アメリカ横断ウルトラクイズが始まった頃には、今のようなIT時代が来るなど、予想も出来ない事でした。
今では、小学生でもパソコンを使っていますし、携帯電話も小学生の低学年から持っているような子もいるので、将来は機械に人間が使われてしまうようなSF小説が現実味を帯びてきました。
前にも書いたかもしれませんが、現在のようにパソコンや携帯電話が発達した時代には、あの我々が作っていたウルトラクイズは、制作不能のような気がします。
その、片鱗とも言える出来事が、すでに8回の時に起こっていました。
84年の事ですから、29年前の成田でのジャンケンでの時でした。
普通、ジャンケンは自分の勘を頼りに、グー、チョキ、パーを出して勝負をする。
この原始的な勘で勝負するのが、面白いゲームなのです。
しかも、日本人なら誰でも、このジャンケンで遊んだ経験があるのですから、実に公平で公正な勝負が出来ますよね。
ところが、この年成田で、ストレートで勝ち抜けた人物が現れたのです。
この人物は、どのような人だったのか、私の記録には残っていないのが残念ですが、兎も角ジャンケンの勝率をコンピユーターにインプットして、その通り勝負をしたら、ストレートで勝ち抜けた、と語っていました。
おそらく、今的に表現すると、典型的なパソコン・オタクといった人物なのでしょうね。
幸い翌年以降、そのような人が出てこなかったので、忘れられたのだと思いますが、皆がみんな、このようにコンピューターに頼ってジャンケンをはじめたら、多分面白さも半減してしまう危険性があります。
つまり、ジャンケンの魅力を忘れて、パソコンの知識を競う方向へ、目的がスライドしてしまうかも知れません。
東京ドームの第一問にしても、パソコンや携帯電話が今ほど発達していたら我々クイズを作る側も、多くの制約に縛られて思い切った勝負は出来難いと思います。
このように考えると、ウルトラクイズは、世の中がまだアナログ時代だったからこそ、通用した番組だったのかも知れません。
今のこの時代だと、世界中のニュースが、瞬時に個人に伝わってしまいます。
また、ツィッターのように、個人の意見が瞬時に拡って行く仕組みも出来ていて、このような要素を、番組に組み込んだとしたら、どのようになるのでしょう?
もう、アナログ人間の私などには、企画に加わる能力さえ持ち合わせていません。
老兵は死なず。
ただ、消え去るのみ、マッカーサーは良い言葉を残しました。