「超時空要塞マクロス」が放送開始したのが1982年。あれから41年が経ち、2023年5月2日にBS-TBSにて「X年後の関係者たち~あのムーブメントの舞台裏・マクロス編」が放送された。メインゲストがメカデザインなどを担当した河森正治、キャラデザイン・キャラ作画監督の美樹本晴彦、メカ作画監督の板野一郎の3人で、大変興味深い舞台裏をたくさん知る事が出来て面白い番組であった。

 

1982年当時、私は基本的に「特撮マニア」な人で、「ゴジラ」復活の機運を期待していた頃であり、アニメは門外漢だった。子供の頃は人並みにアニメは見ていたし、「宇宙戦艦ヤマト」は先輩に勧められて見て大いにハマったものの、それ以上アニメの世界には入らなかった。大人気だった「銀河鉄道999」もテレビ、映画ともリアルタイムでは見ていない。「機動戦士ガンダム」も大騒ぎだった友人を尻目に全く見なかった。だがこの年、テレビシリーズは打ち切られたがファンの熱意で完結編が映画で作られて公開する事になった「伝説巨神イデオン」(1980)の再放送が行われた。映画サークルの仲間が集まるとみんな「イデオン」を見始めるので、仕方なく私もつきあって見る事と相成った。

 

そして、「イデオン」にハマった(笑)

 

あとはもう坂道を転げ落ちるようにアニメにハマり、アニメばかり見るようになった。1982年といえば、1981年から放送していた「うる星やつら」が大人気であり、「イデオン」の富野由悠季監督の新作「戦闘メカ ザブングル」が始まり、アニメが花盛りな時代だった。友人が買う「アニメージュ」でせっせとアニメの情報を集めた。遅ればせながら「ガンダム」も再放送でやっと見た。そして10月から始まったのが「超時空要塞マクロス」である。

 

まず何がビックリしたかって、主要メカのバルキリーだ。3タイプに変形するメカなわけだが

ちゃんと発売された玩具がアニメの通りに変形するなんて!私たち「マグマ大使」を見て育った世代なんで、これはカルチャーショックだった。私は特にメカに思い入れはないが、メカ好きの友人Kくんが早速バルキリーを買ったので、私もずいぶん遊ばせてもらった。この玩具は間違いなくエポックメーキングなメカだっただろう。

バルキリーもウケたけど、ヒロインのリン・ミンメイはもっとウケた。それまでのアニメにも人気のあるキャラクターはいたけれど、今で言うキャラ萌えするヒロインの元祖かも知れない。声優を務めた飯島真理はもともと歌手(志望)であったため挿入歌(羽田健太郎作曲の名曲揃い!)も自身が歌い、これも大評判となる。翌1983年に公開された劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」の主題歌は大ヒット。ミンメイは現在でも続く「歌うアニメヒロイン」の元祖でもあるだろう。(「さすらいの太陽」ののぞみじゃないかともちょっと思いますが笑)

ダブルヒロインだった早瀬未沙。私は当初から未沙派であったのだが、主人公・輝とミンメイ、未沙の三角関係を経てまさか本当に「愛は流れて」輝と美沙が結ばれるとは思わなかった。SFロボットアニメでまさかのラブコメ要素をぶち込んでくるとは。今ではあたりまえになってますけどね。

 

上記の「X年後の関係者たち」で知ったのだが、河森と美樹本は慶応義塾大学の高校時代からの同級生で、今で言う完全なオタクだったらしい。「ヤマト」「ガンダム」とは違い、「マクロス」はアニメオタクが作り手側にまわった商業用アニメのハシリだった。だからこそ自由なストーリー展開やラブコメ要素なども入れる事が出来たのだろう。

ミンメイの水着姿で、お尻に水着が食い込んだカットがあり、「アニメージュ」誌上で「お尻の水着」を考える?みたいな小特集が組まれ、女性スタッフの「あの観察眼はスゴイ!と思うが、女性としてはああいう場面に遭遇したら男性はそっと視線を逸らして欲しい」なんてコメントが掲載されていた。オタク目線のエロというか萌えが本格的に導入されるきっかけを生んだのも「マクロス」だっただろう。美樹本のキャラデザインは萌え要素を大いに含んでいた。

しかし、美樹本のキャラデザインは線が多く、当時の作画スタッフのレベルではアニメーションとして動かすのは至難の業であり、更にスタッフの不足を補うために集められた学生バイトや、韓国の下請けスタッフの質が著しく低く、

 

誰?(泣)

誰?(汗)

ちなみにちゃんとしてる時はこんな感じです(爆)

 

・・・みたいな作画崩壊の回も多く、21世紀のアニメのように安定した作画クオリティを保てなかった。そういう別の意味でも伝説のアニメと言えるかも(笑)

 

そんな中、河森、美樹本と同い年ながら既にプロとして順調にキャリアを積み、「ガンダム」「イデオン」にも参加していた板野一郎のメカ作画は光っていた。その後「板野サーカス」と呼ばれるそのメカ描写、特にミサイルの作画は今見ても素晴らしい。今回の「X年後の関係者たち」で、板野はミサイルを3種類設定し、「真面目ミサイル」「バカミサイル」「天才ミサイル」と分けてそれぞれ違う動きをさせ、更に奥のミサイルは3コマ落ち、手前のミサイルは1コマ落ち、真ん中のミサイルは2コマ落ちで動きにメリハリをつけた、と語っていた。いやー、唸るしかないっしょ。

 

「超時空要塞マクロス」の良い動画が見つけられなかったのですが、これは「マクロスプラス」でしょうか?すみません、マクロスのその後のシリーズはよく知らないもので(汗)とにかく板野サーカスの醍醐味を味わってもらいましょう。私個人的には「イデオン」の全方位ミサイルとかアディゴとかも好きです。

板野さんには「ULTRAMAN」や「ウルトラマンネクサス」などウルトラシリーズでもお世話になってます!

 

バルキリー、ミンメイ、ラブコメに作画崩壊(笑)と数々の伝説を作った「マクロス」。あれから40年以上経ったんですね。感無量です。

 

最後に私の大好きな挿入歌「やさしさSAYONARA」を聞きながらお別れしましょう。