法然と極楽浄土展へ。

 

 

東京国立博物館平成館にて。

 

 

「南無阿弥陀仏」と唱えることによって誰もが等しく阿弥陀仏に救われ、極楽浄土に往生することを説き、浄土宗を開いた法然(1133~1212)。

 

開祖当時から現代に至るまでのその教えがどうやって伝えられてきたかを辿る長い長い旅のような展示だった。

 

 

そういえば、実家は浄土真宗だった(はず)だが、檀家でもなく、特に熱心でもなく仏壇すらない。

「葬式の時の坊さんは浄土真宗で」くらいの、お正月は神社でお詣り程度のものだった。

 

浄土宗も浄土真宗もよくわからないまま。

 

法然9歳の頃、美作国の押領使であった父、漆間時国(うるまときくに)は上司でもあった明石の手の賊に襲撃され命を落とす。

(押領使とは地方の治安維持をになう役職で、今でいう警察署長のようなものだそう)

今わの際に、敵を恨まずに仏門に入って菩提を弔うようにとの遺言を受け、法然は仏門へ。

 

「父を討った敵を恨んではならぬ。お前が敵に復讐すれば、今度はその子がまた、お前を怨みに思って復讐するだろう。
そうなれば、この世は永遠に怨みが尽きることがない。」

 

音声ガイドから流れてくる遺言にしょっぱなから心揺り動かされる・・・。その当時に敵討ちではなく、怨みを永遠に繋がないことを望む人がいたのか。(しかも松本幸四郎さんの声で!)

 

仏門に入ってからも、己の私怨に燃える想いに翻弄され悩む姿は1000年以上の時を越えて、法然をリアルに生きる人にしてみせた。

(そりゃそ~~だよ~~・・父親の敵をそう簡単に許せるわけないじゃん・・・!!グッときすぎてしばらく立ち尽くしてしまう。)

 

 

その彼がようやくつかんだ南無阿弥陀仏。

それが彼の救いになったのだなぁ・・・。

 

南無阿弥陀仏と唱える、ただそれだけで救われる。

民藝運動の柳宗悦先生が到達した、美が人を救いうる、という概念と限りなく近い。単純でわかりやすい救いへの道。

柳先生の生きていた時代には、南無阿弥陀仏だけでは救いきれない複雑な社会になっていたのだろうな、などとも考える。

 

 

 

 

京都・光明寺 二河白道図 鎌倉時代13世紀

 

 

左に火の池(怨み・憎しみ)右には水の池(執着)その合間にある細い白い道が清浄な心の道で、極楽に続いている。

 

火は燃えるような怒り、憎しみ。執着もまた煩悩。その池にはまらずまっすぐに白い道を突き進めば極楽が待っている。

法然の抱えていた燃えるような憎しみや哀しみ、それを救った仏の道。そんなことを考えながら、仏教画を見ていると、しみじみと心に染み入るものがあった。

 

 

 

 

看板にも使われている、知恩院の阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)は修理後初公開。

気の遠くなるような手間暇と時間をかけて修理された早来迎はなめらかで見やすく、この状態にするまでにどれだけ・・?

こんな風に華やかに賑やかに、疾く迎えに来ていただけるのであれば、死への恐怖も薄らぐ。

 

 

 

香川・法然寺の仏涅槃像(一部)江戸時代17世紀

コウモリとカタツムリまでいる!

 

・・牙と耳とふさふさのしっぽがあるけど・・亀?!

 

仏陀の死を嘆き悲しむ人々。

 

推しが・・死んだ・・と倒れ込む気持ちわかりみが深い!わかるよ~!身体に全く力がはいらない、地面にめりこんでいきそうな感じがよく出てるっ!(オタクよくこうなる。タイバニ2最終話を観終わった時の私、この状態のまま一か月。虎徹さん死んでないけど・・。)

 

おだやかなお顔のイケメンなのに、頭に載せてるしかめ面の龍が可愛くて、なんだかユーモラス。龍のお鬚くるくる!

 

 

猫だけ仏の方を見ていない・・!くすっと笑ってしまった。これは、敢えて・・?中の人、猫好きの方?

迫力ある会場。

 

中々に濃い展示で、常設展も観ようと中に入ったけれど朦朧としてきてしまい、諦めた・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お二人の音声ガイドさすがでした✨

 

会期は6月9日(日)まで

 

和の展覧会も行ってみよう!シリーズ 

 

「ほとけの国の美術」で目が離せなかった修復作業の映像が今回の早来迎を観た時に思い出された。

あんな風に丁寧に丁寧に修復されたのだろうと思うと、なんだか更に尊くて、以前とは違う気持ちで見ている自分に気づく。昨年までの自分だったら、行かなかった。わからなくてもいいから、観に行って見聞を広めることも大切なんだな、と実感。一つの展覧会がまた次へと繋がっていく。

作品に揺さぶられて、ぎゅっと入り込むようにはまだならないけれど。そうなっていくまでの下準備段階だろうか。今回は音声ガイドで語られる物語にグッときたから、歴史とその時代に生きた人々がもっと身近になったなら変わっていくのだろう。どう変わっていくのかも楽しみ。

 

「ほとけの国の美術」展示の感想はこちら↓