予告編を見て気になった映画、「裸足になって」を見た。予告編を見た限りでは、ダンサーの少女が事件に巻き込まれて大けがをして、そのショックで言葉も話せなくなり、人生に絶望する中リハビリ中に知り合ったろう者の女性たちにダンスを教える事になり、新しい人生の第一歩を歩みだす再生の物語、って感じだったんですが、そんな軽い感じで見られる映画ではありませんでした。

 

フランス、アルジェリアの合作である「裸足になって」ですが、その舞台となるのは現代のアルジェリアである。

「アルジェリア」と聞いて、皆さんどんなイメージを思い浮かべるだろうか。私は恥ずかしながら内戦とテロが続き、現在でも政情不安の国、といったイメージしかない。

そして私たち世代だと「セーラー服と機関銃」(1981)の冒頭で薬師丸ひろ子がブリッジしながら口ずさむ

「ここは地の果て アルジェリア」(「カスバの女」1955。作詞・大高ひさを、作曲・久我山明、歌・エト邦枝)を思い出す人も多いかもしれない。

 

 

 

そんな漠然としたイメージしかないアルジェリアでは現在でも内戦やテロで肉親を失った心の痛みで苦しむ人々がいたり、恩赦で解放された犯罪者が野放しにされていたり、前時代的な女性差別などが続いていたりとたくさんの問題を抱えている。

そんな問題がストーリーに重層的に積み重なっていく。

 

映画の原題の「フーリア」は主人公の名前であり、その由来は聖典コーランに登場する美しい乙女・フーリーであるらしい。また、劇中のセリフにも出てくる「自由」を表す「フッリーヤ」とのダブルミーニングとも考えられる。

フーリアが果たして真の「自由」を獲得する事が出来たのかは、皆さん自身がご覧になって判断して欲しい。

 

フーリアを演じたアルジェリア出身のフランス人女優、リナ・クードリの凛とした演技とダンスは必見です。