先輩を拝み倒して、仕事を替わってもらい、
平日昼間のリサイタル、なんとか行って来ることが出来ました。
牛田智大ピアノリサイタル
12月22日(火)14:30~
和光大学ポプリホール鶴川
同じ都内と言えど、初めて降りた鶴川駅。
会場は、駅北口から歩いてすぐのところにありました。
入り口で迎えてくれたのは「完売御礼」の赤い札のついた牛田くん。
早めに着いたので建物内のカフェで読書をしながらティータイム。
赤い食器が可愛らしい
近くのテーブルでお母さんと小学校低学年くらいの女の子がお茶をしていました。
女の子のスカートはピアノの鍵盤柄。
ああ、きっとこの子もピアノを習っていて、牛田くんのピアノを楽しみにしているのね(^^)
ホールは地下2階にありました。
ぐるりと階段を降りていくと、壁に沿って、ここポプリホールで催されるポスターの数々。
その中で一際輝く「完売御礼」の札のついた牛田くん。
以前書いた「頑張れ!若者たち」という記事の中で紹介した、
娘のピアノ発表会でゲストとしてヴァイオリンを演奏してくれた地元の星、島田光博さんも、ここポプリホールでリサイタルを行うようです。
牛田くんと同じ、1999年生まれの16歳。
お姉さんはピアニスト。
この日のプログラム。
~ Program ~
♪ グリンカ/パラキレフ : ひばり
♪ チャイコフスキー/プレトニョフ他:
バレエ音楽「くるみ割り人形」組曲Op.71より
行進曲、金平糖の踊り、タランテラ、間奏曲、トレパーク、花のワルツ
♪ ショパン : バラード第1番
♪ リスト : 死の舞踏~「怒りの日」によりパラフレーズS.525<ピアノ独奏版>
* * *
♪ クライスラー/ラフマニノフ : 愛の悲しみ
♪ クライスラー/ラフマニノフ : 愛の喜び
♪ ラフマニノフ : 「パガニーニの主題による狂詩曲Op.43」より第18変奏曲
♪ ムソルグスキー/ホロヴィッツ : 展覧会の絵
座席数300という小さなホール。
この日舞台に置かれていたのは、牛田くんにとってはお久しぶりのスタンウェイ。
ホール前のモニターに映っていた舞台の様子
開演時間を少し過ぎて照明が絞られ、ドアが開き、登場しました牛田くん。
手には携帯用カイロ。
いつものベスト姿に、ネクタイは緑に黒のストライプ。金色の模様が散りばめられています。
髪が少し伸びた様子。
以前「月刊ピアノ」で「手の爪は長めの方が落ち着きます」と言っていたけれど、髪も同じかな。前髪が目にかかるくらいの長さです。
この日私は後方の席に座っていたため、拍手をするとオペラグラスが覗けないので、牛田くんの表情がよく分かりませんでした。
よく分からないながら、今日の表情も、ちょっぴり硬いかなあ。。。
ちょっと素っ気ないくらいの挨拶をして、弾き始めた1曲目、「ひばり」。
久しぶりのスタンウェイだからでしょうか。
音が柔らかい気がします。
哀しみを湛えた音のきらめき。
何故か心地よく感じる陰鬱さ。
悩み苦しみ、羽根をバタつかせて、もがくような葛藤。
やがて、解き放たれ、キラキラと陽の光を浴びて飛んでいく1羽のひばり。
1曲目が終わって立ち上がり、ご挨拶。
「くるみ割り人形。」
さあ、お楽しみの夢の世界の始まりです。
ファンファーレのように物語の始まりを告げ、始まった軽快な「行進曲」。
キレのいい右手の旋律。低音部から駆け上がってきて、高揚感をさらに盛り上げてくれる左手。
見ると、桃色の舌がチロっと顔を覗かせています。
初披露の焼津より、随分リラックスして弾いているみたい。
ああ、楽しいな♪ 嬉しいな♪
牛田くんの演奏で聴ける、冬の日の「くるみ割り人形。」
「金平糖の踊り」。
ひそやかで、きめ細かくて、お砂糖の結晶が反射して、きらめきを撒き散らしながら踊っているみたい。
時々右手と左手がクロスする繊細な演奏。
たちまち私達を不思議なおとぎ話の世界にいざないます。
「タランテラ」。
今まであまりよく知らなかった曲です。
そういえば、子供の頃弾いていてた「ブルグミュラー」にも「タランテラ」という曲があって、短調だけどかっこよく、お気に入りの曲の1つでした。
当時は毒蜘蛛タランチュラと混同し、不気味に動く大きな蜘蛛をイメージして弾いたりしていたけれど、そもそも「タランテラ」って、どういう意味だろう?
