アメリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題で、1番苦労したのは○×問題である、という事は今までにも何回かこのブログで書いてきました。
では、その苦労した問題の中で最高の傑作は、と聞かれると返事に困ってしまいます。
我々は、採用された問題はどれを取っても傑作だと思っていますし、挑戦者の立場になれば、自分が誤答した問題を忘れられない問題として記憶しているでしょう。
それだけに、○×の問題は作るのが難しいし、採用にも慎重を期しました。
そのような中で、記憶に残る失敗作を挙げるなら、確かに1問だけありました。
それを発表する前に、○×問題の大事な必要項目を挙げて見ます。
1、耳で聞いて、問題点が確実に理解できる事。(これは、泥んこクイズのように、瞬時に判定出来る事が必要だからです)
2、正解率は50%が理想である。(東京ドームの様な会場を想定すると、正誤が半々に分かれるのが望ましい)
3、常識の盲点を突いた問題が望ましい。
以上の様な条件を付けて、クイズ問題を作家達に発注していました。
○×問題の最大の失敗作は第2回の後楽園球場の2問目に出題されました。
問・歌手、山口百恵は本名である。○か×か? という問題でした。
因みにこの問題を作った作者が悪い、という事を言っている訳ではありません。
当時のスーパー・スターを題材にした訳で、これ自体は何ら問題は有りません。
むしろ、この失敗作の責任は、クイズ選考会議そのものに有りました。
プロデューサーやディレクター、構成作家など日頃、偉そうにクイズ問題に注文を付けていた我々が、この問題を採用したのですから、責任があるのは当然です。
何故、この問題が最大の失敗作だったのかは、結果が表していました。
699人の挑戦者に出され、なんと 699人中誤答したのはたった1人だったのです。
つまり、99,9%が正解した訳で、これでは正解率50%には到底及びません。
クイズ会議の細かい状況は思い出せませんが、多分この様なやり取りがあったと思います。
否定の意見・「山口百恵が本名なのは、日本人なら常識ですよ。間違える人なんていない」
肯定の意見・「いや、そういう思い込みがキミの欠点だ。一般の人は知らないよ」
否定の意見・「こんな問題を採用したら、大恥をかきますよ」
肯定の意見・「やってみなければ解らない。勝負しようじゃないか。採用決定!」
第2回と言えば、番組もまだ始まったばかりで、我々も手探り状態だったのです。
だから、我々の常識が世間の常識と思い上がっていたのかも知れません。
本当は世間の常識の方が、ずっと先を進んでいる、という事をクイズ問題を通して知ったのでした。
世の中、なめたら あかんぜよ という事ですよね。(古いですね)