平成ゴジラシリーズのスーツアクターとして知られる薩摩剣八郎さん(1947~2023)がお亡くなりになった。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

ゴジラのスーツアクターと言えば初代のゴジラのスーツアクターであり、「ゴジラ」(1954)から「ゴジラ対ガイガン」(1972)まで12作で演じたレジェンド、中島春雄(1929~2017)、

 

 

「ゴジラ」(1984)から「ゴジラVSデストロイア」(1995)まで7作で演じた薩摩、

 

 

そして「ゴジラ2000ミレニアム」(1999)から「ゴジラファイナルウォーズ」(2004)まで5作で演じた喜多川務が3大ゴジラスーツアクターと言えるだろう。

 

この3大ゴジラスーツアクターが共演したイベントがかつて開催された事があるそうなのだから驚きである。参加された方はまさに幸せ者ですね!

 

ところで、である。今回の薩摩剣八郎さんの訃報記事において何件か「ゴジラ二代目のスーツアクター」との表記が見られたのが気になった。「二人目のレジェンド」ならいざ知らず、「二代目」は明らかな間違いではないだろうか。この機会にゴジラのなかみ=スーツアクターについて情報をまとめておきたい。

尚、ブログタイトルである「ゴジラのなかみ」というのは薩摩剣八郎が書いた書籍のタイトルから取ったものであり、スーツアクターを貶める意味合いではないので念のため。この「ゴジラのなかみ」という本はなかなか面白いので興味がある方は是非ご一読下さい。

 

まずゴジラの初代スーツアクターは誰か、というとこれがなかなか難しい問題である。中島春雄であるとも言えるし、違うとも言える。そもそもゴジラのスーツアクターには手塚克巳(1912~??)が予定されていたが、あまりのスーツの重量に思うように動けず、若い中島の方が動けたため抜擢され、手塚は補佐役に回った経緯がある。どちらにせよ中島、手塚のふたりがゴジラのスーツアクターのパイオニアである事は間違いない。中島はその後1972年までゴジラ役を担うが、手塚は1964年頃まで補佐的にゴジラには関わっていたようである。

 

中島ゴジラ時代に唯一違う俳優がゴジラを演じた映画が「ゴジラの息子」(1967)である。怪獣の親子愛を描く本作のテーマ性から、ゴジラとミニラの身長差を際立たせるため、元プロ野球選手選手で身長の高い大仲清治(1934~??)が抜擢されたが、撮影中にケガで降板、当時東宝のスーツアクターだった関田裕が代役となった。中島春雄も水中撮影部分はゴジラを演じており、結果的にこの映画は3人の俳優がゴジラを演じている。

 

中島引退後はじめてゴジラを演じたのは高木真二。出演作は「ゴジラ対メガロ」(1973)1作にとどまる。作品の内容やゴジラスーツのかわいらしさ(?)などからファンの評判があまり芳しくない映画だが、その矛先の一部は高木にも向けられ、いささか気の毒だ。尚、彼のプロフィールやなぜゴジラ役に選ばれたかなどは、全く情報が得られなかった。

 

その後「ゴジラ対メカゴジラ」(1974)では図師勲、「メカゴジラの逆襲」(1975)では河合徹がゴジラを演じている。このおふたりのお名前はウルトラファンならお馴染みだろう。両名とも「ウルトラマンエース」(1972)の超獣のスーツアクターを務めていた方だ。「エース」の特撮スタッフだった川北紘一が東宝特撮の助監督を務めていた縁で推薦されたそうである。

 

ミレニアムシリーズ6作中5作で喜多川がゴジラを演じた中で「大怪獣総攻撃」(2001)1作でゴジラを演じたのは吉田瑞穂。ゴジラシリーズではこの作品のみの出演だが、高校在学時よりヒーローショーでバイトし、その後スーツアクターやスタントマンとして活躍された方である。

 

以上駆け足でまとめてみたが、昭和からミレニアムシリーズまで都合10人の方がゴジラのスーツアクターを務めている。これからのゴジラはCGで、着ぐるみが使われる事はほぼないだろう。昔のゴジラ映画はそれぞれのスーツアクターの演技の違いなどを意識しながら楽しむのも一興だろう。特に中島ゴジラ、薩摩ゴジラ、喜多川ゴジラの見比べなんか面白いかもしれない。

 

薩摩剣八郎さんのご冥福を改めてお祈りいたします。