私がこよなく愛するアニメ「けいおん!」が今年放送15周年を迎える。何か”動き”があるのではないかと、マメにネットで情報をチェックしている。今までは声優さんのブログや旧ツイッターを中心にチェックしていたが、動きが見られないので、違う方向から見てみようとスタッフをチェックしてみる事にした。

多くのスタッフ、キャストの力によって作りあげられた「けいおん!」だが、最大の功労者は監督の山田尚子、シリーズ構成・脚本の吉田玲子、キャラクターデザイン・総作画監督の堀口悠紀子の3人なのは間違いないだろう。

 

元々外部から招聘された吉田玲子はその後もアニメ、実写で話題作、傑作を数多発表しているが、残るふたりの山田、堀口の動向もファンとして非常に気になるところである。このふたりは京都アニメーションの社員であったが、堀口は2015年頃退社したようで、その後はフリーとして「22/7」(2020)のキャラクターデザイン、「HELLO WORLD」(2019)のキャラクターデザイン・作画監督を務めている。山田は公式なアナウンスはないものの、2019年の京都アニメーション放火殺人事件の後退社した模様で、近年は「平家物語」(2021)、「きみの色」(2024公開予定)とサイエンスSARUで活動している。

 

多くの優秀なスタッフを失った京都アニメーションを復活させるためには、黎明期からのスタッフである山田尚子と堀口悠紀子の力が是非とも必要と思われるのだが、両名とも京都アニメーションを離れた今、それも期待出来ない状況である。

そんな時驚くべき情報を得たのである。脚本家である吉田玲子が初のオリジナル小説「草原の輝き」を発表(2023年11月発売)、その発行はなんと京都アニメーションのKAエスマ文庫なのである!そして表紙・挿絵は堀口悠紀子が担当だというのだから、こんな大ニュースがあろうか。

吉田玲子は山田尚子の京都アニメーションにおける監督作品「けいおん!」から「リズと青い鳥」まで全ての作品で脚本やシリーズ構成を担当、山田が京都アニメーションを離れた後も「平家物語」、「きみの色」と引き続き担当している。ただ、京都アニメーションではこの「草原の輝き」が「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」(2020)以来の仕事(アニメではないが)となる。

 

一方の堀口悠紀子はファンならご存じの通り、小説の挿絵画家・イラストレーターとしては「白身魚」名義での活動が多く、「ココロコネクト」シリーズ(2010~13)などを担当している。

堀口悠紀子名義で小説の挿絵・表紙絵を担当した事はあるが、その殆どが自身がキャラクターデザイン・作画監督を担当した作品の小説版に限られる。

「らき☆すた ゆるゆるでぃず」(2009)

「たまこまーけっと」シリーズ(2013、2014)

「HELLO WORLD if」(2019)などである。

 

それが今回古巣の京都アニメーションのKAエスマ文庫でまさかの堀口悠紀子名義でのイラスト担当とは、いかなる流れでそうなったのだろうか。KAエスマ文庫とは京都アニメーション大賞での受賞作の発行がメインの文庫レーベルであり、その作品のアニメ化を前提としている事が多い。今回京都アニメーションとは縁の深い吉田玲子の初のオリジナル小説をこのレーベルで発行するだけでも充分驚きなのに、堀口悠紀子の京都アニメーションへの「帰還」とも言うべき挿絵担当は感慨深い。

もしかするとこの「草原の輝き」をアニメ化する予定があるのか、そうでなくても堀口悠紀子の京都アニメーションへの電撃復帰もあるのではないか、そんな妄想も膨らむ。

 

山田尚子の復帰は望み薄な中、この「妄想」は私の心を熱くさせる。「けいおん!」15周年の2024年、京都アニメーションに新たな風が吹く事を期待せずにはいられないのだ。