アメリカ横断ウルトラクイズの主役は敗者です。
これはキャッチコピーでも、
「知力、体力、時の運。敗者が主役のウルトラクイズ」
ということで、当時の視聴者には広く浸透していました。
そこで、今回は敗者に関する強烈な思い出を振り返ってみたいと思います。
この番組の名物、空港でのジャンケンで敗退した人は、単純計算で50人×16回として800人となり、その都度敗者が悔し紛れの捨てセリフを叫ぶのが恒例になっていました。
その中で、特に強く印象に残ったのは第2回の時に聞いた1言です。
「仏は我を、見離したかー!」
このように絶叫したのは、袈裟姿の若いお坊さんでした。
会場が爆笑の渦になったのが、強く記憶されました。
このようなアドリブは、作家が考えてもなかなか飛び出す言葉ではありません。
お笑いの専門家、落語家ならいざ知らず、このアドリブは瞬間的に飛び出したものだったのでしょうが、優れた一言だったと思います。
永い事、敗者担当のアナウンサーは徳光和夫さんでしたが、この人もアドリブの名手です。
確か第6回の成田空港の屋上で、勝者が搭乗した飛行機を見送る場面で飛び出した一言でした。
敗者を引き連れて、シュプレヒコールを先導する役目でしたが、
「お前達が、泊まるホテルの社長は蝶ネクタイをしているぞー!」
というものでした。
この言葉が、何故悔しさを晴らす凄い強烈なパンチだったかは、現代の人には解説が必要でしょうね。
その年の2月に、赤坂の「ホテルニュージャパン」が火災となって、33人が死亡するという悲惨な事故が発生していたのです。
勿論、社会的な批難が巻き起こり、その時のホテルの社長が蝶ネクタイ姿で、度々マスコミに登場していた、という社会的な背景があったのでした。