され、心の澱が洗い流されていくのを感じます。
そして、ベートーヴェンのソナタやシャコンヌで、生きることの辛さを味わったけれど、
「本当は生きることって素晴らしいよ。命って美しくて尊いよ。」って、
優しく語りかけられてるような気持になります。
ああ、そうだね。命って美しいよね
今日もすっかり聴衆の心を虜にして、牛田くんのリサイタルは終わりました。
明日からまたがんばろう。
たくさんの元気と感動をもらいました。
牛田くん、ありがとう。
残念ながら会場側の時間の関係とのことでサイン会はありませんでした。
もしあったなら、相当長蛇の列になったことと思われます。
オペラシティの3月18日のコンチェルト(皇帝)と、5月31日のリサイタルのチラシが置いてありました。
オペラシティは赤と黒基調。情熱的ですな
久しぶりにレポ記事書けたのが嬉しくって(今日からムスメはスキー合宿に出かけました)、
思う存分長々と書いてしまいました(///∇//)
相変わらず暑苦しいワタクシの文章、最後までお付き合いくださり、ありがとうございましたm(_ _ )m
牛田くん、新年早々毎週走り続けた1ケ月、本当にお疲れ様でした。
たくさんの感動を、ありがとう!






