9月の某日、雨の降る中、私は奈良盆地の中心部を流れる小さな農業用水路に向かって傘をさしながら歩いていた。

 

情報によると、この辺りのヨシノボリはシマヒレヨシノボリだそうなので、以前他の魚を探していてヨシノボリの存在を確認していたこの水路で、シマヒレヨシノボリを狙ってみることにした。

 

ところが到着してみると、落胆せざるをえなかった。そこには泥底の生物に溢れていた環境はすでになくなっていた。泥が全て洗い流されて浅い水が速く流れる、ザリガニだけがいる水路になってしまっていた。

 

仕方ないので上流の方へ行ってみる。小堰や水門などがあったので水深や流れは問題なくなったが、雨で増水して濁っていたので何も見えず、竿を出すのがためらわれた。

 

そこでさらに道路を渡って溜池の手前を流れる水路の角へ行ってみた。やはり濁っていて何も見えなかったが、水深はちょうどよく、また角で流れが巻いていたので、キヂの太虫をカットしてブラインドで入れてみた。

 

すると少ししてアタリがあり、ヨシノボリが上がってきた。

 

手に取ってよく見る。小さな個体だが成熟したオスの色彩をまとっていた。第一背びれが伸びておらず、またその他の特徴からも、確かにシマヒレヨシノボリだった。情報提供者の方には感謝に堪えない。

 

初めて釣ったシマヒレヨシノボリ

 

初シマヒレヨシノボリの俯瞰

 

初シマヒレヨシノボリの腹側

 

初シマヒレヨシノボリの別影

 

シマヒレヨシノボリは以前はトウヨシノボリ縞鰭型と呼ばれていたが、2010年の論文により新種となった。この論文の中での再定義による主な識別点は、第一背びれが伸びず、台形か将棋駒型で、尾びれの基底上部に橙色の斑がなく、尾びれに縞模様がありオスではさらに赤色系の斑が下部にあり、オスでは尻びれに赤色系の縦帯がある点。