皆さまこんにちは。



9月15日の祝日。


愛知県芸術劇場で行われた牛田智大くんのリサイタルに行ってまいりました。



曲目も新しくなった今期のリサイタル。


皮切りは彼のホームタウンでもある愛知県名古屋市。



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曲目は次のとおり。



♪プロコフィエフ : ピアノソナタ 第7番 

              変ロ長調 op.83「戦争ソナタ」


♪モーツァルト : ソナタ第11番

             イ長調 K.331「トルコ行進曲付」


♪リスト : メフィストワルツ 第1番「村の居酒屋での踊り」



  *  *  *   休  憩  *  *  *



♪ショパン : 12の練習曲 op.10-3「別れの曲」


♪リスト : ラ・カンパネラ


♪ラフマニノフ : ソナタ「第2番 変ロ短調 op.36





6曲の中で、「別れの曲」、「カンパネラ」以外はすべてがこの日初披露。


最初、このプログラムを見た時、


「ん?いつもより曲が少ない?」


という印象を受けたのですが、


これがとんでもない思い違いだったと分かったのは彼の演奏を聴いてから。



今回の記事のタイトル。


私、初めて牛田智大「さん」と書きました。


これ、私にとってはかなりのことです。


本文中は「牛田くん」でいかせてもらいますが・・・(〃∇〃)




今からこのリサイタルのレポートを書いてみようと思いますが、


私の拙い文章力では、今回の彼の凄さをとても伝えきれないことを


最初に申し上げておきます。


              

                m(_ _ )m





当初は行くつもりのなかった愛知のリサイタル。


チケットを取ったのが遅めだったせいで、私の座席は端っこの


ピアニストの背中がよく見える席。


シートに身を沈めて待つ時間。


会場の照明が徐々に落されるにつれ、汗ばんでくる私の手。



拍手の中、登場した牛田くん。


お馴染みのいつもの衣装。


ネクタイの色は落ち着いたブルー。



だけどなんだろう・・・?


いつもと違う。何かが決定的に違う!



まず違うのは髪型。


前髪を右側できちんと分けて、サイドの髪とともに、ぴったりとなでつけている。


だけどもっと違うのは、彼が纏っているオーラ。


微笑みは浮かべているものの、いつもほどの柔らかさはなく、


その表情からは、なぜか「決意」「覚悟」「決別」といった言葉が見てとれる。


銀座のイベントで、初めて白シャツ姿で登場した時は、


急に大人っぽくなった印象を受けたのですが、


この日の彼は、見た目だけではなく、内側から感じる、全く別の種類の


確立した「大人」を感じさせている。




会場全体を見渡して、深々とおじぎをしてピアノの前へ。


そして、なんと!


座ると同時にいきなり弾き始めました。



こんなの初めて・・・。



私のみならず、彼の演奏を知っている人全員が面食らったことと思います。


何かが降りてくるのを待って、丁寧に紡ぎだすような演奏前の静寂に慣れている私にも、これはかなりの衝撃でした。



一体彼に何があったの?



いつもと別人のような近寄りがたい雰囲気に、なぜか不安でトクトクとと高鳴る鼓動・・・。






第二次世界大戦下のロシアの重苦しい雰囲気を反映しているという「戦争ソナタ」。


8月の尼崎のイベントでは、この曲つについて


「昔飼っていたインコのケンカのイメージ」


と言ったそうで、


そのあまりにも無邪気な発想にちょっと拍子抜けしつつ、


世代なのか彼自身の幼さなのか、戦争をインコのケンカでイメージづけするほど


戦争から遠いところにいる彼の天真爛漫さがなんとも好ましく、


彼よりも戦争に近い世代の私たち大人が守らなければいけないものを


教えられたような気がしていました。



それなのに、それなのに・・・。



何?この圧倒的な迫力は!



本当に彼は戦争を知らないの?!と疑いたくなるほど


戦争が落した残酷で重苦しい影を知り尽くしているような、


怖いくらいに鬼気迫る演奏が、いきなり私を打ちのめしました。





5~6月には海外オケとのツアーを成功させ、


今月始めには台湾での堂々の海外デビューを果たした牛田くん。


私達の知らないところで、彼は途方もなく大きな階段を上ったのではないだろうか?



ねえ。今日のあなたは、何を決意しているの?


何に覚悟を決めたの?


そして、一体何に別れを告げたの・・・?





今、私たちの目の前で演奏しているのは、


もはや「牛田くん」でも「ともくん」でもない。


アイドルのように可愛らしい少年ピアニストでもない。



まさに、世界のピアニスト、牛田智大!



