フランク・ロイド・ライト世界を結ぶ建築展@パナソニック汐留ミュージアムへ。

 

 

 


ライトの建築の内側はシンプルな木と幾何学模様のステンドグラス、自然の中に調和した平面に広がる建物‥今で言う「和モダン」だなぁと思っていたら、さもありなん。ライトは広重などの浮世絵を蒐集し、アメリカで何度も浮世絵展を開催し、浮世絵をテーマに本も出版。ディーラーでもあったそうだ。

 

あれだけの人がこんなにものめりこむ浮世絵の魅力。(ちょうど時代はジャポニズム旋風でもあったけれど。)

崖の上の建物の構想は、浮世絵に描かれた建物の構図そのままだったり!

無駄なものをことごとく排除し、シンプルに、その土地の地形や樹々と共生するようなデザインは、ジャポニズムの影響があったとは驚き。
会場には何枚か状態のよい美しい浮世絵も。

 


ウィンズロー邸イリノイ州リパーフォレスト1893~1894年  歌川広重 名所江戸百景真間の紅葉 手古那の社継はし

(チラシより)


ライトの描いた建築物は、樹々や草花の中に生きているように見える。



彼が設計した帝国ホテルは、建物も内装も机や椅子、照明、食器に至るまでライトデザイン。総合芸術だったのだなぁ。しかしながら、彼はそれまでここまで大きな設計を受注していなかったわけで‥驚くばかり。

 


明治村に移設された中央玄関↑

 

ステンドグラスが会場にいくつか飾られており、照明が当たって床に影が出来ていた。家の中にいたら、時間の移り変わりとともにこの影も楽しめたのだな、としばし見惚れる。

 

椅子や照明も間近で。椅子は本当になんともいえない美しさ。

 


会場にライトのインタビュー動画(10分)が流れており、五回見直したのだけれど、彼の提唱した「有機的建築」について、が難しくて、理解にほど遠い。

有機建築とは内から外への建築であり、完一的。
有機的organicとは哲学的な意味での「実体」を意味し、全体が部分、部分が全体であるように素材の本質が存在の目的となる。

哲学で、思想。

 

彼の住居でもあるタリアセンについて、彼自身の言葉で語る姿。

 

彼の祖父は帽子職人で伝道師でもあるウェールズの移民。タリアセンというウェールズ語の吟遊詩人の名をつける。

 

タリアセンは丘の途中に眉のように建てられている。「頂上に建てたら丘がなくなるけれど、丘の中腹に建てれば、高台があなたのものになる。」

 

寒い冬には氷柱がさがり、春や夏には緑なす丘に眉のように建つあたたかな茶色の建物。彼の人生の愛と最大の悲劇とその後の精力的な人生を駆け抜けた場所。



きっと実際に彼の設計した建物を体験したら彼の有機的建築の思想が理解できるのかもしれない。
土地や自然と一体となり、あたかもそこから自然に生えて存在しているような、そんな建物。落水荘のような・・。

 

落水荘
 



展示では実現に至らなかった構想も展示されており、近未来予想図のようで驚く。

ライトのブロードエーカー・シティ構想をCGアニメーションにして会場で流していた。

 

一時期終わった人、過去の建築家とされながら、不死鳥のように60代以降に沢山の代表的な建築を設計し、91で亡くなる直前までグッゲンハイム美術館の工事に携わっていたライト。エネルギー溢れる彼の建築の洪水に押し流されそう。

ジョンソンアンドジョンソンの社屋。ナウシカ!と思ってしまった。結晶化した白い樹々が乱立する場面の。こんな不思議な建物の構想、どうやって???



予習復習必須‥。行きたいところが倍増する展示。

日曜だったからかとても混んでいて、土日祝日の入場は時間指定制。じっくりと資料を読んでは考えているような人ばかりで(建築関係?)列が動かない・・。ゆっくり回ってまた戻って観ている人も多い印象。

2024年1月10日〜3月10日

 

 

明治村に移設された帝国ホテル、いつか見に行かねば、と決意を新たに。ほぼアメリカにしか現存していないライトの設計した建物だけれど、日本には帝国ホテル中央玄関、自由学園明日香館、そして芦屋ヨドコウ迎賓館がある。日本ならば行こうと思えばいつか行ける。いつか、なるべく早くに。