1月10日(土)、


ショパン国際ピアノコンクール in ASIA


に行ってきました。


昨年、某掲示板で、このコンクールを見に(聴きに)行き、どっぷりとショパン漬けだったという素敵な書き込みを見つけて、


その方に詳しく教えていただき 初めてコンクールというものに足を運んだのが1年前のこと。


その親切な方こそが、花音さんだったということが、ずっと後になって判明。


ほんとうにありがとうラブラブ

思えば出会う前からお世話になってばかり…(〃∇〃)


このコンクールにつきましては、その花音さんが、くわしく素晴らしい記事を書かれていますので、どうぞ こちら  をご覧ください。



今回私が行ったのは、小学校5、6年生の全国大会。


土曜日だったので、刺激になれば、と小5の娘も連れて行きました。



パンフレット(1000円)
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出場者の顔写真と学校(職業)、演奏曲が載っています。



会場は昭和音楽大学の南校舎にあるユリホール。


トイレやエレベーター前のスペースには、既にドレスや正装に着替えた出場者達がたくさんいて、ピリっとした緊張感が伝わってきます。


会場の扉を開ける前から、聴こえてくる演奏に、


「本当に小学生が弾いてるの?」


と驚く娘と私。


指の動きが見える左寄りの席に座って、私達が聴いたのは、小学校5~6年生(なぜか4年生も何人か入っていました)、27人の演奏。


9曲の課題曲のうち、一番多く演奏されたのは「幻想即興曲」でした。


全国から選ばれただけあって、みんな相当な腕前。


当然ですが、ただ「弾ける」のは当たり前。


曲を解釈し、自分のものにして、ピアノを歌わせる「聴かせる」レベルに到達している演奏に圧巻です。





ハプニングは、私達が聴き始めて、7人目の男の子の時起きました。


彼が舞台に登場して、ピアノに向かって歩を進めた時に、


「少々お待ちください。」のアナウンスとともに、舞台袖のスタッフから、戻るようにとの指示。


男の子が戸惑いながら舞台袖に戻ると、2人の男性スタッフが登場して、ゴシゴシと鍵盤を拭き始めました。



みんなの手の汗や油がついて鍵盤が汚れたのかな…?


と思ったのですが、その汚れの取り方と、スタッフの表情がちょっと尋常ではない。


会場後方までバタバタと走って、何かを取りに行った様子。


汚れ落としの薬品でも取りに行ったのでしょうか?


ただの汚れ取りにしては、やや大がかりな感じで2人の男性がピアノを拭き、


約5分後に審査が再開されました。



演奏前に出鼻をくじかれた男の子。


立派に演奏を終えて、私達のすぐ後ろのご両親の元へ戻ってきました。


そこで分かったのですが、鍵盤が血で汚れてベタベタだったとのこと。


5分間の応急処置でも、その汚れは取れなかったらしく、


彼はかなり納得のいかない状態で演奏する羽目になったようです。


「そういうことだってあるさ。」


「また来年もあるよ。」


と彼をなだめるご両親。



休憩時間になり、ゴシゴシと袖で涙を拭いながら、彼は会場を出て行きました。


彼が手にしていた手提げから、割と大きな熊のぬいぐるみが顔を出していたのが印象的でした。



彼の前に演奏した女の子が、自分の演奏を終えて


「鍵盤に血がついているので拭いた方がいいと思います。」


とスタッフに伝えたようです。


ということは、血は、彼の直前に演奏した、その女の子ではなく、


その前の子か、もっと前の子…。


誰の時も、そんなことを全く感じさせない、堂々たる見事な演奏でした。




胸がいっぱいになりました。




出場したどの子供達も、この日のために一生懸命練習してきたことでしょう。


コンクール当日の、しかも審査を受ける舞台の上で、指が切れて出血してしまった子。


指の痛みに耐えながら、白い鍵盤が赤い血で汚れてベタベタになっていくピアノで、


持ち時間の最後まで闘った時間は どんなに長かったことか。




その日を迎えて、舞台に踏み出した瞬間、


目に飛び込んでいた鍵盤が血に染まっていた。


それでも静かにお辞儀をしてピアノに向かい、


誰かの血で自分の指がベタベタになるのに耐えながら


演奏しきった女の子。


自分はそんな状態で演奏したというのに


次の子のために「拭いた方がいいと思います。」


とスタッフに伝えた、その冷静さと優しさ。




意を決してピアノに向かって歩き出した瞬間、


呼び戻されて志気をくじかれてしまった男の子。


ピアノが綺麗になるのを待っていたのに、


いざ向かったピアノにはまだ血が残っていた。


彼の手提げから はみだしていたぬいぐるみは、


もしかしたらお気に入りの精神安定剤のような存在だったのかもしれません。




本人以上に無念だったでしょうに、


悔し涙にくれるわが子を


穏やかになだめ、励ましていたご両親。




そして、自分の演奏前に、そんなハプニングを目の当たりにした


何人ものコンテスタントたち…。



出場した子供たちの数だけ、この日にたどりつくまでのドラマがあったことでしょう。


泣いたり、笑ったり、おそらくは親子喧嘩もしたりしながら辿りついた大舞台。


コンクール出場を決めた瞬間から、ここに来るまでだって


相当長くていろんなことがあったはずなのに


当日だって何が起こるか分からない。


それがコンクールなんですね。



演奏会と違って、拍手をする人は誰もいなかったけど、


もしも許されるなら、


立ち上がって、一人ひとりに大きな拍手を送りたかった。


「あなたはすごい!ありがとう。これからもがんばって!」


と、声をかけたかった。



今日、審査結果の速報を見たら、


入賞者の中に、彼らの名前はありませんでした。


だけど、この経験は、きっとこの先、彼らの糧になると思います。


ライバルと闘い、自分と闘い、


自分だけではどうすることも出来ないアクシデントと闘い、


演奏の技術とともに、自分自身も強くなっていく


小さなコンテストたちを、


そして、彼らを支え、励ましているご家族を、


心から尊敬します。


みんな、頑張って!

来年もあなた達に会いたいです!



おそらく、会場にいた誰よりも、


気軽に演奏を聴きに行った私達親子。


とても大切なことを教えてもらいました。



ありがとう。