学校で教えない日本人の知恵 | 今だから話せるウルトラクイズ裏話

今だから話せるウルトラクイズ裏話

17年にわたって放送された「アメリカ横断ウルトラクイズ」。構成作家として最初から最後まで関わってきました。放送出来なかったエピソードや裏話を思い出すままに綴っていこうと思います。

メリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題を作るクイズ作家の皆さんに良く注文していた事があります。
それは日本に古くから伝わる習慣、言葉、食べ物など、日本の伝統的な事柄から問題を考えて欲しい、という事でした。
つまり、日本人なら当然知っていて欲しい常識問題が、欲しかったのです。
昔の日本人は、子供の頃に両親やお爺ちゃん、お婆ちゃんにいろんな話を聞かされ、一般常識を身に付けていました。
しかし、戦後の何時の頃からか、常識は学校の先生に任せて、家庭での教育がおろそかになるような傾向がありました。
その結果、非常識な人間が増え、社会問題になるような事が多くなり、マスコミはその都度、学校や教育制度を批判したりして片付ようとしていました。
別に、社会批判をする訳では有りませんが、我々は日本人なら最低知っていて欲しい常識をクイズ問題として取り上げたかったのです。

この種の問題は、家族でテレビを見ていると、お爺ちゃんやお婆ちゃんが、積極的に参加出来るし、「お婆ちゃんすごいね」と、若い者にお年寄りを見直させるきっかけになります。
ウルトラクイズの視聴者対象は、老若男女全てですから、家族全員が参加出来る問題を作る必要があったのです。
例えば第14回の問題から、幾つか選んでご紹介しましょう。

・諺の問題。「情けは人の為ならず」。ではこの情けは誰のため?

情けは


・自分

解説
この問題は、誤解されて解釈される代表的な諺となっています。情けをかけると、その人のためにならないと新解釈が正しいと思っている人が多いのだそうです。しかし、本来の諺は、かけた情けが巡り巡って自分に戻って来るという意味で、日本人なら正しい解釈を知るべきでしょう。

また、同じ14回にこのような問題が有りました。

・スルメは「スル」というのを嫌って「アタリメ」と言いますが、同じ発想から「有の実」と呼ばれる果物は?

あたりめ


・梨

解説
梨は「無し」に通ずるというので嫌われました。「有の実」という表現の起源は古く、平安時代の女房言葉にも出てくるのだそうです。日本人に古くから伝わった知恵ですね。
こうした知識こそ、本来のクイズ問題に相応しいと考え、作家の皆さんに注文していました。
しかし、常識問題は知っている人には「易し過ぎる」という反発もあります。その結果、クイズ問題会議で「没」という非情な罵声を浴びる事もあり、採用されるまでが狭き門だったのも事実でした。