夏休み自由研究の巻

 

昨年箱根富士屋ホテルの待合室で観たモーリス・ドニ(ナビ派のメンバー)の「アルミードの園」。

えー?これドニ⁉️((((;゚Д゚)))))))ドニだあああ!

 

モーリス・ドニとは?!

1870年フランス・グランヴィルで生まれ、89年にポール・セリュジエ、エドゥアール・ヴュイヤールやヴァロットンらとともに結成した「ナビ派」を代表するひとり。(ナビ派はゴッホやゴーギャンに影響を受けた。)

 

 

三菱一号館美術館で開催されたヴァロットンの版画展にたった一枚展示されていた絵がとても好みで、好きになった画家。調べてみたら81年に初めての「モーリス・ドニ展」が国立西洋美術館および京都国立近代美術館を巡回。2017年には三菱一号館美術館で「オルセーのナビ派展:美の預言者たち―ささやきとざわめき」、2020年に「画家が観たこども展ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン」で紹介されたらしいが、どれも観ていない!!(2023年のブルゴーニュ展に素晴らしいのが3枚きていて感動したのだった。それが初めて見たドニの油絵✨)

 

なんと・・・個人の画集がない!!

古い図録を買ったり、図書館の古い絵画全集を探したり‥。検索かけたけど、ネットにもこの絵のことは箱根富士屋ホテルにある絵としかわからない。

 

題名の「アルミードの園」ってなんだろ?ホテルには絵の説明はない‥何を描いてるのかだけでも知りたい!と調べ始めたら止まらない!

 

アルミードがリュリ作曲フランス・バロック・オペラの演目で、この絵はその中の一場面を描いたものだと突き止めた🙌(2022年に上演。)

 

 

さて、オペラ「アルミード」の内容は・・

 

ダマスカスと十字軍との戦いのあった時代の物語。

ダマスカスの王女であり魔女のアルミードは十字軍の戦士を魔力で捕虜に。ダマスカスは勝利に酔いしれ歌い踊るが、アルミードの心は晴れない。戦士ルノーだけはアルミードに屈しなかったのだから。

ダマスカスの王がアルミードに結婚を勧めるが、アルミードはルノーを打ち倒す男でなければ結婚はしないと答える。勝利の宴の最中、ルノーが捕虜を解放したという知らせが届く。

 

場面はかわり、小川の流れる美しい野原に佇むルノー。いつしか甘美な音楽に誘われ、うつらうつらと眠りへと。美しい水の精や羊飼いたちの姿をした悪霊が、「愛を楽しもう」とささやき、ルノーを花輪で縛り付ける。

そこへ短剣を手にしたアルミードが現れ、「私の怒りを思い知るがよい!」とルノーを刺し殺そうとするが、一目で彼に心を奪われ恋に落ちてしまう。

 

悪霊たちよ、西風に姿を変えよ!と命じ、砂漠の宮殿へ彼を連れてゆく。

 

魔法の力でルノーを虜にしたことを恥じるアルミードは、地獄から「憎悪」を呼び出し、心の中に芽生えたルノーへの愛を追い出してもらおうとするが、ルノーへの愛を選び、「憎悪」は姿を消してしまう。

 

アルミードの魔法の宮殿で、魔法にかけられたルノーはアルミードへの愛を告げ、2人の愛は成就したかにみえたが、アルミードが留守の合間に、ルノーの仲間の騎士が現れ、魔法を解き、戻って来たアルミードに「私は愛よりも栄光に従う」と告げて去っていく。

 

ひとり残されたアルミードは絶望し復讐を誓う。悪霊達は砂漠の宮殿を破壊し、アルミードは空飛ぶ馬車に乗ってルノーを追いかける。

 

 

アルミードの物語を知って再び、このドニの絵をよくよく眺めてみると・・

右下の横たわる男性は十字軍の騎士の鎧に身を包み、右手には剣、左手には盾。座り込んで肩ひじで頬杖をついている黒髪の女性がアルミード。右手にハンカチ持っているけれどこれは?魔法をかけているところ?ただ仰いであげて目覚めるように促してるところ・・?