パンフレットの写真を見て「うわあ。やっぱり可愛い♪」


と喜んでいた自分がなんだか愚かしい。


「ホームタウンだからリラックスして演奏できるといいな♪」


なんて、あまっちょろいことを考えていた自分が恥ずかしい。




フィニッシュと同時に湧きあがった、割れるような拍手。


自分の受けた衝撃を、今度は拍手で返すとばかりに、力の限りに称賛を贈る聴衆たち。


丁寧にお辞儀をして、ほんの少しだけ、つんのめるようにして舞台袖に入って行った牛田くん。



鳴り止まない拍手。



尋常ではない会場の熱気に、すぐまた戻ってきて、胸に手を当てて再度ご挨拶。



これは、「世界のUSHIDA」誕生の瞬間だったのではないだろうか・・・。


いえ、もう既に登場した時からそうだったのかもしれない・・・。



1曲目の「戦争ソナタ」ですっかり打ちのめされた私。


その後どの曲を聴いても、横っ面を殴られたような衝撃の余韻が


「ぐわーん…ぐわーん…」と、頭の中でこだましているようなありさまでした(T_T)



少ないと思っていた曲数は、今思えば彼の本気の現れだったのではないかと思います。


曲目が少ないとはいえ、「戦争ソナタ」もラフマ、モーツァルトのソナタも各楽章があって、それぞれが十分な長さ。


特にロシア曲はどれもが超難曲。



そして、どの曲も、牛田くんは1000分の1秒だって手を抜きませんでした。


弾き終わった時のおじぎですら、ものすごく心をこめているのが伝わってきました。



彼のすさまじい集中力は、そのうち発火するのでは?と思うほどで、


もしもあと1曲でも増やしていたら、倒れていたのではないかと思います。





続く「モーツァルトソナタ11番」は、演奏前に視線を上げて、いつものように何かを待つ時間。


けれど、ゆったり夢見心地で聴くつもりでいた第1楽章は思っていたよりテンポが速く、



なんか、どこまでも突き放された感・・・ ガックリ




しかし、これ、演奏がよくなかったという意味ではありません。


美しく優しいメロディでありながら、


そこにとろけるような甘さはなく、決然とした美しさを感じさせる。



さっきまでとは全く違う色で会場を染め上げて、またしても私達を驚かせます。


広いホールの隅々まで染みわたるような、なんという澄んだ音!




超超超絶技巧の「メフィストワルツ」。


ものすごい指の動き。指の上で妖精がチラチラと踊り狂っているかのよう。



こんなつかみどころのない曲に、いったいどのように取り組んで、どのように習得したのか・・・。





「別れの曲」。


それはそれは丁寧に、探り出すように最初の1音を紡ぎだしました。


まさに「一音入魂」。





超難曲でありながら、このプログラムの中においては易しくさえ感じるような「カンパネラ」。


・・・と思ったらやっぱり凄い。


最後の方の高音での超高速部分。


隣に座っていた小学校低学年くらいの男の子が、思わず「スゲー!」とため息をもらしました。


今まで何度聴いても涙していたこの曲。


私、初めて気がつきました。


「泣ける」ということは、まだそんな自分に酔っている余裕があったのだと。



いつもは澄んだ水のように感じていたカンパネラ。


だけど今日は、まるで命を削るような牛田くんの渾身の演奏に鳥肌が立ち、


私自身も心がヒリヒリして、涙のかわりに血が流れそう。


痛みを感じるほどのカンパネラ。


弾き終わると、またしても沸き上がる拍手の渦。



おおげさではなく、今回、どの曲もすべて、アンコールを待つ時のような熱を持った拍手でした。


ご本人がそれを一番肌で感じたのでしょう。


そのたびに、一度戻った袖から再び舞台に登場し、


それはそれは真心のこもった挨拶で応えてくれました。





ラストの「ラフマニノフ ソナタ2番」。


舞台袖から登場し、「戦争ソナタ」の時と同じように、


またしても拍手が終わらないうちに弾き始めました。



一体彼の中でどんな変化が起こったのか・・・。


「ぐわーん・・・ぐわーん・・・」の中でぼんやりと考える私。


曲目が発表されてから、一生懸命勉強してきたはずなのに、


そんな私を置いて、100マイル先にいるような、牛田くんの背中・・・。



こんなにも男性的な牛田くんの演奏を聴くのは初めて。


「聴く」というよりも、「目の当たりにする」という感じ。



私達聴衆を寄せ付けないほどの、恐ろしいくらいの集中力。


迷いのない音で、完全に曲を自分のものにして作り出す世界観。



聴衆にまったく媚びることなく(もちろん、彼はいつだって媚びてなどいませんが)


