アメリカ横断ウルトラ・クイズでは、クイズに敗れた挑戦者が罰ゲームを受ける、というルールが有りました。
クイズに挑戦するだけで、アメリカまで旅をしているのだから、視聴者から見ればうらやましい存在です。
「巧い事やりやがって!」
という気持ちもあるのでしょう。
そうなると焼き餅的な感情が生まれるのが人情というものでしょう。
敗者に与える罰ゲームが厳しいほど、視聴者は喜ぶという現象が起こりました。
だから、我々番組の構成者にはあの手、この手で厳しい罰ゲームを考えるようにとの注文が来ました。
ところで罰ゲームは、受ける人は大変ですが、それと同じく撮影するロケ・チームにとっても同じくらい大変な体験でした。
その大変さを具体的にお話してみましょう。
第8回の9チェックポイント、フェニックスでの状況を思い出してみます。
フェニックスは広いアリゾナ砂漠の中がクイズ会場でした。
見渡す限りが、砂漠とサボテンの乾燥地帯です。
1年の内300日以上が快晴と来ているので乾燥地帯なのは言うまでもありません。
こんな場所でのクイズとなれば、ご存じばら撒きクイズしか有りませんね。
挑戦者はこんな過酷な中で、クイズ問題を拾いに走り回ります。
体力勝負の典型的なクイズ会場です。
この様な中で走り回る訳ですから、勝ち抜けた人も、負けた人もヘロヘロに疲れ切ってしまいます。
収録が終わるとスタッフも、同じようにヘロヘロになっています。
先ずは水分を補給し、一休みしてから機材の撤収作業に入るのが通常のスタッフの仕事でした。
ところが、罰ゲームの撮影班には、その様な悠長な事は言っていられません。
休む間もなく罰ゲームの撮影場所に移動しなければなりません。
その前に、勝者と敗者の「涙のお別れシーン」がお決まりのパターンだったので、これは全スタッフの目の前で撮影が行われました。
その後に、撮影班は車に乗って砂漠の中に消えて行きます。
この時の罰ゲームは、広い砂漠の中を1人でトボトボと歩いて帰るという罰でした。
その時に負けたNさんは、10日後に結婚式を控えているとの事でした。
と、なれば何を置いても無事に日本へ帰っていただかなければならない。
そのため、彼に与えられたのは、砂漠を生き抜くサバイバル術、「砂漠で水の作り方実践」というものでした。
その手順は以下の通りです。
1、砂漠に人間が横たわれるほどの穴を掘る。
2、その穴に仰向けに寝る。そしておへその上に水を入れるカップを乗せる。
3、首だけ出して、穴の全面をビニールで覆う。
4、ビニールの上(おへその上あたり)に小石を1つ乗せる。
5、身体から水蒸気が発生し、ビニールの下側に水滴となって付着し、ポタポタとカップの中に落ちる、という計算でした。
これを、灼熱の砂漠の中で実践しなければなりません。
敗者のNさんは蒸し風呂状態です。
その間スタッフもジッと撮影を続けます。
待つ事2時間、Nさんの身体から蒸発した水蒸気で本当に水が作れたのです。
敗者もスタッフもご苦労さんでした。
でももし、これで水が出来なかったら?
それは当然この様な案を提案した我々構成者の責任で、私がスタッフからキツーく罰せられる事になったと思いますよ。
罰ゲームで笑っている陰には、こんなヒヤヒヤの裏話もあったのです。