と思って調べてみると…
タランテラ(tarantella) はイタリア、ナポリの舞曲。3/8または6/8拍子のテンポの速い曲である。タランテラという名前は、タラントという町の名前に由来するという。または同じ町の名を由来とする毒蜘蛛のタランチュラに噛まれると、その毒を抜くために踊りつづけなければならないとする話から付けられたという説もある。
(Wikipediaより)
なるほど!毒蜘蛛と混同していたのはあながち間違いではなかったのか。
そして、バレエでくるくる回り続ける王子は、毒蜘蛛に噛まれてしまったからなのでしょうか?
(どなたかお詳しい方、教えてください)
「間奏曲」。
これも今まであまり知りませんでした。
こんな美しい曲を知らずにいたなんて、なんてもったいない。
ショパンの「エオリアンハープ」や、リストの「ため息」にちょっと似た曲。
そっと手を伸ばし、愛しい人を優しく抱きしめるようなロマンティックな演奏。
背中を抱きしめる腕の力が少しずつ強くなり、胸が苦しくてそっと吐息がもれてしまいそう(←図々しくも勝手に脳内バーチャル体験(///∇//) )。
なんてせつないの?
タイトルは「間奏曲」ですが、きっとこれは愛の曲ですね。
「トレパーク」。
せつなく恋を語る青年が、一転して活気溢れる若者に。
さてさて、待ってました!「花のワルツ」。
やっぱり「くるみ割り人形」のトリですね。
素人の私が言うのもなんですが、
いろんな作曲家の作品を編曲したリストも、こんなふうに布の端をレースで縁取るように、元の作品をより華やかに変身させたのではないかしら、と思いました。
オーケストラの「花のワルツ」も素敵だけど、グリャズノフ先生、なんて華やかに編曲されたのでしょう!
お城の中の舞踏会。くるくる回る貴婦人達のドレスの花。
ああ、今日も聴けて幸せ…
:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
「バラード」1番。
演奏に入る前に鍵盤に指を置き、深く目を閉じていました。
聴くたびに、頭に浮かぶイメージが変わっていく牛田くんのバラ1。
今日の演奏は「水」。
まだ若い葉っぱの上で光る朝露。
森を静かに濡らす雨。
やがて小さな川になり、流れる水。
小川がいくつかの出会いを繰り返し、大きな川となり、
やがて海へと辿り着く。
音のしずく達を受け止める海。
大きくその腕を広げて、すべてを許し、受け入れるように迎える、母性さえ感じる今日の牛田くんのバラ1。
ラストの1音、いつもは中指、人差し指、親指をくっつけて、高い位置から振り下ろすように強く強く弾くのですが、
この日は親指は使わず、2本の指を鍵盤に押し付けるようにしてこの曲の幕を閉じました。
さてさて、待ってました。お待ちかねの(このDプログラム、「お待ちかね」な曲が多すぎる♪)男前な(←前回よりこの枕詞が付きました)「死の舞踏」。
この「死の舞踏」、男前でありながら、「怪物」でもあります。
右手と左手がそれぞれ別々の意志を持った生き物のよう。
闇の世界からそっと近付いてきて、心臓の鼓動を揺り動かすような左手。
腰から剣を抜き取って、素早く突き刺すような右手の動き。
今年初めにこの曲を弾いたときは、牛田くん、前のめりになって、下から鍵盤をねめつけるようにして弾いていましたが、
今日は背筋が伸びていて、激しい演奏の中に余裕すら感じます。
大きな怪物を、すっかり飼いならしてしまったみたい。
それにしても、やっぱり牛田くんの弾くリストの「死の舞踏」・・・いや、「死の舞踏」を演奏する牛田くん、かっこいい!
