お手紙(アーノルド・ローベル )

お手紙
アーノルド・ローベル 文・絵
みき たく やく

がまくんは、げんかんのまえにすわっていました。

かえるくんがやってきて、言いました。
「どうしたんだい、がまがえるくん。きみ、かなしそうだね。」
「うん、そうなんだ。」

がまくんが言いました。
「今、一日のうちのかなしいときなんだ。つまりお手紙をまつじかんなんだ。そうなると、いつもぼく、とてもふしあわせな気もちになるんだよ。」
「そりゃ、どういうわけ。」

かえるくんがたずねました。
「だって、ぼく、お手紙もらったことがないんだもの。」

がまくんが言いました。
「いちどもかい。」

かえるくんがたずねました。
「ああ。いちども。」

がまくんが言いました。
「だれも、ぼくにお手紙なんかくれたことがないんだ。まい日、ぼくのゆうびんうけは、空っぽさ。お手紙をまっているときがかなしいのはそのためなのさ。」

2人ともかなしい気分で、げんかんのまえにこしを下ろしていました。


すると、かえるくんが言いました。
「ぼく、もう家へかえらなくっちゃ、がまくん。しなくちゃいけないことがあるんだ。」

かえるくんは、大いそぎで家へかえりました。えんぴつと紙を見つけました。紙に何か書きました。紙をふうとうに入れました。ふうとうにこう書きました。
「がまがえるくんへ」

かえるくんは、家からとび出しました。しりあいのかたつむりくんにあいました。
「かたつむりくん。」

かえるくんが言いました。
「おねがいだけど、このお手紙をがまくんの家へもっていって、ゆうびんうけに入れてきてくれないかい。」
「まかせてくれよ。」

かたつむりくんが言いました。
「すぐやるぜ。」


それから、かえるくんは、がまくんの家へもどりました。がまくんはベッドでお昼ねをしていました。
「がまくん。」

かえるくんが言いました。
「きみ、おきてさ、お手紙が来るのを、もうちょっとまってみたらいいとおもうな。」
「いやだよ。」

がまくんが言いました。
「ぼく、もうまっているのあきあきしたよ。」

かえるくんは、まどからゆうびんうけを見ました。かたつむりくんはまだやってきません。
「がまくん。」

かえるくんが言いました。
「ひょっとして、だれかが、きみにお手紙をくれるかもしれないだろう。」
「そんなこと、あるものかい。」

がまくんが言いました。
「ぼくにお手紙をくれる人なんて、いるとはおもえないよ。」

かえるくんは、まどからのぞきました。かたつむりくんは、まだやってきません。
「でもね、がまくん。」

かえるくんが言いました。
「今日はだれかが、きみにお手紙をくれるかもしれないよ。」
「ばからしいこと言うなよ。」

がまくんが言いました。
「今までだれもお手紙くれなかったんだぜ。今日だって、おなじだろうよ。」

かえるくんは、まどからのぞきました。かたつむりくんは、まだやってきません。


「かえるくん、どうしてきみ、ずっとまどの外を見ているの。」

がまくんがたずねました。
「だって、今、ぼく、お手紙をまっているんだもの。」

かえるくんが言いました。
「でも、来やしないよ。」

がまくんが言いました。
「きっと来るよ。」

かえるくんが言いました。
「だって、ぼくが、きみにお手紙出したんだもの。」
「きみが。」

がまくんが言いました。
「お手紙に何て書いたの。」

かえるくんが言いました。
「ぼくは、こう書いたんだ。
『親愛なるがまがえるくん。ぼくは、きみがぼくの親友であることをうれしくおもっています。きみの親友、かえる』」
「ああ。」

がまがえるくんが言いました。
「とてもいいお手紙だ。」

それから、2人は、げんかんに出て、お手紙を来るのをまっていました。

2人ともとてもしあわせな気もちで、そこにすわっていました。


長いことまっていました。

4日たって、かたつむりくんが、がまくんの家へつきました。そして、かえるくんからのお手紙を、がまくんにわたしました。

お手紙をもらって、がまくんはとてもよろこびました。


(読むとふか~い教科書の物語です。
あなたが好きな登場人物は?って言われても困りますねえ。
ここを授業する実習生がんばってね~!!
さてさて、親友ってなんでしょう…。親しい友。親のような友。
友のために命を投げ出す。これより大きな愛はない。
そんなことをしてくれるのが親友。いつくしみふかき友)