秋田書店編の第4回、今回で完結です。漫画出版界は1970年代後半の第一次漫画文庫ブーム、1980年代のワイド版ブームを経て、1980年代後半から豪華版ブーム、1990年前後には厚冊愛蔵版ブーム、そして1990年代からは現在まで続く第二次漫画文庫ブーム(今回は既にブームではなく定着したが)へと続いていく。

 

<秋田書店・豪華版>    カバーイラストは金本恒幸が担当。

「恐怖」は「高校生記者シリーズ」の改題作品。

 

「恐怖」第1巻  1990・2・20発行   プロローグ※1、うばわれた心臓(奪われた心臓・改題)、毒ガ(謎の毒蛾・改題)、白い右手(右手の秘密・改題)、顔を見ないで、こわい絵(動く自画像・改題)、魔性の目(その目が憎い!・改題)、とりつかれた主役(憑かれた主役・改題)、枯れ木(切れない枯れ木・改題)、みにくい人(顔を返して!・改題)、灰色の待合室※2収録。

 

※1この「プロローグ」は1974年当時公開されていた映画「エクソシスト」とのタイアップ企画である映画のスチールと楳図の絵を組み合わせたストーリーダイジェスト「エクソシスト」(「週刊少年サンデー1974年28号)から映画スチールを抜き、そこを「恐怖」の絵に差し替えたもの。「エクソシスト」部分と「恐怖」部分に何の関連もないので、ナンノコッチャ!的な仕上がりですが、モンタージュ作品と捉えれば十分楽しめるし、なによりこの本でしか見られない貴重な作品であるが、権利関係で今後もオリジナルな形での復刻は難しそうである。ウルトラCとしては「エクソシスト コンプリーション」みたいなムックを出してそこに収録する手もあるかな?参考までにオリジナルの作品の画像の一部を下に貼ります。

※2「灰色の待合室」のみ「高校生記者シリーズ」ではないが、この当時は「恐怖」の作品として定着していた。

 

「恐怖」第2巻 1990・3・15発行   こわい本※、夜歩く者(謎の墓場・改題)、雪女(雪女の恐怖・改題)、イヌ神(犬神の死霊・改題)、吸血面(吸血面の呪い・改題)、サンタクロースがやってくる(笛が呼ぶ謎・改題)、われたつり鐘(割れたつり鐘・改題)、雪山のまねき(吹雪に消えた二人・改題)収録。(サンデーコミックス、文庫版、ワイド版にあった恐怖の館、800年目のミイラ、孤独なヨット、コンドラの童話は収録されていない)

※「こわい本」の初出は「サスペリア」創刊号(1987年・秋田書店)に掲載された「楳図かずおの悪夢 こわい本」。私は初出誌は未見だが、高橋明彦氏の「半魚文庫」によると、全11ページの作品で、それを一部省略や段の組み直しにより全6ページにまとめたものがこの「恐怖」第2巻に収録されているそうである。2022年3月現在この単行本にのみ収録されている。

 

そして次は二度目の文庫化である「秋田文庫」である。

 

<秋田書店・秋田文庫>

「秋田文庫」は通しナンバーが振られているので、それも記載する。

「恐怖」第1巻(11-1)  1995・10・10発行   うばわれた心臓(奪われた心臓・改題)、吸血面(吸血面の呪い・改題)、毒ガ(謎の毒蛾・改題)、恐怖の館、白い右手(右手の秘密・改題)、顔を見ないで、こわい絵(動く自画像・改題)、雪女(雪女の恐怖・改題)、魔性の目(その目が憎い!・改題)、とりつかれた主役(憑かれた主役・改題)、800年目のミイラ収録。

 

「恐怖」第2巻(11-2)  1995・10・10発行   枯れ木(切れない枯れ木・改題)、孤独なヨット(呪いのヨット・改題)、夜歩く者(謎の墓場・改題)、雪山のまねき(吹雪に消えた二人・改題)、みにくい人(顔を返して!・改題)、サンタクロースがやってくる(笛が呼ぶ謎・改題)、われたつり鐘(割れたつり鐘・改題)、コンドラの童話(大空怪獣コンドラの謎・改題)、イヌ神(犬神の死霊・改題)、灰色の待合室※収録。(この文庫版では各エピソードの扉絵が収録されていないのが残念である)

※この作品は「高校生記者シリーズ」ではないが、この当時は「恐怖」の作品として定着していた。尚、2022年3月現在「恐怖」の一篇として収録された最後の単行本がこの秋田文庫版であり、その後の「恐怖」の単行本(楳図パーフェクション)からは外され、代わりに「恐怖」の単行本には長いこと未収録だった「悪魔の24時間」が復活。「灰色の待合室」は本来の収録場所である「ティーンルック」の作品群のひとつとして講談社漫画文庫でまとめられるようになる。

「おろち」第1巻(11-3)  1995・12・10発行  姉妹、ステージ、カギ(鍵・改題)収録。

「おろち」第2巻(11-4)  1995・12・10発行  ふるさと、骨収録。

「おろち」第3巻(11-5)  1996・2・10発行   戦闘、秀才収録。

「おろち」第4巻(11-6)  1996・2・10発行     眼、血収録。

 

2022年3月現在この「おろち」第4巻を最後に秋田書店からは楳図かずおの単行本は出版されていない。

 

前にも書いた通り2001年に自分用に楳図かずおの単行本リストを作ったのであるが、その頃楳図かずおの単行本を数多出版していた三大出版社が秋田書店、小学館、朝日ソノラマだった。あれから20年あまり経ち、秋田書店以外の残り2社、特に小学館の単行本は激増し、また講談社が”オリジナル作品集”シリーズで一気に第四の勢力となった。秋田書店は2001年当時の資料が流用できたので比較的早くアップする事が出来たが、今後は追加調査・整理の必要があるので、アップ頻度が下がると思われます。どうぞ気長にお待ち下さいますように。

 

次回からは朝日ソノラマの予定です。