ジョセフ・コーネル 箱の中のユートピア (著:デボラ・ソロモン)読了。

 

 

 

軽井沢の現代アートミュージアムで、作品と映像に出会った。草間弥生が若い頃惚れ込まれて付き合ってた人だよなー、確か‥くらいの認識。

「箱」よりも、映像のコラージュとも言うべき様々な古い映画フィルムをつなぎ合わせた実験映像に惹きつけられた。

会場で流れていたThe Midnight Party↑



脈絡もなく物語もないのに強烈で、つい何度も観てしまった。何度観ても意味は掴めない。次々と繰り広げられる映像の中に身体が入り込む。

シュールレアリスムの先駆け。後のアーティストに多大な影響を与え、コーネルの作品にインスパイアされた作品や小説があるそうだ。

 

この「箱」は特に好きだと思った↑箱の中を球が転がっていく。箱の中の街を通っていくような。これは箱の虜になってしまうのもわかる。



その後、DIC川村記念美術館でも作品と出逢った。

(DIC川村記念美術館のサイトよりお借りしました↑)

 

 

一体どんな人だったのか知りたくなって読み始めてみたところ、DIC川村記念美術館にあったコーネルのコレクションのうち一点が、本の表紙の作品だったと気づいて今頃興奮中。

約500頁もあり、ところどころ飛ばし読み。時々いたたまれなくなる。

人付き合いが悪く、孤独で、アーティストと呼ばれることを嫌い、脳性麻痺の弟を愛し長く面倒を見て、成人した女性とはうまく付き合えず、少女に憧れを抱き‥
自らの人生も小さな箱の中にいれているような人生。

箱の中は時が止まったような広い世界。

草間弥生女史との出会いやお付き合いやその他のお付き合いもかなり具体的に公表されていて、こんなことも死後公表されちゃうのー?!とドギマギ。

伝記の冒頭は、コーネルが地元のレストランで紅茶とチェリーパイを食べながら、前屈みに本に向かい、ショパンやゲーテなどの評伝を読んでいたエピソードから始まる。

 

ジョゼフ・コーネルがいつも読んでいたのは伝記で、それは死者との語らいだった、という記述も忘れられない。現実の人付き合いは苦手でも、伝記の中の死者とならいくらでも語り合えるのだから。それはまさに自分にも言えることで・・。

「コーネルは、まさか自分のことが伝記になろうとは、そして、誰かがどこかのコーヒーショップのテーブルで自分についての本を開くことになろうとは、思いもよらなかったろう。」

まさに!今!私がそれやってるけど?!と、ぎょっとして一瞬本を閉じた。冒頭の記述に続き、これはもう覗き見がバレたような気恥しさ。

実験映像がいくつかYouTubeにアップされており、久々に見直す。彼の人生を知ってからMidnight Partyを見ると、なぜこのフィルムを選んだか納得してしまったりして・・。(白馬に乗った半裸に見える髪の長い美少女とか‥。あのフィルムの中で一番印象に残っている美しさ。流石・・。)


 

 

 

 

 

 

 

動きのある箱の作品を見ていて、ムットーニの作品を思い出した。あの箱の中に不可思議な世界が繰り広げられていく様。