赤いブレスレットを、ずっと持っていた。
母からもらったのは、たぶん25年くらい前。
でも、ほとんど着けたことがなかった。
赤は少し勇気がいる色で、
当時の私にはうまく使いこなせなかった。
「特別な日に」と思いながら、
気づけば時間だけが過ぎていた。
先日、何気なく裏の刻印を見た。
1983。
その数字を見た瞬間、
少しだけ息が止まった。
それは、このブレスレットが作られた年。
そして、私が生まれた年でもあった。
40年前。
母が選んだ赤。
同じ年に、私は生まれた。
偶然かもしれない。
でも、少しだけ運命みたいだと思った。
これは、きっと高価なものではない。
メッキかもしれない。
でも、このブレスレットには
確かに時間が宿っている。
母の時間。
そして、私の時間。
大切にする、ということは
しまっておくことじゃないのかもしれない。
これからは、ちゃんと着けようと思う。
白いシャツに。
デニムに。
いつもの日常に。
そして先日、
このブレスレットを初めて腕に着けてみた。
赤が似合うかどうかよりも、
この物語を身につけていることのほうが、
きっと大事だから。
Chanelのブレスレット。
刻まれていたのは、1983。

