酔いがさめて、うちに帰った男の話 | 馬鹿日報・弐

酔いがさめて、うちに帰った男の話

この日は日中の予定が
なぜか一気に数件なくなったので、
翌日の結婚式の祝儀袋を探しつつ銀座に出て
映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」
を観てきました。
自分的にはかなり良かったです。


大雑把なアウトラインを説明すると、
元戦場カメラマンでライターだった
故・鴨志田穣さん(マンガ家・西原理恵子さんの元夫)
による同名の私小説が原作。

原作では、アルコール依存症だった自身の体験や
入院先で出会った怪しい人々の描写が
時に痛々しく、時にユーモラスに、
そしてこの上なくリアルに描かれています。

しかし映画の方は、原作を下敷きにはしつつも
「毎日かあさん」などで同時期の出来事を描いている
西原理恵子さんの視点や、
(ちなみに精神病棟の患者役で出演。衣装がヒョウ柄…)
あえて登場人物を偽名にしてフィクション化した
東陽一監督の「哲学」みたいなものも
入っている感じでした。

比率で言うと、
鴨志田さん:6/西原さん:3/監督:1
みたいな。


でまあ、自分にとって
マンガや小説を原作にした映画って
95%くらいの確率でハズレるものなんですが、
この映画は珍しく「アタリ」でした。

アルコール依存症の実情といった
キレイ事じゃない部分を直球で描きつつ、
だからこそ浮かび上がる
「家族」や「夫婦」の強さみたいなものに
物凄く引き込まれるものがあり、
観終わった後が清々しい作品だったなあ、と。

つくづく個人的な好みかもしれないけれど、
やっぱ「恋愛」よりは「人間愛」を
描いた作品の方が自分には響きますな。
とかく夫婦役だった浅野忠信・永作博美ご両人の
熱演が素晴らしかったです。


ただ、敢えてひとつ惜しい分があったとすれば、
鴨志田さんは実際に依存症に打ち勝って
(かなり稀なケースだそうです)
「うちに帰った」後に癌で亡くなったわけだけれど、
その「克服しきった」という事実が
映画の中では端折られていたので、
鴨志田さん・西原さんを知らずに観た人には
アル中から生還する大変さが
伝わらないのではないか、という気もしました。



しかしまあ、試写会のチケットを貰った
「ノルウェイの森」を除けば
全然映画館に行かなかった2010年において、
シメとしてはいい作品でした。

来年2月公開の
小泉今日子&永瀬正敏というリアル元夫婦による
元夫婦を描いた「毎日かあさん」も
めちゃめちゃ気になるので、
結局その場で前売り券を購入。

今から楽しみだ。
2011年はもう少したくさん映画を
観られますように……。