(≧▽≦)
あまりの凄さに聴衆は「あっけに取られる」という表現がピッタリのまま、第一部が終わりました。
第二部の「愛の悲しみ」「愛の喜び」は、後方の席のせいか、ゆったりと落ち着いて聴くことが出来ました。
そして、デトックスタイムの「パガニーニ18番」。
ああ、目をつぶって、体の細胞ひとつひとつで、その音の粒子を受け止めたくなるような心地よさ。
見えなくても分かる。今この会場、マイナスイオンがキラキラしてる
凍てつく冬の屋外から、やっと我が家にたどり付き、あったかい浴槽に、ゆったりと身体を沈ませた時のような、包み込まれるような安堵感。
凍りかけていた体と心がゆっくり溶けていくみたい。
いつかオーケストラとの共演で是非聴いてみたいこの曲。
ピアノだけでもこんなに酔わせてくれるというのに、オケと一緒に聴いたら、一体どうなってしまうんでしょう?
さて、いよいよラストのおおとり、「展覧会の絵」。
「さあ始まるよ!準備はいい?」と、私達の手を取って、今度は絵画の世界にいざなってくれる牛田くん。
焼津の時よりも肩の力が抜けてる感じ。
キレのいいカワイもよかったけど、まろやかなスタンウェイもやっぱりいいな。
耳なじみのある「プロムナード」に油断していると、一気に不安な崖の淵に立たされた気分になる「グノームス」。
「古城」はやっぱり私のイメージでは、しとしとと雨に濡れている(そして演歌っぽい)。
いくつもの絵をつなぐ「プロムナード」。
牛田くん、いろんな表情を見せてくれます。
最初は颯爽と前を歩いていると思ったら、突然振り返って
「しーっ。今から見るのは秘密の絵だから誰にも内緒だよ。」
と、ちょっとお茶目に人差し指を口許に当てたり(イメージね)、
「今度の絵は君の想像とは違うよ。ちょっと覚悟して。」
と真剣な表情になったり。
「卵の殻をつけたひなどりのバレエ」は、バレエというよりは本当に小鳥がちょこちょこ速足で歩き回っているみたい。
私の職場の敷地に、毎年セキレイという鳥が姿を見せるのですが、すずめのように両足を揃えてチョンチョン移動するのではなく、右足と左足を交互に出して、素早い動きでチョコチョコと歩くんです(「走る」と言った方が近いかも)。
見るだけでニッコリしていまう、そのユーモラスな動きを思い出しました。
↓鶺鴒(せきれい。ブルグミュラーにもありましたね)
次々といろんな絵画を見て回り(詳細省きます(^^ゞ )、大きく立ちはだかる「キエフの大門」へ。
最後は渾身の大迫力。
息をするのも忘れそう。
全力で大曲と真正面から向き合う牛田くんの姿に、見ているこちらも、グッと肩に力が入ります。
ドラマチックな響きを残してフィニッシュ!
