特撮作品でお馴染みの俳優・山本廉さん(1930~2003)。東宝特撮、ウルトラ、東映など数々の作品に出演した。

ウルトラファンには「ウルトラマン」第11話「宇宙から来た暴れん坊」(1966)のギャンゴを生み出してしまう鬼田(作中では名前は呼ばれないと思うが)や

「ウルトラセブン」第10話「怪しい隣人」(1967)のイカルス星人の人間体の印象が強いだろう。

そんな山本が特撮作品に初めて出演したのが「ゴジラ」(1954)の政治(まさじ)役だった。ゴジラに襲撃された漁船に乗船していたが奇跡の生還を遂げる役だった。もっともその後のゴジラの大戸島上陸の際に命を落としてしまうが・・・。

「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(1966)でも大ダコとガイラの争いに巻き込まれるが、生き残り状況を証言する船員役で出演。”怪獣に襲われたり、怪現象に巻き込まれるが助かって証言する”という役回りが定番となる。この頃の東宝特撮作品は俳優によって振られる役回りが定番化している役者さんがいて、出てくると妙に安心感があったものである。

そういう点で「ウルトラマン」第30話「まぼろしの雪山」(1967)の漁師・町村は雪ん子を追い回してウーに遭遇して救助されて証言するという、東宝以来の由緒ある山本の定番の役での出演であり、嬉しい限りだ。しかし、獲物がとれないでイラついていたとはいえ、何の落ち度もない15歳の少女に猟銃を発砲しながら追い回すってかなりイカレた男である(汗)

そんな山本が最後にウルトラに出演したのが「ウルトラマンタロウ」第31話「あぶない!嘘つき毒きのこ」(1973)のこの回の主役・鍵っ子少年大介の父親役だ。珍しく怪現象に巻き込まれて救助されたり、怪しい宇宙人だったりせず普通の父親役だった。だが、そんな山本の普通ぶりを遥かに凌駕するこの回のぶっ飛びぶりは最高である。きのこ怪獣マシュラのせいで町の住民がキノコ化して大挙して歩き回るシーンのシュールさは、かの名作「マタンゴ」以上かもしれない。でもこのエピソードの最大の肝(?)は鍵っ子の大介の母親がパートに出かけるために大介に残したメモが「もやしとレバーを炒めて食べなさい」というものだった事である(笑)小学生の子供にさせる料理としてはかなりハードルが高いんでないかい?レバーはちゃんと炒めないと臭みも出るし、生焼けだと危ないっすよ、お母さん。

 

数々の修羅場を潜り抜けてきたさしもの山本廉さんも、近所の奥さんに対する見栄から良い生活をするためにパートに出る奥さんの暴走を抑える事は出来なかったようである。