―白と黒のその先へ

① 世界への憧れ


僕は、ずっとこの世界に憧れていた。

そこにはたくさんの人がいて、
それぞれが違う想いを抱いて生きている。

ポケモンと人が出会い、
共に歩き、共に戦い、
時には傷つけ合いながらも、また誰かと繋がっていく。

僕には、それが眩しく見えていた。

この世界には、確かに価値観がある。

正しいこと。
間違っていること。
守るべきもの。
変えなければならないもの。

そして――
正義と悪。

僕は、そんな世界のあり方そのものに憧れていた。

② 当たり前だった価値観


僕はそういう世界を見て育った。

正義があれば悪がある。

悪があるからこそ、正義がある。

だから、間違ったものは正されるべきだと思っていた。

それは僕にとって、疑う必要すらないものだった。

世界とは、そういうものなのだと思っていた。

そして僕も、いつかこの世界の中で、
自分の正しいと思うものを見つけられる。

そう信じていた。

③ 世界を知る旅


でも、実際に世界を歩いてみると――
少しずつ違和感を覚えるようになった。

人とポケモン。
トレーナーとポケモン。
正義と悪。

僕が簡単に分けていたものの中には、
そんな言葉だけでは語れないものがたくさんあった。

誰かを守るために、誰かを傷つける。

自分にとって正しいことが、
別の誰かにとっては間違っている。

そして――
「悪」と呼ばれている者たちにも、
彼らなりの理由がある。

④ 生まれた疑念


そこで初めて、僕は疑った。

僕が「悪」と決めているもの。 

それを「悪」だと決めているのは、一体誰なんだ?

僕自身か?
それとも、僕が生きてきたこの世界か?

僕はこの世界に憧れていた。

だからこそ、
その世界の価値観を疑うことが怖かった。

もし、この世界が間違っているのなら。

もし、僕が信じてきたものが間違っているのなら。 

僕が憧れていたものは、一体なんだったんだ?

⑤ 正義と悪への疑問


正義から見れば、悪は悪だ。 

けれど――
悪と呼ばれる者たちは、
自分が悪だと思って戦っているのだろうか。 

きっと違う。

彼らには彼らの正義がある。

守りたいものがあって、
譲れないものがあって、
それを正しいと信じている。

ならば僕たちは、
ただ違う正義を信じて、
互いを悪と呼んでいるだけなのではないか。

そう考えると、
今まで当たり前だった世界が分からなくなった。

⑥ 白と黒の崩壊


白か黒か。
正義か悪か。

本当に世界は、
そんな簡単に分けられるものなのだろうか。

白と黒の間には、
もっとたくさんの色があるんじゃないか。

グレーがあってもいい。

答えを一つに決めなくてもいい。

でも――
今の僕には、まだ分からない。

だからこそ、この戦いで確かめる。 

相手を倒すためだけじゃない。

自分自身が、何を信じるのかを知るために。

⑦ 決戦


戦闘中、Nの中ではずっと問いが続いている。

僕は何を信じている?
正義とは何だ?
悪とは何だ?

そして――
この世界を、僕はどう見ればいい?
そして最後の一撃。

⑧ 決戦後――答えは「否定」ではない


……負けた。

でも、不思議だった。 

世界が壊れたようには感じなかった。

むしろ――
今まで見えていなかったものが、
少しだけ見えた気がした。

僕は、この世界を否定したかったわけじゃない。

僕はこの世界に憧れていた。

だからこそ、
その世界をもっと知りたかったんだ。

正義も。
悪も。
人も。
ポケモンも。

そのどちらかに決めつけるのではなく、
その間にあるものまで見つめたかった。

⑨ Nが見つけた「答え」


僕は、答えを見つけた。

……いや。

正確には、
「答えを一つに決めなくてもいい」ということを知った。

正義と悪。
白と黒。 

そのどちらかを選ばなければならないわけじゃない。

誰かの正義を理解したからといって、
それを受け入れなければならないわけでもない。

自分の信じるものを持ちながら、
相手の信じるものを知ることもできる。

だから僕は、もう――

この世界を、白と黒だけでは見ない。

⑩ それでもボクはこの世界が好きだ


この世界には、きっと答えなんて一つじゃない。

それでも僕は、この世界を知りたい。

もっと人を知りたい。

もっとポケモンを知りたい。

そして――
もっと、この世界そのものを知りたい。 

白でもない。
黒でもない。

その間にある、無数の色を。

それが、僕がこの戦いで見つけたものだ。 

……さあ、行こう。

まだ僕は、この世界のことを何も知らない。

だからこそ、もっと見てみたい。

この世界が、どんな色をしているのかを。

 あとがき

Nという人物を描くにあたって、最初に考えたのは、
「彼は本当に、この世界を否定したかったのだろうか」ということでした。
Nは、自分が信じてきたものを壊したかったわけではない。
むしろ、彼はその世界に憧れていたのだと思います。
だからこそ、旅の中で出会った人々やポケモン、そして様々な出来事によって、
これまで信じていた「正しさ」に少しずつ疑問を抱いていく。
正義と悪。
白と黒。
けれど、誰かにとっての正義が、別の誰かにとっての悪になることもある。
では、本当にどちらか一方だけが正しいのだろうか。
そんな疑問を抱えたNが、最後に出した答えは、
「これが正解だ」というものではありません。
分からないからこそ、もっと知りたい。
その気持ちこそが、Nにとっての新しい一歩なのではないかと思い、この物語を書きました。
世界は、白と黒だけではない。
その間には、数え切れないほどの色がある。
そして、その色を知っていくことこそが、
「世界を理解する」ということなのかもしれません。
この物語を読み終えたあと、もし少しでも
「自分が見ている世界は、本当に自分が思っている通りなのだろうか」
と考えてもらえたなら、嬉しく思います。
最後に。
Nは、答えを見つけたわけではありません。
ただ、答えを探し続けてもいいのだと知った。
そんな彼のこれからを、僕自身も見てみたいと思っています。
――世界には、まだ僕たちの知らない色がある。