ほんの少しの間を置いて、「ブラボー!」の声と拍手の嵐。
焼津では弾き終わってグッタリした印象だった牛田くん。
今回は少し余裕を感じました。
ああ、今日も楽しかった。いろんな世界を見せてもらった「展覧会の絵」。
一度袖に入り、鳴り止まない拍手に再び登場した牛田くん。
ピアノの前に座って弾き始めたのは「トロイメライ」。
ああ…。(:_;)
「懐かしい」というのには、まだ早いでしょうか。
でも、ご自身も、その演奏も、どんどん成長していく牛田くん。
彼が見せてくれる世界を必死で追いかけているうちに、さまよいかけた心を呼び戻してくれるように…。
「ここだよ。僕はちゃんとここにいるよ。」
そんなふうに語りかけてくるような優しい優しい響きに、思わずホッとして涙腺が緩んでくる。
微笑みながらというよりも、目をつぶり、眉根を寄せて、イヤイヤをするような表情で演奏する牛田くん。
牛田くんの胸の中にも、万感の想いが浮かんでいたのかもしれません。
なんて素敵な曲のチョイス。
アンコール2曲目は牛田くんのアレンジで「きよしこの夜」。
後ろの席に座ると、いつもより幾分客観的に演奏を聴くことが出来ます。
客層や雰囲気も見ることが出来ます。
この日は平日の昼間であるにもかかわらず、小さな子供達の姿がたくさんありました。
それから髪の白い高齢者の方達の姿も…。
みんな、牛田くんから「メリークリスマス」のプレゼントを受け取って、とっても幸せそう。
牛田くんは色んな世代の人に愛されている。
たくさんの人達を幸せにしている。
そう思うと、私の胸も幸せでいっぱいになりました。
思えば2年前の12月19日、東京の浜離宮で行われた「お姫様とお菓子」のコンサートの時のこと。
小さなハプニングが起きました。
一通りプログラムの演奏を終えた牛田くんに送られた、称賛を込めたアンコールを求める拍手の波。
それに応えてピアノの前に座った牛田くんに、
「ともちゃん。もう弾かなくていいよ。」
と、後方の客席から1人の高齢のご婦人が飛び出してきて
「はい、もう終わり。」
と、アンコール演奏をやめさせようとした時のこと。
突然のことに会場の空気は凍りつき、どうなることやらと周囲はハラハラ。
当時14歳だった牛田くん。
にっこり笑って、でも毅然と、声変わり真っ最中の声で「弾きます。」と一言言うと、
この「きよしこの夜」を弾いてくれました。
その年の辛かったこと、嫌だったことをすべて洗い流すような、優しく澄み切った音色でした。
きっと14歳だった牛田くんには分かっていたのだと思います。
飛び出してきたご婦人は、コンサートの邪魔をしたかったわけではなく、
まだ少年の牛田くんをこれ以上疲れさせたくなくて、「もういいからゆっくり休んで。」と、
孫をいたわるような気持ちから出た言動だったことを。
そして、帰りの電車で向かい合わせに座った別の可愛らしいばあさまが、「お姫様とお菓子」のパンフレットを大切そうに胸に抱いて、とても幸福そうな表情をしていたこと。
それを見て、私もとっても幸せな気持ちになったことを思い出しました。
あれから2年…。
すっかり青年らしくなった牛田くん。
ああ、でもおんなじだ。その澄んだ音色はあの時のまま。
牛田くんの演奏は、今日で聴き納め。
今年もたくさん、幸せをもらいました。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚* ☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚* ☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
サイン会は、なんと、撮影禁止の厳戒態勢。
牛田くん、いつもよりちょっと素っ気ないというか、表情が硬かった気がします。
人間ですもの。いろんな事情があって然り。
そんな中で皆さま!
ワタクシ素敵な情報をご本人からいただきましたよっ!
5月19日の東京・調布のリサイタルから、新プログラムになるそうです!
\(^∇^)/ きゃ~~っ!
嬉しすぎるーっ!
楽しみすぎるーっ!
きっとそのうち、5月以降のコンサートスケジュールがドシドシ発表されるのではないでしょうか。
(≧▽≦)
いただいたサイン
では、本日も叫びます。
牛田くーん!
今年もたくさんの演奏で幸せにしてくれてありがとう!
素敵なクリスマスと年末年始を過ごしてね!