2021年10月、NHKBSPで再放送の「マー姉ちゃん」(1979)で懐かしい顔と再会した。大門正明さん(1949~)である。

磯野家のお手伝いさん・田畑千代(二木てるみ)のお見合い相手という役柄であるが、ドラマの中でずっとお互いに「田畑千代さん」「大和田高男さん」とフルネームで呼び合うのが笑った!

 

大門正明と言えば特撮ファンにはまず「ゴジラ対メカゴジラ」(1974)の主役・清水敬介役でおなじみだろう。ヒロイン役の田島令子とコンビでこの沖縄を舞台にした活劇を盛り上げていた。

メカゴジラの前年1973年に「高校生無頼控」シリーズで2本、主役のエッチな高校生ムラマサ役で主演している。私は当時コドモであったのでこの事を知らなかったが、ムラマサを見たオニイサンがたは「メカゴジラ」でもいつか大門正明がエッチな事をしでかすのでは、とヒヤヒヤしたらしい(笑)

私たち世代でもうひとつ印象的なのは「セーラー服と機関銃」(1981)の薬師丸ひろ子演じる目高組組長・星泉の子分・政役だろう。渡瀬恒彦演じる兄貴をあまりに慕いすぎて、泉に「おたくらホモ?」とか言われてしまう。(このセリフ今の時代はNGだな・・・)殴り込みの際に撃たれて兄貴の腕の中で絶命する。

大門正明のウルトラシリーズ初出演は「帰ってきたウルトラマン」(1971)第18話「ウルトラセブン参上!」のMATステーションの隊員役だ。大門は出生時は中国籍で、この時は本名・羅雅煌(ロー・ヤーファン)として出演している。(その後帰化)

そしてなにより特撮ファンにおなじみなのは「ウルトラマン80」(1980~)のイトウチーフ役だろう。

初登場となったのは第14話「テレポーテーション!パリから来た男」である。このエピソードは当時カセットテープに録音して繰り返し聞いたので私にとっては非常に思い入れのある回である。この回と第17・18話「魔の怪獣島へ飛べ!!」(前後編)はなかなか渋いオトナの役回りだが、その後はチーフとしての見せ場は残念ながら少なく、特に第3クールになって路線変更され、対象年齢がやや下がるエピソード群では三枚目的なキャラクターになってしまう。当初のまま若い隊員と隊長を繋ぐ渋い役回りを全うしていたらもっとドラマが締まったのではないか、と少し残念である。だが、このイトウチーフ役は「ウルトラマンティガ」(1996)のムナカタリーダーの源流である事は間違いないだろう。

 

ひとつ触れておきたいのは第37話「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」の中でUGMを訪れた豆記者に「なぜウルトラマン80はUGMがピンチにならないと現れないのか?」と質問され、答えに窮した隊長(中山仁)が逃げてしまう中、イトウが「UGMは人事で、ウルトラマン80は天命だ」と明快な答えを語る事だ。

人事を尽くして天命を待つ。

これは第一期シリーズの「ウルトラマン」第37話「小さな英雄」(1967)でウルトラマンに依存し戦意を喪失したイデに対してハヤタが「棚からボタモチ式で勝利が得られるか!ウルトラマンは我々が力一杯戦った時だけ力を貸してくれるんだ!」と諭すシーンから脈々と受け継がれているウルトラの世界観だと言えるだろう。第二期シリーズの第一走者である「帰ってきたウルトラマン」(1971)でもウルトラマンの力を得た郷秀樹が慢心した時、ウルトラマンに変身できなかったエピソードが第2話「タッコング大逆襲」で描かれている。第一期、第二期、第三期と昭和のシリーズを通して語られた重要な世界観だ。「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」の脚本を大島渚、実相寺昭雄、今村昌平らと組んで数々の名作の脚本を手掛けた石堂淑朗が書いた事も特筆されるだろう。

 

今回ブログを書くにあたり調べていて驚いたのは連続テレビ小説「純情きらり」(2006)に長谷川初範、中山仁、大門正明の三人が出演していた事だ。放送当時見ていたが、長谷川初範はもちろん印象的だったが、残念ながらあとのおふたりは覚えていない。だが「ウルトラマン80」から26年後に矢的隊員、オオヤマ隊長、イトウチーフが朝ドラで揃い踏みしていたなんて、ちょっとホッコリする情報でした。