むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、鳥の卵がコロンコロンと流れてきました。
おばあさんは卵を持ち帰り、割ろうとしたとたん、中から元気の良いおしゃべりのできるとりの赤ちゃんが生まれました。
子どものいないおじいさんとおばあさんは、とりたろうと名付けて、わが子のように大切に育てました。
どんなに羽を動かしても、あのツバメのようにさっと飛び回ることができません。
「おじいさんおばあさん、僕は飛べないので飛べるようになるために旅をしようと思います。」
おじいさんとおばあさんは寂しくなりますが、可愛いとりたろうの願いを聞くことにしました。
とりたろうは、海に潜るペンギンを見ました。海の中を鳥のように自由に泳ぎまわります。
「もしかしたら、水の中なら飛ぶように泳げるのかも知れない。」
とりたろうは思い切って飛び込むと、息が詰まり、もう少しでおぼれてしまうところでした。
水の中も役立たない羽だったのです。
ある時、陸上を素速く走るダチョウを見ました。
「あぁ。飛べなくても、走り回ることも大事なんだ。」
そう思って、今度は飛ばずに一生懸命走る練習をしました。
走れば走るだけ速くなりましたが、ダチョウのようにはなれません。それどころか二本足で走るヒトにすら簡単に抜かされる始末です。
多くの練習をしたところで、その分だけ効果はなかったのです。
とりたろうの羽は、飛ぶことも潜ることも走ることにも役に立たなかったのです。
広げてみても、あのクジャクのようにどこもきれいでもありません。
「飛べない鳥は、鳥じゃない。」
とりたろうが、しょんぼり下を向きながら歩いていると、二本足のヒトにつかまりそうになりました。
とりたろうは必死にもがいた。
その使えない大きな羽をバタバタさせて。
その勢いに負けてヒトはとりたろうを離した。
「そうか!この羽は捕まえられた時、逃げるために動かすためにあるんだ。」
それ以来、とりたろうは飛ぼうとせずに羽をいつでも力強く動かせるように練習することにしました。
そして、長い年月をかけた後、いつの間にか大空を飛び回る翼にもなりましたとさ。
めでたしめでたし。
今日の町民大会は、4勝2敗でした。