ただ自分の目指す道に向かって突き進んでいくことを決めた、


固い意志を感じるような目の前のピアニストに


畏怖の念を抱いたのは私だけではなかったと思います。



演奏が終わると、またしても湧きあがる怒涛の拍手。


「熱狂」とは、こういうことを言うのだと、初めて知ったような気がします。




放・心・状・態・・・・(TOT)



なんだろう。この喪失感・・・。


7月に発売したCDでは、


「トロイメライ」「乙女の祈り」「英雄ポロネーズ」・・・。


親しみやすい曲のラインナップに


「ファンのみなさまの声を取り入れました」と、


甘い音色と、かっこいい迫力で魅了してくれた牛田くん。


そんなプレゼントを嬉しく受け取った私達。



それなのに・・・それなのに・・・



夢見心地の「トロイメライ」を置き土産みたいに遺して


たった一人で、彼は自ら燃え盛る戦火の中に行ってしまった・・・・。


手の届かない場所に行ってしまった・・・・。



大きな階段を上った牛田くんを目の当たりにした喜び。


そう。喜ばしいことなんだよね、と、自分に言い聞かせながら、


寂しさと嬉しさが交互に去来して、もう、とても言葉にならない・・・。




鳴り止まない拍手に応えて登場した牛田くんが弾いたアンコール曲は「ノクターン OP.9-2」


解き放たれたように、リラックスした様子で牛田くんが弾く優しい音色に



鼻の奥が、つーーーーん!!




ああ。やっぱりここにいてくれたのね。


戦地に行ったきり、二度と戻らないかと思ってた・・・(ノ_・。)



2曲目に弾いたのは、プーランクの「エディットピアフを讃えて」。


昨年9月に初めて行った彼のリサイタルで1度聴いたきりのこの曲を


ぜひもう一度生で聴きたいと切望していた私。



ああ、もうダメ。


涙腺決壊・・・。。゚(T^T)゚。



我慢してもグシュグシュと漏れ出づる鼻水の音・・・。




隣の坊やとお母さんが、


「え?この人泣いてるの?」

「気になるけど、シッカリ見たら失礼よ」


的な様子でソワソワと私を意識してる気配。



・・・気ィ散らしてスンマセン・・・。(T_T)




演奏が終わったタイミングで、家路を急ぐのか、サイン会に並びたいのか、


席をっ立った坊やとお母さん。


私の前を通る瞬間、男の子が珍しい動物でも見るように


私の顔をモロガン見!(←ガン見ポイント?




・・・(//・_・//) ハズー!




タオルで目と鼻をそっと拭ったつもりが、



ヤベッ!コンタクトずれた・・・(+_+)






舞台から姿を消した牛田くん。


これで終わりかと思いきや、やはりただならぬ熱気と手応えを感じたのでしょう。


なんと、3曲目のアンコール!


「乙女の祈り」。



ああ、もう二度と聴けないかと思ってた・・・。


 ・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。



嬉しくて、寂しくて、せつなくて、


涙が溢れてどうしようもない。





タオルでガシガシ顔を拭いたものだから、化粧ははがれて修復不能。


ズレたコンタクトは痛くて仕方ないし、


前の夜、コラーゲンドリンクなんて飲んだ自分がなんだか痛々しいわ(TДT)




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ああ、またしても、さんざんに振り回された名古屋の夜夜の街





サイン会の牛田くん。


なんと、演奏の時とは違う服。


ベストのかわりに白シャツにジャケットという姿。


激しい演奏に汗をかいたため、お召し替えされたのでしょうか(^^)



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ほらほら、いつもより大人っぽいこの感じ、おわかりになりますでしょうか?

(今度はちゃんと撮れた(^O^) )


疲れているはずなのに、いつものように一人ひとりに笑顔で丁寧に応対する牛田くん。


ああもう、本当に頭が下がります。



↓いただいたサイン


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サイン会が終わり、去っていく後姿に「まって!」と声をかける子どもに


振り返って笑顔でピースサインをする牛田くん。


拍手で見送りながら、「ありがとう」という気持ちで胸がいっぱいになる。



でも、今回は、それよりも言いたい言葉がありました。



おめでとう、牛田くん。


うまく説明できないけれど、よく分からないけれど、


ぐーんと伸びた身長以上に、ピアニストとしてのあなたが成長したこと、


それを自分で実感していることがなんだか分かる。



今一度、心からの拍手を送りたい。


ああ、でも、涙が出そう・・・。



では、言います。


牛田くん、おめでとう!おめでとう!!おめでとう!!!