ぜねれいしょんを越えて | 馬鹿日報・弐

ぜねれいしょんを越えて

今日はお昼から新宿へ。公開初日に席が取れなかった
「サマーウォーズ」を観に行きました。

……が、またしても日中は満席。
だってもう公開から1ヶ月とか経ってんじゃん。
そんなに人気なら渋谷とか銀座とかでもやってくれー!

なもんで、明日との予定を入れ替えにして
渋谷に移動して「色即ぜねれいしょん」を観て来ました。
時間調べないで行ったけど、5分前に滑り込みセーフ。

いやー、観といてよかった。
なんか心のトゲが取れる感じの、いい映画でした。

ストーリーを大雑把に言うと、1974年の京都が舞台で、
ギターが趣味のモテない文科系男子高校生が、失恋をきっかけに
仲間と3人で夏休みに「フリーセックスの巣窟」と聞いた島の
ユースホステルに向かい、そこでの出会いなどを機に少しだけ成長して、
今まで人前では一切演奏しなかった自作の曲を携え
学園祭のステージに一人で立つことを決意する…というものです。

映画全体を通して、派手な事件も無いし派手な演出も無い。
でも高校1年生の男子にしてみれば一生ものの出来事ばかり。
そんなこんなを経て主人公は派手にジャンプアップしなくても、
ほんの少しずつだけど、大人になって行く。
(「黒猫チェルシー」ボーカル渡辺大和演じる主人公が超好感触!)
その主張し過ぎない匙加減が、なんだかすごくいいんです。

でまあそのへんを象徴しているのが
ヒロイン「オリーブ」役の臼田あさ美で、
ほんの数度登場して主人公に大きな印象を残しつつ
(+ちょこっと主人公をステップアップさせつつ)も
深入りはせず、通り抜けるように消えてしまう。
病弱でもなんでもない健康的エロも担当の元気娘キャラなのに、
どこか儚い感じがあるのがこれまた凄くいいんです。
予告や雑誌の写真見て期待大だったんだけど、
めっちゃ可愛かったなあ…。

自分のトシからすれば高校1年生もハタチ前後の女子大生も
(年齢的には)コドモなんだけれど、
主人公からすればヒロインは「大人の女」。
そんなヒロインに甘えられ翻弄され、っていう感じが
「ザ・青春」って感じでいいんです。

また、主人公は家庭環境について
「基本的に両親とはうまく行っていて、特に反抗する理由もない」
と思っていて(堀ちえみ&リリー・フランキー演じる両親がナイスキャラ)、
そこに却って葛藤を感じてしまう点が
自分とわりと似ていて、すごく共感できてよかったです。
さすがにうちの父親は夜家出る時にデート資金(食事+宿泊費)を
手渡してくれたりはしませんでしたけど(笑)。

そんなこんなで自分にしてみると超直球の青春映画だったのですが、
パンフには「今流行りの青春映画とはひと味違う作品だ」との記述。
「今流行り」のものとして挙げられていたのは
「クローズZERO」「ROOKIES」「ドロップ」など。
…俺も所属はサッカー部だったけれど、実態はモテない側の文科系。
ヤンキー映画にリアルやファンタジーを感じるよりは
ず~っと「こっち」側の人間なんだよなと再認識しました。

その「こっち」側の男子高校生のなんともやり場の無い気持ちが
実によく描かれています。さすがはDTの神、みうらじゅん!
それに対して女性客の方が圧倒的に多かったのはなんか嬉しかったです。
みんなもっと「男の子」の気持ちを理解して
弄んだりしないでくれると嬉しいなあ、などと思ったり…。

それとまあ、やっぱ男女問わず10代の若い子にも観てほしいなと。
ヤンキー・体育会系、いわゆる「あっち」側の人間はいいとして
「こっち」側の人間にはきっと共感できるものがあると思うので。
やっぱ二次元とか追っかけるよりは、ねえ。

自分の高校時代はかなり鬱屈したものだったけれど、
今日この映画を観ながらちょっと思い返したら
中学時代の同級生に学園祭の招待状を送ったら来てくれたので
(映画と全く一緒じゃん!)サッカーの対外試合で
必死でボール追っかけていたのを思い出しました。
それで「自分は自分なりにそーゆーことしてたんだなあ」と
にやけてしまいました。仮に今似たようなことをしても
そこまでドキドキしたりしないだろうし、
十代の時に十代なりのことをした、というのは
今になって振り返れば間違いなくいい思い出ですよね。

そろそろ締め。そりゃもちろん映画だから
「物語」的な出来事はちょいちょいあるけれど、
(高校時代にあんな美人のおねーさんと出会ったりしてねーし)
なんか根底にある心や感情のあり方が凄くリアルで
共鳴できる映画でした。
役者としては一切登場せず、監督に徹した
田口トモロヲ氏による品のある演出は素晴らしいです!
感想が長くなったのは良かった証拠!