 

この美しい女性たちは、水の精に化けた悪霊(悪魔)達・・!よく見ると、右側の水の精は金髪がうねって赤くなっていて、少し正体を現しているようにも見える。二人とも顔つきが厳しい~!!あんな男連れてきて全くうちの主人は甘いわい、とでもいうような?はよ殺しなされ?だろうか。すごく不審な物を視る眼付。

 

この笑いさざめきながらやってくる女性達も悪霊かぁ~・・!!ど~やって殺しちゃおっか♪などと物騒な話をしてたりして。

 

もちろん画面左側に佇む美しい水の精&キューピットちゃんも悪霊ってことに・・・。こんな美しいのに!

緑とピンクの薔薇、美しい色彩。夢のような園。砂漠にある宮殿ってことになるけれど、魔法の力で作られている設定?

 

・・・惜しむらくは、ずっと飾られていたが為に、かなり状態が・・💦(くすんだ色、ひび割れ)

 

ブルゴーニュ展で初めて目にしたドニの油絵は、光り輝くような明るさで目を見張るようだった。

描かれたばかりの頃に今すぐ戻ってこの絵を見たら、華やかで鮮やかで、眩しいような明るい一枚だったはず。

 

 

クラシックな待合室の雰囲気にぴったりと合っていて、しばし佇んで絵を眺めた思い出。

 

 

さらに!大正13年5月に朝日新聞社が取材した仏展の図録にこの絵が出展されていることまでたどり着けて達成感・・!

国会図書館に登録して資料を閲覧。(行って調べたかったけどあまりの暑さに断念し、ネットで)

仏展図録

 

ふぉおおおお‥まさにまさにこの絵が!展示されとる😭✨✨嬉しい〜〜〜✨✨大興奮✨✨

仏展の図録を見るとロダンから始まり、モネやゴーギャン、ルノワール、コロー、ドガ、マティス、ユトリロ、ブールデル‥そうそうたるメンバー。(表記は現在と少し違う人も)

 

この展示で箱根富士屋ホテルのオーナーさんがドニの絵を見染めたのかな、湯浴みしているような絵が「衛生的湯治」を掲げて大改修を終えたホテルにぴったりと思ったんだろうか?本館の隣に西洋館を建て、寛ぐ為の待合室が必要になり、以前は6部屋の宿泊室だった部分を待合室に改修したのは1906年で、この絵は18年後に富士屋ホテルに来てるはず。

仏展のあと、すぐ売れてずっとここにあるから、あまり知られないままなのかなぁ。

 

大正13年、西暦だと1924年。ちょうど100年前の出来事。

 

柳宗悦先生が日本に初めてやってきたロダンの彫刻をその手に抱いた年が1911年。雑誌白樺で様々な西洋の絵画や彫刻を紹介し始めてから十数年経って、展示会が開催されるようになった時代なんだろうなー。(柳先生はちょうど朝鮮民族美術館を設立した年なので、見に行ってなさそう。)

 

などなど‥思い馳せているとあっという間に時間が溶けてしまう。

 

暑さに弱い私は、必要最小限の外出に留めて、絶賛夏休み自由研究のまとめ中。こういう夏休みもなかなかいい。

 

 

 

 

オペラ「アルミード」解説↓1時間以上あるので飛ばしつつ、「アルミード」の内容を確かめた。ご興味のある方はどうぞ❤

 

 

な、なんと、夏休み自由研究をまとめていたら、ドニの巡回展をたった今知って大興奮!キャ~( ;∀;)

 

「本展は、ナビ派の収集で知られる新潟県立近代美術館と日本洋画研究に力を入れている久留米市美術館の共同企画。2会場のみの開催です。モーリス・ドニと日本に焦点を当てた展覧会は国内で初めての試みです。」とのこと!(サイトより)

 

巡回展が新潟と福岡のみ・・。これは新潟県立近代美術館へ早々に行く予定を立てなければ・・!

この絵はブルターニュ展に飾られていたもの↑また会えるのは嬉しい。